大切な人が脳卒中になったら知って欲しいコト
こんにちは天照のSOMAです。
本日はいつもの豆知識的な内容とは少し変わって
脳卒中と後遺症、そしてそれを取り巻く周囲の誤解について書いていきたいと思います。
今回はevidenceではなく、長年脳卒中を専門に理学療法士として働いてきた経験を元に書くので私見が混じると思いますが、僕の人柄含めて感じ取って貰えれば幸いです。
はじめに
僕は理学療法士として吉尾雅春先生が副院長を務める千里リハビリテーション病院というリハビリ病院で働かせて頂き脳卒中リハビリの前線で活動をしていました。
その中で脳卒中になった患者様だけでなくご家族様、実際に治療を行うセラピストも含めて、まだまだ沢山の誤解や知るべき知識があると感じました。
脳卒中とリハビリ
脳卒中になれば、まず急性期の病院へ入院する事になります。点滴等の薬剤投与で対応する場合や状況によっては手術を行います。
また脳卒中とひとまとめにしていますが、脳梗塞、脳出血と分けられており症状も沢山あります、よく見られるケースでは麻痺や喋りにくさなどが初めの症状として現れる事が多いです。
急性期病院での治療後、日常生活を送るにはまだ力が足りない患者様がリハビリ(回復期)病院へ転院します。
その後本格的なリハビリが開始します。
リハビリテーションとは?
リハビリとは運動をして機能を回復することを指している訳ではありません。
この点に関する誤解がまず一点、かなり根深い問題となっています。
リハビリで目指すゴールとしては、障害を抱えてしまった患者様がもう一度社会復帰を果たす手助けを行う形となっています。
ですが、一般の方々のイメージでは立ち座りをしたり、歩いたりをして運動能力を回復すると言った所になっています。
もちろん、専門家として麻痺や感覚障害、言語障害といった、社会復帰を目指すために必要な能力の獲得を目指す事はありますが、それはあくまで中間目標であり、最終的には患者様の持ちうる能力を最大限活かし、社会復帰を果たしてもらう事となります。
治る?治らない?
これはよく聞かれる事ですが、治るか治らないのかといった捉え方では患者様も家族様も共に苦しくなってしまいます。
何より患者様が不安を多く抱えてしまい、リハビリに集中出来なくなってしまったり、夜間不眠になってしまっては元も子もありません。
脳の部位は細かく分けると50以上に分かれています、また左右で役割が違う事や、良くイメージされる大脳、以外にも様々なパーツがありその全てに役割があります。
表面上良く見られる、麻痺や感覚障害はあくまで機能の一面でしかなく、感情コントロール、認知機能、計画性、創造性など見えない分野にも障害は点在している可能性があります。
それは患者様自身も気づく事が出来ず、家族様でも理解する事は難しいと思います。
リハビリにやる気がない、家族へ辛く当たる、昔と比べて性格が変わってしまったなどは良く見られますが、それは脳の機能低下により引き起こされている可能性も多いです。
その時に関わる療法士や家族の反応によって良くも悪くも変化していく部分でもあります。
それら全てに治る?治らない?と言った問いに答えられる人は居らず、向き合うべきは症状でありより深く患者様の現状を理解する事です。
元々の性格が出てきたという誤解
前頭葉の機能は物事を考えて、計画を立案したり、感情のコントロールを行う部位になります。
近年の脳科学ブームのようなものもあり、前頭葉の機能については、ぼんやりと知ってる人も多いと思います。
ただこの感情のコントロールというのが誤解を招きやすく、例えば暴力的になった患者様がいるとこの人は元々我慢して居ただけで暴力的な人なんだ、昔からその気質はあったなど家族様が仰られる事があります。
しかしそれは全く持って間違っています。
そもそも人には衝動性(暴力性)が備わっています、それすらも一つの機能です。
何故こんな機能があるかと言いますと、産まれたてのまだ言語が扱えないような時期はこの衝動性を持って自身の意思を伝えます。
子供は思いを伝えるために、この爆発的なエネルギーを泣く、叩く、笑うなど様々な表現を通して大人へ伝えています。
そして、怒られたり、褒められたりする中で社会性を獲得し、感情をコントロールすることを覚えます。
なので、その抑制の部分が障害されてしまった患者様に必要なのはもう一度感情をコントロールする方法や、人との関わり方を知ってもらうことです。
これもリハビリであり、我々理学療法士に必要な知識、技術です。
それは時には病院のスタッフだけでなく、家族様の助けも借りて一つずつ解決していく事が必要になります。
一度失った機能は回復するのか?
解決や改善、回復と書くと次は本当に達成できるのか?といった問題にぶつかると思います。
それには脳の可塑性という現象があり、そこを中心に考えておく事が良いと思います。
脳は細胞が損傷してしまうと、残った他の神経細胞が新たな繋がりを生み出し、機能を補完しようとします、これを脳の可塑性と呼びます。
このように、一度は傷害されてしまった機能も何度も何度も使うこと回復する可能性があります。
そのため病院の療法士は地道な訓練を何度も反復し脳へ刺激を入力しています。
それでも限界はあります。
限りなく無限に近くリハビリを行えばいつかは回復するのか?という事がありますが、それは難しい事もあります。
広範囲に損傷が広がってしまっている、そもそも課題を行う事が難しいなど状況によっては回復が少ない人もいます。
その時は社会的資源つまり、介護保険サービスなどを利用し、患者様及び家族様が求める今後の家族の形を模索しながら、安全性の担保、その中でのコミニュケーションなど新たな目標を立て行動していきます。
より良い形の探索に終わりはない
僕が実際に出会ったエピソードを例としてご紹介させて頂きます。
7年前に脳卒中を患い歩行困難になり、その後寝たきり状態が続き別の小さな梗塞を起こして入院してこられた患者様がいました。
新たな症状は幸いに軽度でしたが、以前から患っていた脳梗塞の症状により立つ事も座る事も難しい状態でした。
しかし、脳画像を読み、様々な検査をしてみると確かに麻痺は残るだろうけど、立てないほど重症化するほどではないと言うのが最初の印象でした。
リハビリでは特別な技術を用いた訳ではなく、とてもシンプルな方法で何度も何度も細かな反復練習を行いました。
その患者様は現在甲子園に野球を見にいく事が出来るようになりました。
これは決して僕の技術力が高いからといった物でもなく、7年前の担当が悪かったという話ではありません。
そもそも、理学療法士が出来たのは約半世紀前です、パソコンで画像が読み込めるようになったのはもっと後です、更にそれが誰でも見れるようになったのはもっともっと後です。
以前は伝聞式のセミナーで情報を得るのが中心でスマホが登場した事で、論文が手元で読めるようになったのは、ほんの数年前の事です。
一昔前までは脳卒中といえばとりあえず今出来る運動を行う、回復の見込みは少ないという見解が大多数を占めていました。
ドクターも専門家でない限りは脳画像については概要のみの理解であり、指示も予後予想も脳卒中という大きな分野での統計から判断しているに過ぎませんでした。
そういった学問としての背景からも、まだ可能性が残る後遺症を持った方も多いと思います。
病院への再入院や一度終了となったリハビリの再会は社会構造的にも困難ですが、今はその事実を解決するべく、様々な自費リハビリテーションが普及しつつあります。
保険適応外という事で、怪しい、騙されるのではないか?などの声もまだまだ多いですが、それは新たな可能性を模索する療法士の期限や権限に縛られない働き方です。
我々が行うホームトレーナーも
専門的な知識を持って、より良い生活を送ることは出来ないか?
もっと身近に信頼できる療法士を頼ってもらえないかという考えから生まれました。
そのため、トレーニングだけでなく家族様への情報共有、保険内サービスの提案など少しでも明るく楽しく過ごせるプランをご提供しています。
保険内治療では果たせなかった踏み込んだサービスをこれからもどんどん実行していきたいと思っています。
改めて障害の捉え方を考える
最後になりますが、障害の捉え方について我々も含めて全ての人が改めて考える必要があります。
ただ単純に可哀想だ何とか良くならないか?
障害という漢字は良くないとかではなく、視点自体を変えていかなければなりません。
障害持ってしまった事実は変える事ができません、しかし生きるという事を諦めてはいけません。
病気になった、怪我をした事で生きる意味を見出す方も多く見てきました、何が出来れば幸せなのか、挑戦する事はまだできるのか改めて考える機会になったと思います。
僕達、療法士もそのことの重大さ、使命を忘れずに真摯に一人一人に向き合う事は忘れてはいけないと思っています。
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