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ぐん税ニュースレター -社会保険労務士の部屋から- バックナンバー 2022年1月号

この記事は2022年1月に発行されたニュースレターvol.21から「社会保険労務士の部屋から」の記事を再編集したものです。法改正などは最新の記事および官公庁の情報をご確認ください。

To be, or not to be " 扶養”、それが常に問題です

年間を通じて、『年収いくらまでが扶養の範囲ですか?』という問い合わせを受けます。『○○円 までは大丈夫ですよ』と即答したいところなのですが、その前に、『健康保険上の扶養ですか、それとも税法上の扶養ですか?』など何点か聞き取ってから回答をさせていただいています。まずこの 『扶養』というあいまいな概念を明確にすることから始めましょう。

健康保険法上の被扶養者と所得税法上の控除対象扶養親族

まず第一に、『扶養の範囲』と一口に言っても、制度によって適用の範囲が違うので、いわゆる健康保険証に関わる扶養なのか、給与計算や年末調整に関わる扶養なのかあるいはその両方なのかをはっきりさせる必要があります。

健康保険法上の被扶養者とは?

  1. 国民健康保険と違い、被扶養者分の保険料負担はない

  2. 配偶者に関しては国民年金の第3号被保険者となり、国民年金保険料も納付免除

  3. 協会けんぽや健康保険組合への届出をもって認定され、健康保険証が交付

  4. 定期的に現況の調査があり、年収の基準を超えると、健康保険証を返納も『とにかく健康保険料の負担はしたくない』 と、国民健康保険、会社の社会保険などに加入せず配偶者の被扶養者でいることを希望する人は多いです。

所得税法の控除対象となる配偶者とは?

  1. 所得者(扶養する側:以下、所得者といいます)の年収が1,195万円以下であること

  2. その年の配偶者の収入 (給与収入のみの場合)が2,016,000円未満であれば、その金額に応じて所得者の所得を減らすことができる税金そのものではなく、税額計算の前の所得額が控除される

  3. 配偶者の収入額によって、配偶者控除と配偶者特別控除のいずれかを受けることになるが、控除額は最高で38万円、配偶者の所得により控除額が下がり最低で1万円

  4. 配偶者の収入が103万円未満なら、配偶者の所得税は0円

  5. 毎年、控除対象の要件を満たしていたら、扶養控除等申告書に記入して提出または確定申告

所得税法において、配偶者には、他の扶養親族にはない特別控除があり、計算は大して複雑ではありませんが、説明書きが大変わかりづらく、手引を見ただけではさっぱり理解できないのは私だけではないと思います。行政の独りよがり、と言いたいところです。
また、配偶者にだけは手厚くしているように見えて、この制度が主にパートタイマー主婦の就労の足かせになっているとも言われています。日本がこの先、ドイツやアメリカのように扶養の概念を捨て夫婦単位課税が選べるような税制を設ける日が来るの か、と20年先くらいを案じてしまいます。

壁はどこにあるのか?

かつては『103万円の壁』があり、そこをボーダーとして給与額を調整するのが一般的でしたが、平成29年の税制改正により、このボーダーが若干引き上げられました。

このほかに会社によっては、一定の要件を満たす配偶者に対して家族手当や扶養手当などが支給されることもあり、所得者側からは、配偶者の収入を抑えた時のメリットに目を奪われがちですが、『扶養の範囲内で』にとらわれず、長期的なメリットとも比較してみてください。例えば、配偶者が社会保険に入り収入が増えても、社会保険料負担により手取りが減る逆転が生じますが、老後や万一障害を負った時など、あまり想像したくない 「自分が働けなくなった時」に国民年金以上の年金給付や、健康保険の給付等も活用でき、給与所得控除以上の効果が得られる場合もあります。
最後に、所得税については、月々の給与から徴収されている金額以上の還付はないことにも注意が必要です。

資金調達に助成金を利用しましょう
業務改善助成金

毎年10月に最低賃金の改定が行われます。 パートタイマーの時給は毎年の最低賃金に合わせて更新するという事業所も少なくないと思いますが、『業務改善助成金』は、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ、設備投資など(機械設備、コンサルティン グ導入や人材育成・教育訓練)を行った場合に、その費用の一部を助成するものです。細かい要件がありますが、それらを満たせば、人数や引き上げ額に応じて20万円から最高600万円までの助成金が受けられます。また、他の設備投資関連の助成金と比べ、申請者が少ないせいか、比較的短期間で支給決定することもお勧めの理由の一つです。

  1. 現在事業場での最低賃金が865円以上895円以下(群馬県の場合)

  2. もう少し昇給してもいいと思っている

  3. 機械設備導入、コンサルティング、 教育訓練などで経費の支出予定がある

上の3つの要件を満たす場合、 または詳細については、
ぜひぐんま税理士法人にご相談ください。

業務改善助成金は2023年6月現在、受付中でございます。
ぜひお気軽にお問い合わせください。

社会保険労務士 高橋

今回は、最低賃金について、次の項目をチェックしてみましょう。

▢ 地域別最低賃金に達していますか?
▢ 日本標準産業分類別による特定業種(製鉄・情報通信機械器具製造 自動車部品製造など)の場合、 産業別 (特定) 最低賃金に達していますか?
▢ 最低賃金に達しているかを確認する場合の計算時に、最低賃金の算出 (時間単価)において、皆勤手当、通勤手当、家族手当、割増賃金を含まず算出していますか?
▢ 歩合給部分の賃金について、当該賃金算定期間の歩合給の総額÷総労働時間(所定労働時間+所定外労働時間)で計算していますか?

すべてに√がつかなかった場合は、黄色信号です。 ぜひもう一度最低賃金について見直してみてください。 内部からだと気づきにくい労務管理上の問題点を指摘し、改善へと導く労務監査を承っています。 自社の労務管理の現状に自信がない、 一度労働関係諸法について理解したい、という方にお勧めです。

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