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2000字のドラマ 芸術の日常

目がギラギラしている。

よく周りの親に言われた言葉だ。
それほどまでに熱中していた。

いつから この世界に入ろうと思ったのだろうか?
真っ青な世界の中、4畳の畳に寝転がりながら思い返していた。




まだ小学生のはじめの頃に、親に美術感に連れて行ってもらったことがある。はじめは、いやいや行ってみたが、思ったより綺麗な絵は見ていて楽しかった。

そこで、異才あふれる作品を偶然見つけてしまう。
ピカソの老いたギター弾きという作品に。
こいつのせいで、この世界に魅入られてしまった。

生命力がほとんどなく、死が迫っているようなポージングの中、必死で夢を追いかけるためにギターを弾く姿に焦がれた。

こんな絵を描ける画家になりたいとおもった。


子供の頃から画家になるために、すべての努力をした。
小学校の時のコンテストは、いつも私を含めた3人の誰かが金賞だった。

いつからだろうか、勝手に3人で絵について話会うことが普通になった。

運命なのか奇跡的に3人とも住んでいる場所が、近くだったこともあり、同じ塾で絵の描き方を学び、語った。

「なんで絵を描きたいと思ったの?」

裕福そうな服を着ている可憐なネコ目の少女が、たわいもない質問をしてくる。

「おじいちゃんみたいな人がギターを弾いているのが面白くて。いつのまにか絵を書いてみたいとおもって...」

くせっ毛が印象な少年は答えた。

なにそれー?っていいながら 意味が分からないって感じで笑っている。
小さな少女に君は?と聞くと。

「シマウマが前にでている作品が可愛くて...そこから...」

同じような理由じゃないかっていいながら笑った。
後で調べたら、作品はシマウマとパラシュートという作品のようだった。
もう一人の眼鏡をかけた少年に 「君はどうなの?」ときくと、

「はじめた理由はわからないけど、好きな画家は いないかな。」

彼は いつもこんな感じだった。
絵の描き方や、物の捉え方など、技術については話すが、過去の偉人については何も興味がなかったようだった。




時がたって、中学生になった。

いつもと同じ3人で、いつも通り絵について語りながら描いていた。
だた、少しだけ少しだけここから 小学生までの環境に変化が生まれてきた。

眼鏡をかけた少年の才能が少しづつ開花していた。
全国大会のような絵のコンテストでも3人とも金賞だが、コンテスト大賞になる回数は その子の回数がどんどん増えていった。



思い出すのはたわいもない会話。

「なんで 絵をまだ描いているの?」

眼鏡の少年は、くせっけの少年に聞いてきた。

「絵で有名になりたいんだ。歴史に名を残せるくらいの絵を描いてみたいんだ。そのためには、芸大に入ることから初めて、その後には海外のイギリスのRCAとか、アメリカのMITとかで 技術をもっと身に着けて...」

ちょっとまって

眼鏡の少年は くせっけの少年に答えた。

「君は有名な画家にはなれないよ」




天才というものは 図らずも突然 才能が開花するものだ。

そこからの眼鏡の少年はすごかった。

くせっけの少年と可憐な少女が 2次元で書いてある様な絵だとすると、
眼鏡の少年の絵は3次元に見える。

次元を超えるような程、才能が違う。センスが違う。




いつものように絵のコンテストが始まる。


彼が費やした数十倍の時間をかけて描く。
やっとできた。これなら...

そう思ってコンテストにだす。

そしていつも通り 大賞の右または左隣りにくせっけ少年の絵がある。
逆には少女の絵だ。

大賞は必ず彼だった。これが私たちの日常だった。

すぐ隣に描きたかった理想の絵がある


見れば見るほど、自分の絵が汚くみえてしまう。
ここもだめだ、ここも見てられない。

なりたかった自分がそこにあるような気がした。
眼鏡の少年の作品をみれば見るほど、自分の作品がゴミのように感じてしまった。


少女は絵をやめた。

多分彼と同じ気持ちだったのだろうか。
パラシュートと共に、戦線から逃げてしまったのだ。

いつもの日常だった 3人で会うこともなくなってしまった。




くせっけの少年の日常は 常に絵と隣り合わせだった。

いまは その日常がない。

大学生になった。

絵はもう みてもないし かいてもいなかった。

そんな中、運命的に 大学内で個展のような催しが開かれた。
次世代のスターと 過去の偉人の作品を比較する催しのようだ。

ふらっと 横目で見たときに気づいた。
彼がいた。

彼の作品は、今回の個展の主役の様だった。
なんとも言えない感情が芽生えた。

そんな時 ふと隣を見ると老いたギター弾きの絵が飾られていた。

作者からすると、私と同じ気持ちだったのだろうか。
青い背景色の込められた意味をより理解した気分だった。




結局私は、過去の日常とかわらない日々を過ごしている。

この持っているギターが、
青い色から明るい色に変える事を願いながら、毎日絵を書いている。

なぜ出会ってしまったのだろう


好きではなくなってしまった絵を思いながら、絵を書きつづけている。




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