「文句を言うなら俺と同じだけ稼いでみろ」の心理と解決方法
家事に育児にと戦場のような日々を過ごしているママさん方、お疲れ様です。家事育児のしんどさったらないですよね。私はかれこれ息子が生まれるずっと前からほとんど在宅で仕事をしていますから、その大変さがよくわかります。
さて、今回は表題の通り「文句を言うなら俺と同じだけ稼いでみろ」という言葉の真意についてのお話。誰の言葉かは言うまでもありませんよね。そう、あなたの旦那様のお言葉です。あるいはあなた自身かも……?
今回はこの言葉の裏側にある心理を紐解きながら、当該案件の解決方法をご提案します。とくにこれは発言者側の旦那様に読んでいただくことに意味がありますので、心当たりのある方はぜひ最後までお目通しください。あるいは奥様は旦那様にこの記事を読むよう勧めてあげてください。きっと心を整理できるようになります。
※この記事は4,734文字です。
「俺と同じだけ稼いでから言ってみろ」発言の裏側にある心理
まず大前提として重要なのが、この発言は間違った発言であり自省すべきモラハラ案件ということ。
しかし男性側にはその自覚がないばかりか、むしろ「俺の言っていることの何が間違っているのか」とすら思っている人も少なくないでしょう。
「俺と同じだけ稼いでから言ってみろ」を、彼らはどんな気持ちで言っているのか?
そもそもこの発言は、旦那さんが奥さんに不満を抱いていることを表しています。その不満の一つひとつはおそらくささいなことでしょう。奥さんの労りがなかったり、満足な食事を用意してもらえなかったり、なんか優しさが足りないように感じたり……。
不満の原因は重要でありません。旦那さんが奥さんに対し「不当だ」と感じているという事実が大切です。
もっとわかりやすくいえば「俺はこんなに苦労をして頑張っているのに、どうしてこんなこともやってくれないんだ」という心理です。
もしかすると単なる支配欲やいびつな承認欲求などによるケースもあるかもしれません。今回はもっとも典型的と予想されるケースでお話ししています。
これって、フタを開けると実は単なるすれ違いなんですよね。
旦那さんは「お前より俺の方が苦労している」と思っています。開き直りでなくおそらく本気でそう思っています。
そしてここにすべての元凶があります。
なぜこういう心理に陥るのか?
それは、家事育児の大変さを知らないから。
とくに育児。こればっかりは本当に体験してみないとわからないと思います。難病や障害の苦しみは当事者になってみないと真に理解できないのと同じで、人間は基本的に自分が当事者にならないと物事を理解できません。たとえ育児であってもです。
そして働く男性は基本的に、育児の現場に常駐できません。休日などたまに子どもの相手をしたり世話をしたりしても、それだけでは育児の実態などまるで見えないのです。
育児はここが大変
では育児がどれだけ大変なのかを具体的にお話しします。ぜひ男性に知っておいていただきたいトピックです。
たとえば外出の際には、自分の荷物だけでなく子どものおむつの枚数を確認し、着替え、タオル、泣いたときに機嫌をとるためのおやつ、赤ちゃんなら粉ミルクやお湯を入れたポット、眠くなったとき用の抱っこ紐、最低限これだけのものを準備して初めて自分の支度にとりかかることができます。このほかベビーカーのタイヤの空気圧を確認したり、場合によっては子どもの熱を測ったりといった作業が伴います。
「女の支度は時間がかかる」だとか「準備が遅い」なんて言われようものなら「じゃあお前がやれ」という話。男性はせめてガスの元栓チェックや全室の窓ロックのチェックくらい率先してやっておきましょう。
おまけに育児は常にやるべきことに追われて休憩がありません。外で働いている男性は「自宅にいるんだから、好きなときに休めるでしょ」くらいに思っているかもしれませんね。とんでもない話です。
子どもは勝手に頭をぶつけたり転んだりして泣きますし、触っちゃいけないものを触ります。足にしがみかつかれりゃ歩くことすらままならないし、皿やグラスをぶん投げるわ、放っておけばトイレットペーパーをすべて巻き上げたりテレビや壁に落書きを始めたりコンセントに物を突っ込んで感電死しにいったりで目が離せないわけです。本人の意思にかかわらず結果的に超絶かまってちゃん。事故を阻止しながら生活していると、昼寝どころか本当に休憩時間すらありません。
育児ノイローゼになったり鬱になったりする人が一定数いるのもうなずけます。
「え?疲れているのに通勤電車で座れなかった?こちとら立ちっぱなしでいいから15分だけでも一人になりたいわ!」というママはたくさんいるのではないでしょうか。とにかく休みたい……一人の時間が欲しい……トイレにもお風呂にもプライバシーなどなく、監視体制で常に納期に追われている気分……
子どもを連れて買い物をすると、歩いて五分のスーパーに行くだけでも帰宅時には一時間が経過しているなんてこともザラにあります。子どもをベビーカーに乗せたはいいものの「降りたい!」とダダをこねられ、おしっこしたいうんちしたいとなればトイレに連れていき、ゆるゆるうんちがおむつからはみ出ちゃったら最悪一度帰らなければならない。
少し目を離すと店から出ていってしまう。2歳くらいの子どもなんててんで言うことをきいてくれやしません。ママはベビーカーを押しながら買い物かごをかついで走っている子どもを追いかけるわけです。
ただでさえ男性より力や体力の劣る(しかも産後の)女性です。男性が想像する50倍はしんどい作業だと思ってください。
ところが旦那からは「何しているんだよ、そんなの座らせておけばいいだろ」と言われる。座らせておけるなら座らせておくんです。それができないから困っている。
五分で終わる買い物に三十分かかる。要領が悪いわけでなく、子どもや周囲のことを考えるとこのくらいの時間がかかってしまいます。
旦那さんは理解してくれない。
パパにこの苦労が伝わらない。
わかってもらえなくてママは苦悩する。
どうしてわかってもらえないのだろう?
その理由を知っていますか?
ここ大事ですよ。
あのね、
子どもの態度がママとパパで全然違うんですよ。
なぜかパパと買い物するときはおとなしくしているしダダをこねないしいい子なんです。
「いつも通りの姿を見せたれやーーー‼」と子どもに向かって心の中で叫んだことのあるママ、挙手をお願いします。
男性が育児の大変さを理解できない本当の理由
男性が育児の大変さを理解できない本当の理由は、男性が育児の現場に常駐していないからというのもありますが、「ママと一緒にいるときとパパと一緒にいるときで子どもの態度がまるで違うから」というのが非常に大きいと思います。
大体の子どもはパパの前でいい子なんですよ。だから私は当時、妻の苦労がよくわかりませんでした。
だって妻が子連れで買い物をすると一時間もかかるのに、私だとほんの15分で終わるんです。
この差は何だろうと観察してみたら、なんてことはありません。子どもの様子が両者でそれぞれ違うわけです。ほかのご家庭もおおむね同様、パパが育児の大変さを理解できない理由は大体がここでした。そのことに気づいていないママもいましたが。
今これを読んでいるママ読者にも、「自分の苦労や努力が夫に理解してもらえなくて苦しい」と感じている方がいるでしょう。
なぜ理解してもらえないのか。
それはお子さんの態度が、自分と一緒にいるときと旦那さんと一緒にいるときで露骨に違うからではありませんか?
こういう観点で育児における夫婦のすれ違いについて考えると、新たな解決策が見えてくるかもしれません。
男性に向けてのメッセージ
「俺と同じだけ稼いでから言え」という言葉。実は私も妻に向かって口にしたことがあります。当時の私は心を病んでいた(詳しくはこちら)とはいえ、これも自分の一側面なのだと深く反省しました。
しかし当時の苦労やストレスが尋常でなかったため、心の病が回復に向かっても「あの時の努力と苦労を思えば、やっぱり当時の夫婦関係はアンフェアだった」という考えをなかなか払拭できずしばらく悩みました。当時の妻に対する不満がありましたし、愛する妻に不満を抱いている自分にも嫌気が差していたのです。
当時、私はおそらく日本総人口の1%の割合に満たないくらいの高額収入を得ていました。言い換えればそれだけ仕事を頑張っていたということでもあります。それだけ努力しているという自負がありましたし、自分の能力への誇りもありました。
主観的に見ると、収入って自分の努力と能力によって得られるものです。自分が頑張ったからこれだけ稼げるしこういう暮らしができるんだ──。主観だけで物事を捉えると、こういう考えに陥るのは当然でしょう。
ここが根本的に間違っているんです。
あなたが得た収入は、あなた一人で稼いだものではありません。
奥さんがハウスキープして、あなたが過ごしやすいよう細かく配慮し、二人の可愛い子がケガをしないよう健やかに育つよう工夫してくれているからこそ、あなたはそれらに使うべきリソースを仕事に割けるのです。
その収入はあなた一人でなく、奥さんと二人で得た収入なのです。
このことに気づいたとき、私は自分の心を整理できるようになりました。妻に不満を抱くどころか、感謝すらするようになったのです。
この背景には「自分はこれだけ頑張っているのに」という不満があると思います。私も当時は精神的にきつい状態でした。負担が大きいと、それだけパートナーへのあたりも強くなりがちだと思います。もしかするとこれは、自分と仕事の在り方を今一度見つめ直すいいきっかけかもしれません。
それから私は以前の発言を謝罪し、妻に感謝の気持ちを伝えました。当時の自分の気持ちを正直に話し、自分の考えがどう変わったかも伝えました。
この問題を解消してから、私たち夫婦の関係性は以前のように良好な状態に戻りました。関係が危機的だった期間はトータルで一年に満たないくらいでした。
奥さんの努力と工夫はなかなか目に見えない
とはいえ、奥さんの旦那さんに対する配慮や工夫というのは、実はなかなか目に見えにくいものでもあります。
私も妻の努力や苦労を知らなかったわけではありません。しかし実際に私の目に見えていたのは、その中でもごく一部分だけでした。
たとえば毎日の献立を決めたり、予算内で買い物を工夫したり、子どもを抱えながら時間を逆算して行動するのだってそう簡単ではありません。
あなたの好きなお酒やおつまみをさりげなく用意してくれていたり、あなたが気持ちよく眠れるように枕カバーを交換したり、動線を考えて子どもの遊ぶ位置やおもちゃの置き場所を配置したり、あなたのことを考えて柔軟剤を選んだり。
ほかにもあります、家にカビが生えない理由、洗剤やシャンプーが常に不自由なく使える理由、寝心地のいいベッドが常にある理由、トイレや風呂が常にきれいな理由、すべて奥さんが準備して備えてくれているから。でもこの通り、奥さんの努力や配慮って本当に目に見えにくいんです。
ですからパパさんは、そういうことを念頭に置いた上で奥さんの努力や工夫をできるだけくみ取ってあげてください。
そしてママさんは、実践している努力や工夫をくみとってくれるのを待つだけでなく、言葉にして直接伝えてもいいのです。言い方は工夫するべきですが、言葉にしなければ伝わらないものもありますから。
まとめ~解決方法~
まとめます。
「俺と同じくらい稼いでから言え」の当該案件は、夫婦の成熟度が試される事案です。
収入は一人で得られるものでなく、それは夫婦の協力があって初めて得られるものであると知ること。そしてお互い目に見えない努力や苦労があると知ること。これを相互に理解し尊重し合えるようになるには、お互いが精神的に成熟するしかありません。
まずは世の中目に見えているものだけがすべてでないという当たり前のことを改めて肝に銘じてください。ストレス過多の状態ですと、意外とこういう当たり前の視点が抜け落ちてしまいます。
そして、愛するパートナーを労わりましょう。敬意を払い感謝しましょう。ここに尽きるのです。
愛があればきっと歩み寄れます。いつかきっと解決できます。
みなさんの幸せな夫婦生活を心からお祈りしています。
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