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薬剤師として、患者さんのナラティヴを把握しながら、対話する意義(後編)


前回に引き続きAさんのお話


皆さん、いかがお過ごしでしょうか。

毎週日曜日に更新していた『薬剤師と私』企画ですが、
1日遅れでの更新となってしまいました。

まぁそんなときもあるよ、
と言い聞かせて、ゆるりと続けていこうと思います。

前回途中までお話した、
80歳男性Aさん(仮)の事例をご紹介いたします。

前回の記事も、マガジン『薬剤師について語ります』
にあるので、ご覧いただけると幸いです。

いつものように
こんな薬剤師もいるんだぁとか
こんなことあるのねぇとか
へぇそうなんだぁくらいに捉えてくださいね


◼️五感で察した違和感


異変に気付く


その日、Aさんをお呼びし、
お話を聴いていたとき、
異臭というか、オシッコ臭いというか、
いつも感じたことのない臭いを感じました。

薬局にいる患者さんはAさん1人。

Aさんに、まず体調の変化などないか聴くと、
特に気になることはないとのこと。

食欲はどうか?お通じはどうか?夜は眠れてるか?
オシッコの出具合に問題がないかどうか?
ふらついたりしないか?

などなど変化がないか確認すると、
夜寝てから5回くらい起きることや、
娘さんから呂律が回らないことを指摘されたこと、
そんなことを語り出しました。

夜間の中途覚醒回数は、
それ以前の薬歴を見ると3回ほどであり、
増えていることが伺えました。


◼️会話時に感じた変化


元気のなさ


話を聴くうちに、
以前よりも元気がないと感じられたので、
悩みはないか?など聴いてみました。

すると「最近は暇で、何もやっていない」
と語り出しました。

以前は山登りをしていたので、
山に登ったりしないの?と訊くと、
「山登りを教えてくれた師匠であり、
 相棒でもあった同級生が亡くなってから、
 何だかやる気がおきないんだよ…」
とのこと。

・気持ちが落ち込んでいること
・買い物の際にふと万引きしそうになること
・自殺とか安楽死とか考えてしまうことがあること

そんなことをお話してくれました。

私は、そんなAさんの話を傾聴しました。

と同時に頭の中では色々と思考し、
薬剤師のみの介入では難しそうだなぁと思いました。

その日は、語り辛いであろうことを、
お話してくれたことに感謝しながら、
また辛いときにはいつでも相談するよう伝えました。

おそらく20分〜30分くらいお話していたと思います。

普段は、どちらかと言うとせっかち気味なAさんが、
そんなに自己開示してくれたので、
今後どのようにしていこうか考えさせられました。


◼️情報共有することに決めた理由


とりあえずの行動

Aさんが帰った後、その日の様子や、
私が感じた変化や違和感をまとめて、
地域包括支援センターへ情報提供しました。

もしも訪問する機会があれば、
様子を見て欲しい旨を添えて。

また、社会福祉協議会の友人に、
Aさんの住む地域に自助団体やコミュニティがないか、
確認してみました。

次回Aさんが薬局に来た際に、
情報提供できないかと考えたからです。

次来るまでに、お電話を入れてみようか、
と悩んだ末に、電話はしないことにしました。

介入し過ぎるのも良くないかも、
と感覚的な判断にはなりますが、
そう思ったからです。

そうこうしている内に、1ヶ月経過し、
Aさんが薬局に来ました。

その後の気持ちの変化を聴いてみると、
「奥さんと口論しながらも何とかやってるよ。
 万引き?大丈夫だ。自分は考え過ぎてしまう性格で、
 そうならないように切り替えているよ。
 町内会に参加するかって?そういうところに行くと、
 色々と口を出したくなってしまうから遠慮してる」

そんな感じで、前回感じたような違和感はなく、
気持ちの落ち込みもないとのことだったので、
ひとまず安心しました。

そうは言っても、今後もフォローが必要だなぁ、
なんて感じながら、その日もお話してくれたことに
感謝の気持ちを伝えつつ、悩みがあれば、
いつでも相談するよう声掛けしました。


◼️様々な手段や方法がある中で


取り止めのない話を紹介したが


その後のAさんは、以前のような明るさを取り戻し、
今も元気な姿で薬局に来られています。

今回の事例では、
特に何かしたって話ではありませんでした。

薬局にいる薬剤師として、
薬だけでは解決しないこともあるなぁと考えており、
そんな事例として紹介させていただきました。

もちろん、今回の事例で、
医療の側面から心療内科を紹介するのも1つですし、
他にも色々な手段や方法があると思います。

文章だけでは、うまく伝えられませんが、
Aさんと顔を合わせて会話する中で、
心療内科の紹介はAさんには合わないかもな、
なんて感じたので、事例のような手段を取りました。

私という薬剤師が、どう感じて、どう行動したか、
ということを紹介しただけであって、
今Aさんに同様のシチュエーションがおとずれた場合、
もしかしたら別の手段を取るかもしれません。

まぁそんなもんだよなぁ、
なんて私自身考えています。

薬剤師もこんなこと考えているよ、
と感じていただけたら幸いです。

また様々な事例を紹介していこうと思いますので、
次回も読んでいただければと存じます。



こんなポンコツな私ですが、もしよろしければサポートいただけると至極感激でございます😊 今後、さまざまなコンテンツを発信していきたいと思っておりますので、何卒よろしくお願いいたします🥺