【はじめての広報・PR】 “広報部門立ち上げ” のときに確認したいチェックリスト
こんにちは。ごさとです。
今回は「組織でコーポレート・コミュニケーション機能を立ち上げるには?」というケースを想定して、僕が初回のヒアリング時に確認している内容をもとに準備の段取りをお届けします。
● 体制構築で浮かんでくる “疑問”
スタートアップやNPOなど、スタッフが少ないフェーズの組織では専任の広報・PR担当は置かずに「兼務」という形式を採用していることも多いかと思います。
業績の拡大やそれを見越した組織づくりを目指す段階になり、広報部門の立ち上げを相談される機会もあるのですが、営業やマーケティングなど外部と接点がある業務を担当されていた方や、経営企画や総務など組織の仕組みづくりを行っていた方が「広報も兼ねていたんです」というケースも多く見受けられます。
「今までは発生ベースで都度対応していたのですが、一般的にはどのような業務を行うものですか?」
「体制が整っているところは、どんな考え方で運営して、どんな機能を持つことが多いですか?」
このような疑問を持たれている方には、次のような手順で整理していきます。
● 目的とゴールイメージを明確にする
漠然と「広報・PRが重要」と認識していたとしても、実現したいことや目指したい状態が曖昧=課題が明確でないと、組織として必要な機能や人財の要件も定まらないと思います。
【現状認識の問い】
・組織としてどのようなフェーズにあり、どのような課題が持ち上がっているのか
・そのなかで、コミュニケーション活動で解決できそうなものは何か
【課題の例】
・急速に組織を拡大したため、社員の方向性や考え方に一貫性がなくなってきた
・「プロダクトやサービスのイメージ=組織のイメージ」となってしまい、もっと多面的に自分たちを見て欲しい
・参入する領域は規制や業界のしがらみが複雑で、慎重にポジションを形成したい
・認知を広げることで見込み客を獲得したい
「着手すべき優先度が高い課題はどれか?」が絞られてきた後には、視点を少し先の未来に移します。
【ゴールイメージの問い】
・組織としてどのような状態になっていることが望ましいか、嬉しいか
・社内外のステークホルダーの間で、どんな組織であると認識してもらいたいか
【あるべき姿の例】
・スタッフには「ジョインして与えられた業務をする場」ではなく「自分が解決したい世の中の課題にアプローチする手段」として事業を捉えて欲しい、そのような意識を持つ人を採用したい
・現状のプロダクトやサービスにフォーカスするのではなく、もっと先に描いている「未来の社会」を示して共感してくれる人を増やしたい
・自分たちは敵ではなく、既存の事業ではカバーすることができなかったアンメットニーズを満たすことで、業界に貢献できることを理解してもらいたい
掘り下げていくと、コミュニケーション活動の対象となる領域やターゲットが少しずつ具体的になっていきます。
ここのやりとりが焦れったいのか「とにかく何か提案してください!(華やかな企画をぼんやり想像・・・)」とおっしゃるクライアントもいるのですが、結局は決裁を取れずに=必要性を説得できずにフェードアウトされて連絡がつかなくなることが多いです。。
また詳しくお話を伺うと「やっぱり広報じゃなくて別のことにリソースを割いた方が良いと思いました」となるケースも時にはあります。
(全体最適を考えての判断ならば、尊重すべきことだと思っています)
● 3つのレイヤーの実施状況を整理する
コーポレート・コミュニケーションの活動を大きく分類すると次の3点に集約できるので、どこまでができていて、どこからが未着手なのか、再設計が必要なのかを見極めます。
①コミュニケーション方針策定
②シンボリックアクションの実現
③ベース活動の実践
①+②+③=ブランディング
プレスリリースやメディアリレーションズなど想像しやすい業務は③のベース活動に含まれるのですが(後述します)、それだけでは散発的な活動になってしまいがちです。
3つのレイヤーすべてに取り組むことができて、はじめてコーポレート・コミュニケーションが実現できます。
①コミュニケーション方針策定
これは先ほどの問いからの続きで「どんな組織であると認識して欲しいか」を突き詰めることで「我々は何者であるか」を端的に示す言葉に落とし込みます。
昨今「パーパス(存在意義)」がはやり言葉のように用いられていますが、組織の誰に聞いても「私たちは●●を目指している、そのために●●に取り組んでいる」と同じ答えが返ってくる状態を目指し(なかなか難しいのですが)、社内外のステークホルダーに対して言葉や行動で示す指針となるメッセージです。
ここで重要なのは、
「その “認識” を裏付けることができる “実態” があるか」
「目指すべきもの、そのための取り組みが、顧客を含めたステークホルダーに貢献するものか」
綺麗な言葉を並べ立てているものの実態が伴っていない場合には「フェイク」というネガティブな評判を強めてしまうことになりかねないリスクがあります。
これも最近よく使われるようになった「SDGs “コミュニケーション” 」にありがちな、既存の取り組みを「当てはめただけ」で「やってます!」と取り繕うことを「SDGsウォッシュ」と批判するのですが、それに近い寒々しいことにならないように気をつけたいところです。。
②シンボリックアクションの実現
「シンボリック=象徴する」ですので、①の方針を体現するような取り組みという側面と、競合を意識した「USP=Unique Selling Proposition」や、メディアを想定した「ニュースバリュー」の側面も併せ持つことが理想です。
プロダクトやサービスが方針と結びついているような場合にはイメージしやすいのですが、コモディティ化が進んだ業界であったり、BtoBの領域では対外的に独自性を打ち出すことが難しい場合も多くあります。
そうした場合には、新しくプロジェクトを立ち上げることも検討します。
・顧客をコミュニティ化して、新しい商品やサービスを共創する
・「顧客の顧客」をサポートする取り組みを始める
・外部の専門家と組んで顧客に新しい価値を提供する など
先ほども述べましたが「認識を裏付ける実態」と「顧客も含むステークホルダーへの貢献」がなければ「仏造って魂入れず」になりますので、コミュニケーション方針との整合性を持たせるようにしましょう。
必要に応じて社内外の関係者にインタビューなども行いながらニーズを把握するなど、独りよがりにしないための注意が必要です。
③ベース活動の実践
これが一番想像しやすい、広報・PR担当者のベーシックな業務です。
(1)組織や事業活動に関する情報収集
・事業イベント(決算説明会や総会、戦略発表会など)
・今後上市またはアップデートが予定されるプロダクトやサービス
・組織や人財(特徴的な制度や取り組み、タレント人財など)
(2)コミュニケーションカレンダー作成
(3)プレスリリースの作成と配信
(4)メディアリレーションズ
(5)報道モニタリング
(6)社内報の作成と共有
(7)危機管理広報対応
やはりここでも、①の方針に結びつけて取り組むことが重要になります。
「とにかく出せる情報を出す」という行き当たりばったりの活動になってしまうと、情報の受け手は散漫なイメージしかできず「望ましい認識」にたどり着けませんので、その場合は方針に立ち返り、動き方を見直すことをオススメします。
● まとめと参考記事
ここまで、広報部門を立ち上げる際の確認点を解説してきましたので、改めて整理してみたいと思います。
・目的とゴールイメージを明確にする
・3つのレイヤーの実施状況を整理する
①コミュニケーション方針策定
②シンボリックアクションの実現
③ベース活動の実践
書いてしまうと極めてシンプルなのですが・・・
「広報・PR」や「コーポレート・コミュニケーション」という言葉が独り歩きし俯瞰した理解が難しいこと、大きな組織では役割分担が進んだために、部分的な経験者しかいないことが、いざ自分が “立ち上げ” や “1人目広報” の状況に直面したときに「どうすれば良いか分からない」を生み出してしまうのかもしれません。
最後に、過去に書いた記事のなかから、立ち上げのフェーズで参考になるものを再掲しておさらいしておきますね。
【はじめての広報・PR】 “広報担当” が活躍できる機会って?
【はじめての広報・PR】 “あなたの組織ならでは” を伝えるコーポレート・ストーリーのつくり方
今回も最後までお読みくださりありがとうございます。
皆さんの参考になれば幸いです。
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