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【独学精神医学#4】自分を見失う「自我障害」とは?自我障害と精神疾患まとめ

「自分」に対する意識のことを、「自我意識」といいます。

一般に私たちは、以下のような自我意識を持っていることでしょう。

1.行動や思考は「自分」が行っている。
2.「自分」は世界に一人である。
3.過去の自分も現在の自分も、同じ「自分」である。
4.「自分」と「他人」は区別される。

しかし、過度なストレスやトラウマによって精神障害を患うと、この自我意識が喪失してしまう場合があります。

今回はそんな、「自我障害」についてまとめてみました。


自我障害➀ 離人感

離人感とは、自分自身が現実から切り離されたように感じる状態をいいます。自分の存在や感情、身体の感覚や行動に実感が持てなかったり、外界からの疎外感を強く感じたりします。

「自分が自分でないような感覚」「自分を外から見ているような感覚」などと表現され、例えば友人と話していても、まるで自分がロボットのように動いている、感情が他人事のように感じられるということがあります。

また、「外の世界と自分との間にベールがある感じ」といった、外界に対する現実感の喪失も特徴として挙げられます。

この離人感は、神経症、パーソナリティ障害、うつ病、統合失調症など幅広い疾患でみられ、現実から一時的に切り離されることによって過剰な感情やストレスから自分を守ろうとする、脳の防御反応によるものと考えられています。


自我障害➁ させられ体験(作為体験)

させられ体験は、自分の思考や行動が自分の意志によるものではなく、外部から強制されていると感じる状態です。あたかも他者や何かの力によって自分の行動が操られているかのように感じます。

「自分の手が勝手に動かされている」「今頭に浮かんでいる思考は他人によって考えさせられているものだ」などと表現されます。

させられ体験の中にも色々種類はありますが、特に自分の考えが外部の力によって奪われ抜き取られていると感じる「思考奪取」、自分の思考が外部の力によって操作されていると感じる「思考干渉」、自分の考えが他人に伝わり、他人に筒抜けになっていると感じる「考想伝播」などは統合失調症の一級症状として多くみられます。

これらは主に、脳の機能不全や神経伝達の異常によって引き起こされると考えられています。


自我障害➂ 憑依

憑依は、自分の身体や意識に他者や霊的な存在が入り込んで、自分を支配していると感じる状態です。自分自身がその存在に取って代わられている感覚、という表現もできます。

具体的には、自分に動物や神・霊が乗り移ったといった感覚が生じ、その動物の振る舞いをしたり、神や霊として言葉を話したりするなどの症状がみられます。

憑依の感覚は、解離性障害や統合失調症に加え、迷信やまじない、宗教的要因などで起こる祈祷精神病の症状の一部として現れることがあり、現実と非現実の境界が曖昧になることで発生します。


自我障害④ 多重人格

多重人格とは、一人の個人の中に複数の異なる人格(アイデンティティ)が存在し、それらが交互に表に現れる状態を指します。この状態は、解離性同一性障害(DID)とも呼ばれます。

多くの場合、患者は「別の人格が自分の代わりに出てくる」感覚を持ち、それぞれの人格は異なる名前、性格、記憶、行動パターンを持ちます。ある人格が表に出ている間、その間の出来事は他の人格には記憶として残らないことが多いです。

 多重人格は、通常、幼少期の極度のトラウマ(虐待など)に対する防衛反応として発症します。脳がそのトラウマから自分を守るために、記憶や人格を分離させることで対処する結果、複数の人格が形成されます。

一方で、医療行為や治療によって引き起こされる医原性の場合も確認されており、診断の位置づけには議論が残されています。


まとめ

今回は代表的な自我障害とそれぞれに関連した精神疾患をまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか?

個人的にはどれも経験したことがないものだったので、なかなか想像しにくかったのですが、もし自分が自我障害になってしまったらどこか寂しい気持ちが拭えないだろうなと感じました。

一方で、離人感や多重人格がそうであるように、この「自分」を見失う自我の喪失は、「自分」を守る手段であることもあります。

耐えきれないストレスや強いトラウマと密接にかかわってきた「自我意識」から「自我」を切り離すことで、自分自身の命を守ろうとしたのであるならば、それを取り戻すことは果たして一概に良い、といえるのでしょうか?

… …

脳科学において「自己」や「意識」は、非常に難しい問題:Hard Problem of Consciousnessとして位置づけられており、現在も多数の優秀な研究者が研究を続けています。

どうかそれらの研究が実を結び、自我障害の治療や倫理的価値観の創出の一助になる日が来ますようにと、願うばかりですね。

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ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!

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これからも色々アウトプット事項をまとめていきますので、ぜひ次の記事でお会いしましょう!

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