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小説と詩を嗜んでみた。

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駄文ですが、お暇な時に。
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夜の船で帰ります。【春弦サビ小説】

夜の船で帰ります。【春弦サビ小説】

この島から出て遊びに行くのを許してくれた旦那。
犬みたいな優しい旦那。

だけど……なんだかそれだけで。
あたしは外の世界に触れたかった。
ネット、SNS、etc……。
それだけでは満足いかなくて。

あたしを……好きだと言ってくれる人が居たりして。
会いたくて飛び出してみた。

旦那は呑気に『たまにはいいじゃない』と笑顔で送ってくれた。

優しい。でもそれだけ。
それだけなの。

船に揺られて本

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炭酸刺繍。

炭酸刺繍。

グラスの中の液体から弾ける泡を見ていた

グラスの底から上がっては弾ける

何をするでもない

それを見ているだけ

あなたはそんなわたしを見ている

あなたの言葉を遠ざけるように

わたしは炭酸の弾ける音に耳を向けて

綺麗にできていると思っていた刺繍は

気付いたら歪んでいた

歪になったわたし達の刺繍は

もう要らないのね

弾ける泡の音しか聴こえない

あなたのさよならも

あなたの言い訳

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太陽が消えた街。

太陽が消えた街。

笑い方?
忘れた。
怒り方?
忘れた。
泣き方?
忘れたよ。

人って売れるんだって。
親父は泣きながら、得体の知れない男達にあたしを引き渡した。
泣いてた顔は途端に姿を変えて、得体の知れない男達のボスであろう人物の機嫌取りに媚びた笑いを繰り返す。

あたしはあの顔が世界で1番嫌いだ。

抵抗はしなかった。
親父と暮らしてても、最低な生き方
してたから。
特に変わりない生き方を、親父の
いない場所

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結。【詩】

結。【詩】

想いを結ぶ。

人を結ぶ。

言葉を結ぶ。

気持ちを結ぶ。

わたしの理想。

未だひとつたりとも
出来てないけれど。

結びたいものがたくさんあって。
不器用で結べなくて。

結び目が緩くて
結ぶのが下手くそで
解けてしまうことばかりだけれど。

それでも結びたいんだよね。

GしてI'veして。

GしてI'veして。

平和な世界を望みながら
刺激を求めて。
長生きを望みながら
身体に悪いものを好んで
摂取していく。

矛盾だらけの私達。

不安定に安定しながら
彷徨うフリ。

今日も何処かで禁断とか云う言葉に
燃えながら傷つけ合っていたり。

今日も何処かで禁忌とか云う言葉を
持ち出して思わせ振りな物言い。

明日もきっと何処かの誰かと比較して
上がったり下がったりの心電図。

明日もそっと何処かの暗い飲み屋で

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風なんて嫌いなのに。

風なんて嫌いなのに。

春と風。

これはセットでわたしの心を掻き乱すと同時に、飛んで来る花粉でわたしの眼も掻き乱す。

幾年月過ごしたあなたは、泣きながら。
それでも去り際に笑っていた。

知っている。
辛かった事を半分持って行ってあげる。
何度の春を過ごしただろうか。
今年はひとりの春が来る。

『生きろ』と告げて、頭を鷲掴みにしてクシャッとして別れたあの時の表情が瞼の奥に未だ在る。

もうじき桜が舞う。
わたしはそ

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先輩。

先輩。

いつもバカばっかやってる先輩が居た。
周囲を笑わせるのが得意な先輩。
花粉症が酷くて変なくしゃみが特徴的だ。
新人のわたしにいろいろ教えてくれた。笑いを混ぜながら。

「知ってるか?齋藤。これ」
綺麗な河津桜の写真。
「さくら、ですね」
「おれの地元、今年も綺麗に咲きそうなんだよ」
「地元、ここじゃないんですか?」
「伊豆の方」
毎年春に休み取って地元に帰ると笑顔で言う先輩。
「年に一度桜の時期に

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monochrome深淵系。

monochrome深淵系。

血が滴る。

僕は病気だ。

血を……啜らなければ……生きていけないのか。
生きる為に……殺めなくてはイケナイのか。

嗚呼、今日もまた。

何故。どうして。

本を読んで生きていきたかった。
図書館は僕の聖域。

本のインクの匂いは、フレグランス。

たくさんの人達が綴った言葉から生まれた物語を頭の中で映像化して、浸るのが僕の生き甲斐だ。

受付の貴女は優しく、美しい。
いつもありがとう。
僕の

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夢の限りに非ず。

夢の限りに非ず。

僕は電話が嫌いだ。
かけるのも、かけられるのも。
相手の時間を奪うし、自分の時間も奪われる。

高校生のタクミはスマートフォンを電話として使ったことがほとんど無い。
余程の緊急時を除いて。
今は必要な用事は多種多様なアプリで文字でやり取り出来る。
それで充分だった。

そんなある日。

『time distortion code』
そんなタイトルの迷惑メールが来た。
開かなきゃ良かったのだが、つい

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花を咲かそう。【豆島圭氏cover小説】

花を咲かそう。【豆島圭氏cover小説】

服の下は痣だらけ。
僕の身体に痛みがない日は無かった。

よくわからないが、顔に痣を作られた日は学校に行かせなかったな。

お腹も毎日空いていた。
夜に食べれるパンひとつがご馳走で。
クリームパンが好きだった。

お母さんは毎日車で出掛ける。
帰りには大量の買い物をする時と、何も持たないで帰ってくる日があって、
何も持たないで帰る日が多かった。
その日は僕に良く痣を与えた。
夜のパンが血の味がして

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布団から慕情を。

布団から慕情を。

布団から出られない休日が続く。
やらなきゃいけないことを後回しにしてしまうわたしはダメダメだ。

YouTubeからは音楽が流れている。

「あ」
聴いているようで聴いていなかった音楽に耳を傾けたら

聴こえてくる好きな歌。

『ねぇ、あなた知ってる?わたしの心はバラバラになっていくんだよ』
そんな事を言ってる英語詩だと思う。
今のわたしのように。

まだ残っているあなたの名残は
女々しく片隅に。

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麻美の途方もない1日。♯5

麻美の途方もない1日。♯5

車の横を通り抜けられるバイク。
最高だ。
麻美は目的地へ近付く喜びを感じていたのだが……。
時間が時間だ。
果たして彼が待っているのかどうかもわからない。
それでも行くしかなかった。

15:58

「この通り真っ直ぐ行けば駅だ!車輌入れないから、ここまでだけど」
「ありがとうございます!」
麻美は元気にお礼を行って走り出した。
「頑張れよー!」
バイクの人が手を振る。

商店街を抜けて、駅が見え

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麻美の途方もない1日。♯4

麻美の途方もない1日。♯4

警察の皆さんにやたらと褒められて揉みクシャの麻美。
時は13:35
「あ、あの。わたし、おデートがありまして……いろいろと……話せば長くなるんですが、携帯が充電切れで使えなくて彼に連絡できなくて困ってて、とにかく待ち合わせ場所の〇〇駅まで行きたいんですよぉぉ」
やっと自分の状況を周りに伝える事が出来た麻美。
「スマホはiPhone?」
「Androidです」
「充電器あるよ?使う?」
ーー神っ!!

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麻美の途方もない1日。♯3

麻美の途方もない1日。♯3

ーータクるか?いっその事!タクってやるか?まてまて、結構距離あるぞ?幾らかかるかわかりゃしない。乗って着いたとしても、おデート代が全て吹き飛んで無一文で遅刻してきた彼女なんてどうよ?足りなくて『お金貸して❤』なんてことになったら、あんた、そりゃ、一巻の終わりでしょうよ!

喧しく脳内で騒ぎ散らかす麻美を置いてバスが出る。

11:00

次のバスは11:15
その間にスマートフォンを充電したいとコ

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