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対策の向こう側へ【Jリーグ】ヴィッセル神戸vs浦和レッズ

前節、FC東京に逆転勝利し3連勝としたレッズはアウェイでヴィッセル神戸と対戦しました

神戸とはACL圏争いをしていて3ptリードされている状態です。レッズとしてはここで勝利して勝点で並びたいところです。

神戸はこの夏に大型補強。古橋がセルティックへ移籍したものの、大迫と武藤の代表クラスの選手を獲得、更には元バルセロナのボージャンも獲得しています。

スタメン

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神戸はミッドウィークに川崎戦があったことも影響し、メンバーを4人変更。郷家、佐々木、山川、サンペールが新たにスタメンに名を連ねました。フォーメーションは4-3-1-2で中盤をダイヤモンドにした形を採用してきました。

一方のレッズは前節のFC東京戦と全く同じメンバーで試合に臨みました。


試合内容

試合開始から神戸が積極的にプレスをかけて試合の流れを掴む。8分酒井(高)が左サイドからGKとDFラインの間にボールを流し込み、大迫が体勢を崩しながらシュート、大迫をマークしていたショルツに当たりボールがゴールに吸い込まれた。神戸が早い時間帯に先制。21分にレッズのPA少し手前から神戸のFK。これをイニエスタが直接決めて神戸に追加点が入る。26分にレッズはPA手前で小泉からボールを受けた汰木がシュートするもGK正面。34分に神戸が高い位置でボールを奪うと大迫が左サイドからマイナスに折り返し、イニエスタがミドルシュート。このシュートが柴戸にディフレクトして西川が反応した方向とは逆方向にボールは流れてネットを揺らす。前半だけで神戸は3得点を上げる。1点を返したいレッズは44分に小泉のクロスを明本がヘディングシュート、ボールはポストに当たりゴールとはならない。45+3分にはレッズの左からのCKをショルツが折り返し、酒井がダイビングヘッドで押し込んだ。しかし、VARで柴戸のGK飯倉へのファウルを取られて得点は取り消しに。前半は3-0で神戸の3点リードで折り返す。


ハーフタイムに両チームともにメンバー変更を行う。神戸は前半に負傷した佐々木を下げて中坂を投入。レッズは汰木を下げてユンカーをCFで起用、そして関根が左、江坂が右にコンバートした。49分にレッズは平野がスライディングで大迫のボールを狩ると江坂、ユンカー、関根と繋ぎ、関根の折り返しを小泉が体を投げ出しながら左足で合わせてゴールネットを揺らす。このゴールで3-1とレッズが2点差まで詰め寄る。しかし、53分にイニエスタの左足のクロスに武藤が頭で合わせてすぐさま神戸に追加点が生まれ、再び神戸の3点リードに。レッズは伊藤、西、田中を投入し流れを変えようと試みるも大した変化はなく、84分には途中出場のボージャンのミドルシュートが決まり神戸に5点目が入る。レッズはあまりチャンスも作れずに試合は終了。5-1で神戸が大勝した。

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・試合ハイライト動画


・試合スタッツ

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噛み合わせ

・神戸の4-3-1-2
レッズはこの試合でビルドアップにかなり苦労しました。神戸が4-3-1-2のフォーメーションで前から人を捕まえてくるような戦術を取ってきたのに対して、レッズはこれまで同様にボランチが縦関係になり3-1または2-2でのビルドアップを行いました。

しかし、レッズのビルドアップの陣形と神戸のフォーメーションが上手く噛み合う形となりレッズはボランチを経由して前進することができませんでした。下の図のようにレッズがGKから繋いで行った時に神戸は前から人を捕まえに行きます。イニエスタが主に低い位置にいるレッズのボランチを捕まえてCBからのパスを警戒します。ボランチへのパスコースがないので岩波は酒井に展開すると、佐々木がスライドしてきます。佐々木がスライドした時に右SHの郷家が絞ることで中央で浮いているレッズの選手を完全に捕まえることができます。

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酒井のところで圧力を受けてハマるかその先のパスを受けた小泉や関根がボールを失う場面があり、レッズはなかなか中央から前進することができませんでした。

ですが、サイドから前進することはできていました。神戸は中盤をダイヤモンドの形にして中央に人数を多く配置していたのでSBはかなりフリーになる機会が多かったです。神戸が中央を塞いできたので外から前進することが多くなりました。

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・中央重視
ビルドアップには苦労しましたが、一応サイドから前進することはできていましたし、相手陣内でプレイする時間もありました。ただここでレッズの中央での崩しを重視するこだわりが仇になるような場面が多かったです。

レッズは下の図のようにSBから中央を経由してファイナルサードへと侵入を試みることが最近の試合では多くなりました。江坂の偽9番(0トップ)のシステムで1トップ2シャドー気味に構えたところから、前線の3人がローテーションしながら流動的に動きを入れて中央で起点を作ることがここまで上手くいっており、ここ数試合の結果に現れていました。ですので、この試合でも同様にSBからライン間への斜めのパスやボランチを経由して中央への縦パスをトライしました。

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しかし、神戸は中央に人が多いフォーメーションで逆サイドの選手も内側に絞ってくるので、サイドにはスペースがありますが、中央にはほとんどスペースはありません。その結果、江坂や小泉、汰木に縦パスや斜めのパスが入った時には窮屈なプレイになることが多く、上手くボールを繋げなかったりロストすることが多くなりました。

また後半からユンカーを入れましたが、基本的にレッズの攻撃が大きな変化を見せることはなくバイタルエリアのところを攻略することに固執しすぎた部分がありました。特にSBにボールが入った時に前線の選手がライン間で受けようと立ち位置を取るばかりで、サイドの深い位置に流れるようなプレイはありませんでした。これによってSBが中央の選手を使おうと狭く人数が多いところへパスをすることが多く、出し手のSBも難しく、受け手の選手も高い技術がされるような難しいプレイが続き攻撃が活性化しませんでした。

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ライン間を取ること自体は悪くはないのですが、神戸の守備陣形は中央に人数が多いので仮にライン間の選手にボールが渡ったとしても周りには多くの神戸の選手が待ち構えているので、ボールをキープすることが難しいです。逆にサイドの深い位置を取れるとSBが引き出されて守備陣形がストレッチされてスペースが生まれやすくなりますし、深い位置を取ることで最初ラインは下がらざるおえないのでライン間にもスペースができてきます。90+4に田中がこの試合で初めてと言っていいくらいにサイドの深い位置からエグってきてクロスを上げて、江坂のシュートがクロスバーに当たる場面がありました。このようなプレイを早い段階で多く作れていればもう少しチャンスは作れたのかなと感じました。

試合を通して、サイドの深い位置を取れれば良かったのですがレッズの選手があまり同レーンでプレイすること(SBとSHが同じ幅を取るような立ち位置を取ること)が少ないのでSBが既に幅を取っている時にサイドの深い位置に流れる動きが少なかったのかなと個人的には思いました。この辺りもレッズのこれまでの中央で崩せていたという成功体験が裏目に出たのかなという気がします。


11人での攻撃

・神戸のビルドアップ
特に前半は神戸のGK飯倉を加えた11人での攻撃に後手を踏む場面が多かったです。レッズはいつものように江坂と小泉のプレスから主導権を握ろうとしましたが、飯倉、菊池、フェルマーレン、サンペールの4人でのビルドアップに剥がされてしまいした。下の図のようにGKが積極的にビルドアップに関わってくることで、レッズの2トップのどちらかGKまでプレスに行った後に、サンペールまでプレスバックが間に合わない状況になっていました。

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前半はサンペールに圧力をかけられずに上手くビルドアップされてしまいましたし、神戸の1点目はレッズの前からのプレスを剥がされたところからの失点でした。

またサンペールへのパスコースを消すと飯倉を経由して逆サイドに持っていかれて数的不利な状態で後手に回る守備にならざるおえませんでした。

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後半はレッズも修正し下の図のようにサンペールに対してボランチがハッキリと前に出てマークすることで、予めサンペールを消しておくという作戦に変更しました。その結果、飯倉がロングボールを蹴る機会が多くなったので、前からのプレスはハーフタイムに改善された部分でした。

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レッズの得点も飯倉がロングボールを送ったところから始まっていて修正が効果を発揮した場面だったかなと思います。


・西川の課題
逆にレッズは上手くGKの西川を使ったビルドアップができなかったと思います。西川はキックには定評がありますが、個人的にはビルドアップでの判断の部分に課題があるのかなと思います。

この試合でも下の図のようにCBが監視されている状態にあるにも関わらずパスを出して、逆にロストからピンチを迎える場面が数回ありました。

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後半の武藤の得点の起因は52:07に西川が大迫にマークされている岩波にパスを出したところから始まり、岩波からリターンを受けた西川がマークされている平野に出したパスがズレて神戸のショートカウンターが発動しました。

それとは反対に51:26ではイニエスタが前に出てこれずにボランチの柴戸がフリーでしたが、西川はロングボールを選択して神戸に回収されてしまいました。後ろから繋いでビルドアップする上ではGKのビルドアップ能力は欠かせない部分なので西川は状況を把握して適切なところにボールを届けられるようになる必要があるなと感じました。

彩艶は状況判断が良く、ビルドアップ能力の高い選手だとは思いますがキックの精度のところで課題を抱えているのでGKの1stチョイスをどちらかにするのかというのは正直難しいなと思います。


ルヴァンの教訓

代表ウィーク期間中に行われたセレッソ大阪とのルヴァンカップで出た教訓にも触れておきたいと思います。残念ながらあと一歩及ばずにベスト4でルヴァンカップを去ることになりましたがここで得た教訓を次に活かす必要があると思います。

セレッソも神戸と同様にレッズのビルドアップに対して噛み合わせてにくるような守備をしていました。神戸ほど積極的に前からプレスをかけてきた訳ではありませんが、レッズが前進すると次第にハマってしまうような構造守備だったと思います。

下の図のようにセレッソは左SHの乾を前に出した左肩上がりの守備でした。神戸戦同様にレッズの両SBにはそこまで圧力はかからないのですが、中盤へのパスを徹底して塞いできました。神戸が行ってきた逆サイドのSHが内側に絞ってくることで中央の守備を強化し、中央を起点にゲームを作ろうとするレッズを苦しめました。

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特にセレッソ戦では小泉がボールを失う場面が多く、小泉にとってはとてもフラストレーションが溜まるプレイだったと思います。そもそもレッズは人に捕まえてくる守備に対して、立ち位置で優位性が取れない時に小泉が背負いながらキープして展開するという難易度の高いタスクをこなすことで何とかしていたところがありました。ですので、相手からすればシステムを噛み合わせて、小泉を潰すことができればレッズは機能不全に陥ります。その結果がリーグの神戸戦とルヴァンのH&Aのセレッソ戦で如実に現れました。今後、小泉が更に上のレベルにいくには徹底マークをものともしない個の力が必要になってきます。

そんな小泉自身の成長とは別に、レッズがどうやってレッズ対策を打破していくかを見つける必要があるなと思います。リーグも終盤に入りレッズ対策がかなり確立してきてしまいました。個人的には中央が塞がれるのであればサイドからの前進、攻撃ということになると思います。ルヴァンでは左サイドから山中のピンポイントクロスで点を取りましたし、サイドに起点を置くこともできるということを再確認できました。また、ユンカーと明本の2トップも機能しているように感じました。これまではユンカーが孤立することが多く潰されされがちでしたが、明本がユンカーの周りを動き回れるのでユンカーとDFとの1vs1の状況が生まれて高確率でキープから展開するということが可能になりました。今後、レッズがどのように対策を乗り越えていくのか注目だと思います。


最後に

神戸戦はACLを争う相手との対戦ということもあり、重要な一戦でしたがショッキングな大敗となりレッズとしては結果だけでなく精神的にも大きなダメージになりました。そしてルヴァンカップでもセレッソの連動性の高い守備の前に調子が掴めずに敗退となってしまいました。これらの結果の背景には各チームがしっかりとレッズ対策を講じてきたことが考えられると思います。この先、リーグ戦で勝点を積み重ねていくには対策の向こう側に行く必要があると思います。

今のレッズはビルドアップ時に出し手(CBs)に強くプレッシャーをかけてくる相手と中央を塞いで起点を潰していくる相手に対して上手くいかない傾向があります。セレッソ戦からのガンバ戦までに改善することは難しいかもしれませんが、リカルド監督なら何かしらの攻略方法を落とし込んでいるのではないかなと思います。そういった意味でも次のガンバ戦ではリカルド監督の手腕にも注目です。

レッズが今シーズン取り組み、積み上げてきたものが通用しなくなってきていることは大きな試練だと思います。ですが、幸いにもレッズは様々なキャラクターの選手が居ますし、開幕当初と比べて各選手達が大きな成長を見せています。そしてリカルド監督はこういった試練を一歩ずつ乗り越える術をチームに施してきました。絶対にレッズならこの壁を乗り越えていけると思います。ホームでのガンバ大阪との一戦は紛れもなく大事な試合になります。今こそチーム一体となって残りの試合に立ち向かっていきましょう!

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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