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年賀状哀歌 〜1%の集客を求めて〜

年初にお渡ししている年賀状が、今年も残りあとわずかになってきた。

ところで当店、オープン以来、年賀状を毎年作り続けていて、かれこれ今年で19枚目になる。構想、デザイン、制作と、暮れの何かと忙しい時期に、結構大変なので、毎年やめようやめようと思いつつ、結局続けてしまっている。

大体にして、いまどき店からの年賀状なんぞ渡されても、嬉しいどころか場合によっては捨てることすら煩わしいだけで、正直迷惑だろうなあ、と思っている。


うちの店は年賀状としては、毎年概ね1000〜1500部程度刷る。

住所を把握していて、郵送をさせていただいている方が(もういまでは随分絞って)100部程度。店頭で欲しいといってくださる方にお渡しするのが同じく100部程度。合計で200部程度。

どう考えても、1000部以上は刷り過ぎである。


何故、こんなに刷るのか。


今のうちに謝っておきます。


そう、近所のお家にポスティング(投函)をするのである。


本当にごめんなさい。この場を借りてお詫び申し上げます。


全く褒められた行為ではないと知りながら、今年こそはやめようやめようと思いつつ、結局続けてしまっている。


何故、続けてしまうのか。


飲食店がお客さんを集める「集客チャンネル」というのは、ひとつよりも、できるだけ多い方が良いというのはよく言われる事である。

例えば、大きな工場か何かの近くにあって、その工員たちがほとんどお客の大半を占めているような料理屋さんの場合、その工場が潰れてしまえば、その店も連鎖的に閑古の憂き目に会うのは当然の成り行きである。(昨今のこの騒動で、インバウンド需要と称した観光客目当ての店を見てもお分かりになるかと思う)

近くにお勤めで仕事帰りに使ってくれる人、通勤途中の乗り換え駅だからと寄ってくれる人、デートの途中でたまたま見つけて入って来てくれる人、知人の紹介で来てくれる人、グルメサイトを見て来てくれる人等々、うちの店を知ってくれる「集客のチャンネル」は多ければ多いのに越したことはない。

そんな中でも、「ご近所さん」は大切な「チャンネル」のひとつだ。

もっとも、うちがオープンした頃は、この千代田区のど真ん中に「住民」と呼べる人はほとんどいなかった。(いても、昔からお住まいの大家さんとそのご旧友くらい(笑。)


ポスティングをしようにも、する家がないような状況だった。
(オフィスへの飲食店のポスティングは、あまり効果がない。)


でも、時代は変わった。

新しく建てられるのは、マンションがほとんどだ。

そう、「住む所」としての「神保町」に目が向けられ始めたのだ。


もともと僕は、「ああ、この辺って、治安はいいし、交通の便はいいし、ちょっと高いけれど、住む所として最適なんだけどなあ。」とは思っていた。(ちなみに残念ながら、僕は千代田区民ではありません。)

ポスティングの部数も年々増加していって、現在の1000部強になった。(それでも投函を仕事にされている方からすれば、話にならない部数だとは思うが)

ご存知かどうか知らないが、ポスティングのような宣伝方法の効率というのは極めて微量で、アクションに対するリアクションの比率は平均0.75%程度、1%あればいい方だと言われている。

多分に漏れず、うちの場合も「年賀状を見て」と言って来てくれるのは、毎年5人〜10人程度。1%にも満たない。


それでも、何故 続けるのか。


正月の冷たい風の中、毎年泥臭くポスティングを続けるのは、はっきりいって、


「かっこ悪い」なあと思う。


(決して、ポスティングという仕事そのものではなくて、そういった集客方法に頼らざるを得ない自分の店に対してです。念のため。)


マンションのエントランス近くに郵便コーナーがあって、住民の方と鉢合わせになたりすると、穴があればどころか、自分も郵便受けに入りたい気分になる。

さらには、もともと来てくださっていたマンションの住民の方から「ポスティングしてるなんて意外」なんてお言葉をいただくと、なんだか夢を壊してしまったようで、軽い罪悪感すら感じる。

大体にして、流行っている店であればこんな事はする必要がないわけで、地道な努力をしてるようでいて、実のところは、「うちの店は流行ってません」と、宣伝して回っているようなものだ。

老舗の有名店が、わざわざポスティングをしているなどと、聞いた事がないし、むしろこれ以上の集客を、あえてしないようにしているのが正直なところだろう。

それに対して、うちのような名店でもなんでもない店は、あっちのチャンネルから1%、こっちのチャンネルから1%、を拾い集める必要がある。

そこには「かっこ悪い」も何もない。


本当いうと、かれこれうちも20年目を迎える事だし、20周年記念の来年こそは、いい加減この方法から卒業したいと心底思っている。


でも、「きっと、またやってしまうのだろうなあ。」とも思う。


何故なら、


本当の意味で「かっこ悪い」店というのは、


「誰も客がいない」店なのだから。



1%のご来店、誠に有難うございます。



この「note」チャンネルからも、1%の集客を目指したいと思います。



そんなことを思う、2021年の年初です。



神保町にお越しの際は、是非お立ち寄りください。

年賀状の残り、まだ少しあります。

お待ちしております。


Building a New Life / Celestial Alignment
ChilledCow Records
2020

(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)

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