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"最適解"までの辛抱【J1第7節】浦和レッズvs清水エスパルス

レッズは前節、痛み分けとなったコンサドーレ札幌戦から中2日で清水エスパルスと対戦しました。

清水はここまでリーグ戦で1勝2分3敗で4試合勝ちがなく苦しい状況。レッズも2試合消化が多いながらもここまで2勝2分4敗と勢いに乗ることができていません。両チームともに勝点3を手に入れて1つ浮上のキッカケにしたい一戦でした。

マッチレポート

スタメン

レッズは前節の札幌戦からメンバーを3人変更。怪我の犬飼に代わって岩波がスタメン復帰。柴戸がベンチ外となり伊藤が岩尾とボランチを組み、左SHに初先発となった松尾が入った。

一方の清水は前節の鹿島戦からメンバーを2人変更。白崎とコロリがメンバーから外れ、後藤と宮本が先発出場となった。

浦和: 4-2-3-1
清水: 4-4-2


試合内容

最初のチャンスはレッズ、馬渡のクロスに松尾がボレーシュートを放つが原がブロック、清水のクリアボールをレッズが回収し今度は左サイドから大畑のクロスにユンカーが合わせるがヴァウドに当たり枠外に。14分にレッズは高い位置で伊藤がボールを奪い、強烈なミドルシュートを放つもシュートはポストに跳ね返り、ゴールとはならず。20分に清水はカウンターから左サイドに展開し、最後は後藤がミドルシュートを打つがゴールの上に外れる。30分にレッズはカウンターからチャンスを作り、最後はモーベルグがコントロールシュートでゴールを狙うも左に外れる。31分にレッズはカウンターからユンカーがペナルティエリア内で倒されてPKを獲得。このPKを江坂が冷静にに沈めてレッズが先制に成功。40分に清水は伊藤のコントロールミスを後藤が奪い、最後は鈴木唯人がシュートを放つも岩尾が間一髪ボールに触れたことでシュートは左に逸れる。45分+1に清水は右サイドから原のクロスに鈴木唯人が飛び込み頭で合わせるが、わずかにゴール左に外れる。前半はレッズの1点リードで折り返す。

両チーム、ハーフタイムでの交代はなく同じメンバーで後半に臨む。52分にレッズは中盤でボールを奪いカウンター、ユンカーからのスルーパスに松尾が左足でシュート、GK権田が弾いたボールを伊藤がスライディングタックルで詰めるも結果的にカバーに入った竹内の足に行ってしまい、この日二枚目のイエローカードで伊藤は退場となる。1人少ないレッズは58分にモーベルグのクロスから松尾がゴール前でフリーでヘディングシュートを放つも枠を捉えられない。60分には途中出場の宮本のグラウンダーのクロスにモーベルグが左足を振りぬくもシュートは浮いてしまい得点ならず。数的優位の清水は69分にショートコーナーからヴァウドがヘディングで押し込み同点に追いつく。勢いに乗る清水は78分に西川のパスミスを拾った途中出場のホナウドがシュートを打つが西川ががっちりキャッチ。レッズは80分にモーベルグと松尾を下げて明本と関根を投入し勝負に出る。83分に明本のクロスに関根がボレーシュートを放つもあまりミートせずに権田にキャッチされる。87分に清水は原のクロスに途中出場のオセフンが飛び込むもゴール右に外れる。94分に山原が強烈なシュートを打つも西川がセーブし追加点を許さない。このまま試合は終了し1-1の引き分けとなった。


試合結果

明治安田生命J1リーグ 第7節
2022年4月6日(水) 19:33キックオフ・埼玉スタジアム
浦和レッズ 1-1(前半1-0) 清水エスパルス
得点者 33分 江坂 任、69分 ヴァウド(清水)
入場者数 18,757人


・試合ハイライト動画


・試合スタッツ


マッチレビュー

作れなかった前半

レッズは前半にゴール前まで迫った良い攻撃がいくつかありましたが、それらの攻撃のほとんどが奪ってからのカウンターや岩波からのロングフィードからでした。レッズが自陣深い位置から前進してゴールに迫った場面はほとんどなかったと思います。実際に得点に繋がったPK獲得の場面でも岩尾が中盤でボールを奪ってからのカウンターでユンカーが背後を取ったところから生まれました。

レッズは清水の4-4-2(4-2-4)のミドルブロックに対して、3-2-4-1でビルドアップしました。3バックがボールを保持している時に岩尾と伊藤の立ち位置が清水の2トップの背後に隠れていたり、捕まる立ち位置が多かったのでなかなか中盤でゲームを作れませんでした。その結果、下の図のように江坂がサポートに下りてくるような場面がありました。

レッズのビルドアップ

特に岩尾はボールホルダーに近すぎる(もしくは近づいてしまう)傾向があり、そうすると空いているスペースを有効活用できない場面がありました。12:44では岩波がボールを持った時に岩尾が良いポジションにいましたが、岩波は岩尾を認知できずに馬渡へパス。そして岩尾も馬渡に近づいていってしまい、結果的にボールサイドに圧縮するような形となりました。

12:44のレッズのビルドアップ

また23:30では下の図のように岩尾と伊藤が清水の2トップに近い立ち位置を取っていたので大畑がボランチを経由して展開することができずに、結局バックパスでやり直すことになりました。

23:30のレッズのボール保持

特に前半はダブルボランチの2人が清水の2トップに近すぎて清水の2トップとボランチの間にあるライン間のスペースを全然上手く使うことができませんでした。その結果、清水のダブルボランチはレッズのボランチのケアが必要なくなるので、自分の持ち場を離れる必要がなく、穴が開かない状態でした。

レッズの理想としていたボール保持は44:12のような形でこの時は狙っていた形が出せたシーンだったと思います。岩尾が中央で大畑とパス交換をし、伊藤が中央、馬渡が幅を取ったことでハーフスペースが空きました。そこに江坂が入り込み岩波から縦パスを引き出しました。

44:12のレッズの組み立て

こういった場面をもっと増やしたかった前半でしたが、ダブルボランチの位置が低く全体的に後ろに重くなってしまいました。更に江坂が下りてきてサポートを始めると余計に後ろ重心となり、前線の3人(松尾、ユンカー、モーベルグ)までなかなかボールが入らない展開となりました。

期待感のあった8分間

前半はビルドアップのところでゲームを作れなかったレッズですが、ハーフタイムにしっかりと修正してきました。伊藤が退場するまでの8分間はとても期待感のあった内容だったと思います。

レッズは後半から4バックでのビルドアップに変更。下の図の50:57のような伊藤が右サイドに流れ馬渡を高い位置に押し上げて、空いた中央のスペースに江坂が受けにくる流れはとても効果的でした。

50:57のレッズのプレス回避

岩尾もしっかりと大畑からの横パスを受けに顔を出してサポートし、ショルツも江坂の下りてくる動きを見逃さずに素晴らしい縦パスを供給しました。この改善があっただけに、もっと長い時間11人で戦っている姿が見たかったなというのが本音です。


勝負の3-3-3

・勝負の時まで…
レッズが伊藤の退場で1人少なくなってから非常に上手く立ち回ったと思います。まずは安居の投入でボランチが活性化しました。安居は運動量が豊富でボールの動きに合わせて立ち位置を調整することができるので、ボール保持時に数的不利を感じさせない働きでした。

下の図の60:12のようなダブルボランチを経由しながら後ろから攻撃を組み立てて、最終的に江坂のスルーパスから宮本がクロスを上げてモーベルグの決定機という場面もありました。

60:12のレッズのビルドアップ

安居の動きに合わせて岩尾も清水の選手のギャップに顔を出せるようになり、スムーズにパスが回るようになりました。この60分のチャンスで追加点が取れていれば、ゲームは決まっていたかもしれません。

しかし、次第に10人のレッズは押し込まれ始めます。ですが1人少ない試合もこれで3試合目ということもあり、レッズの4-4-1の守備はとても組織化されねいて強固なものでした。

下の図のように4-4のライン間に対しては強く圧力をかけて、ブロックの外で持たせることに成功。クロスに対してはショルツと岩波を中心に跳ね返しました。

レッズの4-4-1のブロック

残念ながらCKから失点はしましたが、流れの中からはほとんどチャンスを作らせませんでしたし、集中したディフェンスでした。特に松尾とモーベルグは攻撃的な選手ながらプレスバックを怠らずに粘り強く対応することができていたので、サイドで数的優位を作らせず、えぐられる場面もありませんでした。

勝ちに行った残り10分
レッズは80分にモーベルグと松尾を下げて明本と関根を投入し勝負にでます。これまで4-4-1でローブロックを作っていたレッズですが、この交代でシステムを攻撃時は3-3-3、守備は4-2-3の1人少ないにも関わらず攻撃的な布陣に変更しました。ショルツが3バックの時に運べるように岩波と配置を入れ替えていて、あくまでも点を取って勝ちに行く姿勢を見せました。

その変化はプラスに働き、83分には下の図のようにスローインから明本、江坂、関根の前線3人だけでチャンスを作りました。

83:12のレッズのチャンス

そして驚くべきは守備でも3トップを維持したことです。3トップにしたことでボールホルダーに圧力がかかるようになり、清水は簡単にボールを前に運べない状況に陥りました。

特に関根と明本はCBとSBの両方にプレスをかける役割を持ち、下の図のようにプレスでボールホルダーに圧力をかけて、相手に余裕をあたえませんでした。

レッズの4-2-3の守備

もちろん1人少ない中で3トップを配置したことのリスクはあるので、90分+4の鈴木(義)に明本がプレスに出ようとして山原へパスを通されて強烈なミドルシュートを浴びる場面もありました。しかし、レッズは1人少ないながらも勝点3を取りに行く姿勢を見せたと思いますし、1人少なくなってからのレッズのパフォーマンスは賞賛に値すると思います。


最後に

まずはレッズはゲームを作るところでつまづいてしまったので、思うように攻撃ができなかったことを反省しなければいけないと思います。ただ、前半に2点、3点取れる場面はありましたし、退場するまでにゲームを決められなかったことも考える必要があると思います。しかし、伊藤の軽率なファウルで退場してしまったことでゲームが壊れてしまったことは紛れもない事実ですし、勝点3を手放す結果になったと思います。「いま無理しなきゃいけない場面なのか」、「急いで前にボールを送らなければいけないのか」、「逆にゆっくりボールを持っていていいのか」など選手一人ひとりの『試合を流れを読む力』は身に付けなければいけないスキルだと感じました。

また、チーム構成を見てもまだまだ試行錯誤の段階なのかなと感じました。松尾にインサイドでプレイさせると、彼の持ち味であるドリブルができるスペースがない状況が多く、あまり彼の良さが出なかったように思いました。またユンカーとモーベルグが入ることで高速カウンターが可能になりますが、その弊害としてプレイを前に急ぎすぎてしまう場面もありました。選手の特長を最大限活かすための"最適解"はまだまだ時間がかかりそうだなと感じました。ここで更にシャルクの加入でどういった化学反応があるのか楽しみであると同時に、チームの成熟度という観点ではまだまだ時間が必要だと思います。今は選手たちの頭と心と体が噛み合っていない試合が多く、空回りしてしまうことが多いです。ですが、この先に頭と心と体が噛み合い始めた時にはチームのパフォーマンスも向上すると思うので、今は辛抱しなければいけないと感じました。

次節はACL前最後のリーグ戦、アウェイFC東京戦。苦しい時こそ選手、スタッフ、サポーターが1つになる必要があります。勝点3を手に入れて最高の状態でACLに臨みましょう。

ここまで読んでいただきありがとうございました。



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