台湾 猛毒のアイスキャンディー
2017年に台湾の台北新聞で、国立台湾芸術大学のビジュアルコミュニケーションデザイン学科の学生3人の作品が取り上げられた。
遠目には美しく美味しそうなアイスキャンディーが並んでいるように見えるが、近づくと衝撃を受けるだろう。これらのアイスキャンディは、台湾周辺の汚染された水源100カ所から集められた水で作られている。
あまりにも多様な水質汚染水・・・カラフルなライナップは、台湾の水質汚染の深刻さを浮き彫りにしている。タバコの吸殻、パルプ、ペットボトルのキャップが目を引くが、多様な色は下水道や工場から流れ出る汚染水の色だ。
採取された工場排水には重金属も含まれており、台湾では有害物質が河川に垂れ流されていることを物語っている。
学生たちによると、これらの作品は人間によって川や海が汚染された物語を映し出しているという。彼らは「作品を通じて、台湾の河川の様子を知ってもらいたい。水質汚染の問題は当分解決しないが、警告の役割を果たしたい」と語った。
台湾の水質汚染は深刻
台湾のThe Storm Mediaによると、台湾の河川区間の25%は中度から重度に汚染されていて、飲用や灌漑に使用不可能であるという。
https://www.storm.mg/article/405773
しかし、台湾での水質汚染に対する罰則は軽く、ほとんどの企業は水質汚染で摘発されても、罰金で済んでしまう。そして水質汚染によって罰金を課された金額が高い地域は台湾の半導体工場が建ち並ぶエリアに多いことも伺える。
水質汚染に対する台湾企業の意識は、日本と比較して圧倒的に低い傾向があることは否定できないだろう。
台湾の半導体工場が熊本にやってくる
台湾の世界的な半導体メーカー「TSMC」が、日本で初めての工場建設を熊本県菊陽町で進めている。
TSMCは環境問題に熱心に取り組んでいるように宣伝しているが、台湾現地の人の認識は大きくかけ離れている。この企業は台湾で数多くの、大気汚染、水質汚染、有毒廃棄物汚染などの環境問題を引き起こしてきたことは以前の記事でご紹介した通りである。
T S M Sの創設者であるモリス・チャン氏は、日経アジアの記事のインタビューの中で、アメリカで半導体を製造するコストは、台湾での製造コストの倍近くになる可能性があると述べている。おそらく日本国内での製造コストも高くなるだろう。生産コストを抑えることで低価格チップを実現してきたTSMCが、はたして生産コストがかさむ日本において、高額な有害物質の処理や産業廃棄物の処理にコストをかけてくれるのか疑問が残る。
半導体を製造するには数多くの化学物質を使用し、非常に有毒であることは否定できない事実である。製造の工程は大変複雑であり、工程ごとに異なる化合物を必要とするため、その数は数百種類に及ぶこともある。
TSMC熊本工場では、工場から排出される汚染水は、菊陽町の下水道を通って熊本県の北部浄水センターに一旦溜められ、県の中心を流れる坪井川に流され、有明海へと流れていくという。県によると、汚染水の調査には下水道法が適用されるというが、下水道法の調査品目数はわずか28品目である。そして重金属のアルミニウム、ガリウム、インジウムは含まれていないのだ。
一度汚染された河川や海は、元の姿に戻るのに膨大な時間を要する。
汚染されてから対策しても遅いのだ。
一人一人が産業を注意深く監視し、水質汚染が起きる前にストップをかける必要があるのではないだろうか。