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【日記】パン屋の師匠がサルサを踊りそうで心配だった私が見つけた自分を大切にするということ。

今日、部屋の掃除をしていたら
押し入れのcafésweetsのバックナンバーの山に、少し違う雰囲気の一冊を見つけたので引っ張り出してみたのです。

こんな本持ってたっけ…

過去の己に聞きたくなるようなチョイスの本やらTシャツやら、1回作って満足したハンドメイド作品なんかも発掘することがある。

ただとても懐かしくて
ページをペラペラとめくってみる…

ん?これ私のじゃないな。

おそらく10年以上前に働いていたパン屋の社長から借りているものだ。
もう一度声を大にして言います
お借りしているものだーーー!

就職したそのパン屋さんは個人店だったので
私に仕事を教えてくれる人が社長になり
それから社長はわたしの師匠になった。
師匠から教わった事は
粉の特徴やそれに適したパンのこと。
四季の気温と湿度によって調節する水分量。
捏ねた生地の状態や発酵具合の見極め。
窯入れのタイミングや焼成のコツ…
パン職人として一人前になるためのセンスはこの人から頂いた。本はまだ借りてるけど。

この師匠が穏やかな雰囲気とどこかチャーミング、好奇心があっておもしろいおじさん(尊敬)だった。
もちろんそんな魅力的な人のお店は、修行をしたい若者がたくさん働きに来ていたし惜しみなく技術を教えていた。毎日お店は忙しく外には行列ができていた。師匠はだいたい眠そうな顔はしていたけど美味しいパンを焼きたい気持ちは誰よりも強かった。

当時のわたしはパン屋の力仕事で、くたくたに疲れていて、布団敷いてくれたら3秒で寝れたし寝る事ばかり考えていた。
いや半分くらい寝ていた。


ほぼ寝ながら仕事してたわたしがある時お店の閉店後に作業場の後片付けをしていると、師匠からジャズ聴くかい?と話かけられた。
私は掃除の手は止める事なく「ほぇ」と、はいともいいえともとれない言葉を返した。すると突然「よし!決まり早く掃除終わらせちゃおう」そう言って掃除を済ませ店を閉めると、そのまま私達をお店のワンボックスカーに乗せあっという間にブルーノート東京でジャズライブを聴かせてくれた事があった。
さっきまで粉まみれでボウルやばんじゅうをせっせと掃除していた人が2時間後にはプロサックス奏者とナイストゥーミーチューと握手をしているんだから眠気もぶっ飛んだ。

会社を辞めた後も元同僚と会えばよく師匠の話題になった。
「師匠がインスタを始めたらしいよ」と噂を聞き覗いてみれば大豆から味噌を作っているし。
美味いベーグルを作りたい!と思い立てば、ニューヨークに行って滞在期間、毎日ベーグルを食っていた。
そんなことだからこの本も、師匠がメキシコにハマり、サルサでも踊り始めるんじゃないかと心配し出していた頃の私に貸してくれたものだと思う。


色んな事を思い返しながらこのnoteを書ていたら
どんな時も好奇心を忘れず、
まずやってみようと穏やかに言う
人の笑顔が見たいならまず自分が楽しむこと、苦しい顔をして誰かを喜ばせるなんて難しいよね
そんな事を言う師匠の声が聞こえた気がした。

師匠から教わった事がパン職人として必要な技術だけじゃなかった事。人生を豊かな心で楽しむ感性を育ててくれた事に今さらながら気づかされ感謝をした。

心が喜ぶことをしよう
誰かを喜ばせる事ができる
笑顔になれるように。
自分を大切にすること。

この大事な気づきを心の隅にしまって
まずは本を返しに行こう。



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最後まで読んで頂き
ありがとうございます。

パンとあなたの素敵なお別れ発信中
ときどき日記の日記のほうです。


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