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【コラムvol.5】あごの位置と体幹の関係

※2018年掲載記事の改訂版です。

 
「あご」について歯科医院で馴染みのある言葉は、顎関節症だと思います。
特に「あご」においては痛みや違和感を持ったときに注目され、日常生活で特に目立った不具合(食べにくい、話しにくいなど)がなければそのまま過ごしている方も多いのではないでしょうか。

しかし、私たちが生活する上で必要不可欠な行動である食べる、話すなどの口腔機能において「あご」の存在は非常に重要です。

あごの位置はどのように、体に関係しているか?

咀嚼筋にかかわる筋肉(咀嚼筋群)と、全身の筋肉がどういう連携をとっているか、それを示してくれるおもしろい実験をご紹介します。

これは、口腔生理学者の船越雅也朝日大学元教授の実験を参考にしています。(中略) 周りに迷惑がかからないよう、プールなどで行います。仰向きで静かに浮いてみてください。そして波立っていない時に、図4のように軽く噛んだ状態で、思いきって、下あごを右にずらし、そのままの位置を保っていると、どうでしょう、あなたのからだは徐々に、少しずつ右に回転し始めます。 これは頭部を支えるといった抗重力筋の働きが必要ない状況でも、あごの移動による咀嚼筋群の偏った緊張が、頸や肩そして四肢の筋肉へと伝わり、全身の姿勢の肩りとなって回転運動が起こるためと考えられます。

「かむかむウォーキング」東京歯科大学教授 石上惠一アクティブかむかむウォーキング事務局 幻冬社(※著作権の関係上、図4は転載しておりません。)

あごをずらすことで、全身の動きに変化が現れました。

あごの位置が、全身の姿勢に影響することが明らかで、口腔機能の習慣となるものは、いくらでもからだに伝わり蓄積していきます。

偏って噛んでいる(大抵が無意識)と 頭の位置がずれたり、
首に影響を与えたり・・・
実は、知らず知らずのうちに悪い習慣を積み重ねてしまうのです。
 無自覚な人がほとんどなので、 大抵は、どこかの歯かあごに違和感や痛みとして症状が出て初めて自覚されます。

筋肉量によってもその自覚症状も様々です。
あごの位置や使い方は、全身の姿勢は当然のこと、お顔の状態・バランスにも反映されます。 咀嚼筋(噛む筋肉)や表情筋は、ほとんど同じ部分にあるため、偏った噛み方(あごの使い方)が顔の歪みや笑顔のアンバランスさの要因の一つになると言えます。


噛む時、飲み込む時、首や胸、背中の筋肉を総動員

ヒトは、 頭(成人であれば8~9kgあまりある)をからだの一番上に持っていき、節々でバランスをとりながら立つ、歩く、走る、座る、話す、食べるなど様々な動作をしています。

私たちは、重力を受けながらバランスを保ち、生活しているのです。
あごもその一つです。下から上に突き上げるように作用しています。 実際に、食べているときや飲み込んでいるときは、どのような筋肉が働いているのでしょうか。

エックス線動画で、食べているときや飲み込むときの様子を観察する研究方法があります。 これでよくわかるのは、このとき、咀嚼筋群ばかりが働いているのではなく、 実はその重い頭蓋骨を支えている頸や肩、あるいは胸、背中にある12種類もの筋肉を総動員して、食べ物を噛んでいることです。

『かむかむウォーキング』(東京歯科大学教授 石上惠一 アクティブかむかむウォーキング事務局、幻冬舎)

案外、首から上で行われている行動が体には関係ない・・・ と思ってしまいますが、改めて考えると 頭の先から足の先まで「一つであり、つながっている」ということです。


食べるときの姿勢が大切なこともわかります。

・食卓でテレビを見ながら・・・同じ方向に首が傾いた状態。
・スマホを見ながら・・・噛む意識がなくなる。同じく首が傾いた状態。

日常生活の中で、想像以上の負荷がかかっているので、 姿勢が悪いと腰や首に痛みが生じるのも要因の一つかと思います。
世代に合わせた基本的な筋肉量を備えるための運動量も必要になってきます。

無理なくライフスタイルを送るには、それぞれのバランスを保つ、調和することもポイントです。

こどもたちは、その姿勢を維持するための筋肉を育むためのびのびと多様な動きを経験することを願います。


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