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母のそばで♡最後まで挑戦!篇

緩和ケアの訪問診療の先生が聞いた。
「何かしたいことはありますか?」

95歳の母は目をキラッとさせて
「家に帰って玉ねぎを見たいです」と言う。
自分が植えた玉ねぎの成長を見たいのだ。

だから、ドライブの練習をした。
短距離、短時間から少しずつ距離と時間を延ばして。
私の車で、または妹の車で。
人生の最後に「したかったけどできなかった」ことがないように。

酸素ボンベの扱いにも慣れてきた。
調子も良いし、チャンスかな?


でもやっぱり不安


家に行ってみようか、1泊で。
母は「うん」とうなずく。

準備をしていざ朝になると
「今日は調子が良くない」と言う。
そうかな?顔色良いけど。

無理に行くことはないから、日にちを変えようね。
今日は行かない、と決める。

ごはんも食べるし、夕方のドライブに誘うと
「行く」と言う。
ふーーん。

こんなことが2度あった。

やっぱり、不安なのかな?
母の家まで1時間半。
1時間超えるドライブもけっこう大丈夫になったけど。

そうか、診療の先生から離れるのが不安なのかも。
いざという時、頼れないからね。


3度目の正直



すっごく顔色良いし、調子が良いね。
今度の金曜日に行ってみようか。

「うん」と母はうなずく。

当日の朝になって「やっぱり行かない」と言うかもしれないけど。
母の家に住む妹に連絡を入れる。
私も泊まるから迎える準備がいるだろうし。

さて、当日の朝。
いそいそと着替えている様子。
洗面もいつもより早めだ。
ごはんもちゃんと食べて。

「行ってきます」と私の夫に挨拶して動き出した。
おっ!良いぞ。

下の妹が迎えに来た。
彼女の車が大きくて、疲れにくいから。
万が一に備えて2人態勢が安心だし。

酸素ボンベに切り替えて車に乗り込み
楽しくお喋りしながら走る。
事前に連絡して、母の家にも酸素濃縮器を設置してもらった。
苦しいときのお薬もちゃんと持ったし、大丈夫!

お昼ご飯どうする?
レストランに寄ったら疲れるかな?
母は「天気も良いし、見晴らしのいいレストランに行きたい」と言う。
おおーーー♡良い感じだ。

上の妹にメールする。
「今度はホントに向かってます」。
妹からの返信。「ホントに(笑)!」

酸素ボンベキャリーを引いてレストランに入る。
この状態で車の外に出るのは初めてだ。
何事も「慣れ」が大事。

レストランから見える海は黄砂で少しかすんでいる。
でも、それさえ新鮮に感じた。

久しぶりに行ったのでメニューも新しくなっていて楽しい気分になる。
注文して、景色を眺めながら美味しく頂こう。
食欲も、ある。大丈夫!

母の家に着くと、仏壇の父に挨拶したら疲れて横になった。
安心したのだろうね。

妹は、母が寝ている間に庭の手入れをしている。
働き者だ。
運転もしていないのに私はなぜか疲れてゴロゴロ。

そのうち母も目が覚めてそうじを始めた。
良く働く親子だなあ!
下の妹が母の血を一番引いているようだ。

にぎやかな夜


さて、下の妹は帰り、上の妹の家族が帰ってきた。
母のひ孫たちは「おばあちゃん、お帰りなさい」とあいさつに来る。
「おばあちゃん」は私の妹だが、この際こまかいことは良いだろう。

夕食の後は広いリビングで運動会並みの遊びが始まった!
母は笑って手拍子をとっている。
調子はイイネ!!

お風呂のあとも、飽きずにひ孫たちは遊ぶ。
また汗かいてる。
私まで一緒に遊んで、疲れるけど楽しい時間。

子どもたちの就寝は9時。
おりこうに2階に帰って行った。

これが毎日だと大変だけど、久しぶりだから
母は楽しんでいる様子。

やっぱり心配な夜


夜は何かと心配だ。
これまで具合が悪くなったのは「夜」だから。
どうしてだろうか?
昼間は、普通に過ごしているのに。

私は母のベッドの近くに布団を敷いて寝る。
母は導眠剤を飲んでいるから寝つきは良い。
問題は夜中。トイレに起きたら、それから眠れない。
私の家では、母が目覚めて辛いとき
本を読んで聞かせる。

今夜はどうだろうか?
心配しながらも私はぐっすり眠ってしまった。
しかし、母が起きたら自分もすぐに起きる自信はある。

なのに気づいたら朝だった。
えっ?
もしかして起きなかったの?

母に確認したら、「起きなかった」と言う。
びっくりだ!!
やはり自分の家、自分のベッドだと安心感が違うのか?

自信がついた


心配だった夜が明けた。
大丈夫だった、苦しくなかった、眠れた。

このことで母に自信がついたようだ。
私も、「連れて帰るのは良いけど大丈夫だろうか?」
という不安が薄れた。

「今回は1泊で帰るけど、また来ようね。」と言うと
母は嬉しそうだ。

2日後の訪問診療で、母は先生に報告をした。
先生も目を輝かせて一緒に喜んでくれた。
「玉ねぎはどうでしたか?」と聞かれて
「大きくなっていました。
畑といっても地球につながっていない畑です」
なんて言っている。
車庫の上に若い父と母が作ったプランターのような畑。
「地球につながっていない」という表現がおもしろい、と
先生は笑っている。

「やってみたいことはどんどんしたほうが良い」。
先生にもずいぶん背中を押してもらった。
「後になればなるほど、しずらくなりますからね」
という言葉に勇気をもらって、動いてみたのだ。

なんだか、私たちも達成感に浸っている。

「やってみたいことはどんどんしたほうが良い」
これって、母だけでなく私たちにも言えるな!!

最後まで挑戦し続けよう!!


最後まで読んでいただきありがとうございました







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