ミネクラヴィーレ

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マガジン

  • メインストーリー

    ミネクラヴィーレというアンドロイドの物語 一番最初に読むべき本編です 不定期更新です

  • 一周年 ○○を譲渡した姿

最近の記事

ミネクラヴィーレ 「10話」

 翌朝、机に置いてあったのは買い出しのメモと硬貨だった。それもかなりの量があり、1人で持てるのかすら怪しいほどの量。 「果物に野菜にパン…文字が読めても、物がわかんなかったら意味ないじゃん…」  起こしても意味のなかった先生は今頃二度寝を満喫していることだろう。そっと諦めて、覚えている道のりで市場へ向かう。  賑わう人々を眺めながら、陳列している女性に声をかける。 「こ、こんにちは、えと、サラ…であってる?」 「こんにちはミネ!合ってるよ。おつかい?」 「うん、そう。

    • ミネクラヴィーレ 「9話」

       あれから数日後、街の地図と家の配置、家具の配置の指導が入り、ミネクラヴィーレは的確に支持を出した。 「その棚はこっちの部屋に。この箱は一番奥の部屋にお願いします」  雇われた3人の男たち。先生はといえば雇用契約の話をした後どこかへ行ってしまった。蒸気自動車に荷物を乗せては時計塔へ運んで行き、ミネは時計塔内で指示を出す。 「・・・これ、テープ貼ってないので持ってくるやつじゃないです。戻してください」 「あ、すんません」  先生に言われた通り、冷たく告げる。守るべき項目

      • ミネクラヴィーレ 「8話」

         時は昨夜に遡る。  深夜、日付が変わった頃、オルキスは自室にて机に向かっていた。万年筆を握ってはトントンとインクを紙に染み込ませる。  時計塔に居たヒューマノイド。容姿は男女どちらともとれない。子供と大人の間、青年期にも思える。記憶が無いらしいそれ。  SF小説でしか見たことのない精巧な作り。人間のようにも見えるが、瞳の奥から覗く人間とは思えぬ何か。内部から聞こえる軋んだ音が何よりの証拠だろう。 [一つ目]と書いた。  推測、「おはよう」が起動の条件  推測、燃料は人

        • ミネクラヴィーレ 「7話」

           蒸気の街で目覚めて6日目の朝。  昨日テューズに言われた、朝に起こして朝食を摂らせるようにしてほしい。という約束を実行していた。 「起きて〜〜!」  布団を剥いでも抵抗せず、ひたすら眠る彼女にただ呆れた。 「朝ごはんを食べたい」 「勝手に作って食え」 「・・・先生の作ったご飯が食べたい」 「その手は通じない」  何を言おうがだめらしい。 ーテューズに言われたけど、これは無理だぁ  諦めてトボトボ部屋を出ると、どさっと何かが落ちた音がした。閉じかけた扉から覗くと先

        ミネクラヴィーレ 「10話」

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        • メインストーリー
          11本
        • 一周年 ○○を譲渡した姿
          6本

        記事

          ミネクラヴィーレ 「6話」

           午後、それは1人で街を歩いていた。 先生曰く、「他者との交流は積極的に」ということだが、ただうるさいのを外に追いやっただけだ。彼女は静かな自宅で寝息を立てていることだろう。  それは、賑わう市場を遠目から眺めながら、先生と座った公園のベンチに腰掛けた。 公園では様々な人間が様々な行動をしている。掲示板を眺める人。噴水のほとりでボーっとしてる人。買ったものをベンチに並べている人。それらを見つめながら、一つ息を吐いた。 少々、整理が必要だったのだ。  先生と回っただけ。それも

          ミネクラヴィーレ 「6話」

          一周年 物語あとがき

          1周年、1年のお祝いありがとうございました。 記念ストーリーはいかがだったでしょうか? 記念品はどうだったでしょうか。 “ありえない未来の姿”そして素敵なイラスト。 LINEスタンプやグッズの販売。沢山考えて、準備を進めました。ここまで応援しててよかった、と思ってもらえるようなことを沢山考えてみました。 また、ストーリーについて語り切れなかったことを、ここでは綴ろうかなと思います。 STORY 前提として、これは存在しなかった未来 です ミネクラヴィーレが、己を拾い育て

          一周年 物語あとがき

          ○○を譲渡した姿⑤

          「これから、どうしていくんだ?」  始まりは、そんな些細な問いだった。  人と生活時間が違うこと。おそらく100年以上は身体が持つと予想された頃から、人間としての師・オルキス・ファルケは、ミネクラヴィーレの身を案じるようになった。 「これからって言ったって…どうにかするよ」 「どうにかってなんだ。それなりに考えていた方が良いと思うぞ。その髪と目じゃなぁ」 「うるさいな。俺だって考えてるよ」  いつも煙草の煙を吐きながら本を読んでいた。いつも、知識を蓄えていた。  そん

          ○○を譲渡した姿⑤

          ○○を譲渡した姿④

           3年の歳月でも、ミネは変わらずカフェに住み着いていて、珍しく、早朝の店内でミレーラに髪を梳かしてもらっていた。 「珍しいね、結んでほしいなんて」 「たまにはね。いいでしょ」 「そうだね」  街は変わった。人々はそれぞれの信仰の傍ら、ミネに助言を求めるようになった。いつしか、ファルケという名が、信仰を助長した。 「ファルケって、もしかしてあの?」 「ファルケという、美しい女性の哲学者が居たはずだ」  人々の記憶は、曖昧なまま語り継がれる。それは思想も人物も偉業だろう

          ○○を譲渡した姿④

          ○○を譲渡した姿③

           少女はオルゴールを母に届け、母は笑って泣いて、少女を抱きしめたらしい。  ミレーラからの報せで、ミネはその最後を知った。 「今度お礼に来るそうよ」 「いらないって…」 「お礼くらいは受け取りなさいよ。良い事をしたんだから」  彼女の言葉で仕方なく承諾したが、後日、訪れた女性は、それはもう豪華に着飾った姿で、そこらの平民とは思えぬ風貌だった。 「うちの娘が、とてもお世話になったそうで」 「ありがとう。ミネさん」 「い、いえいえ。結局あれも譲り受けたんだし…」 「そうい

          ○○を譲渡した姿③

          ○○を譲渡した姿②

          「つまり、貴方が"AI"という存在である為には、コンピューターという人が必要なのね?」  客の居なくなった静かな店内で、彼女とそれは話をした。 「大まかに言ってしまえばそう。俺が機能するためには、人間が必要で。でもその辺の人じゃなくて、知能や技術ある人じゃないといけない。ミレーラは博識みたいだし、ここの人達に慕われてる。だから頼りにしたい」 「難しいわ…私は博識と呼ばれる程でもないから…」 「慕われてるのは否定しないんだね」  思わぬ指摘に、ミレーラの顔が赤くなる。無

          ○○を譲渡した姿②

          ○○を譲渡した姿①

           栄えた都市にも、時代に取り残されたような物がある。それは物であっても建物であっても同様だ。  何十階にも重なったレンガ造りの建築と、細道の木造の小屋。紅茶の香りを漂わせるそのカフェには噂があった。 ――感情の解析機関があるらしい  おかしな噂だと一蹴する者もいる中、真偽を確かめんとする者も少なからず存在していた。  解析機関とは、蒸気機関によって駆動する計算機だ。歯車の組み合わせによって、法則性のある計算を執り行うことができる代物だ。つまり、感情の解析機関、とも言われ

          ○○を譲渡した姿①

          ミネクラヴィーレ 「5話」

           蒸気の街で目覚めて5日目。朝から目を覚ましたそれは、ベットから降りて部屋を見渡した。片した部屋は、荒れてはいないが埃っぽくて物が多かった。机にまとめた紙と本。本の表紙を指でなぞり、そっと椅子に座った。  知らないこと。知らない景色。知らない人。知らない空気。どれもが新鮮な出会いだった。つまるところ、己はこの街で目覚めはしたが、元々この街の者ではないのだろうな、ということだけ。もしくは、時代が違いすぎるのか。  椅子の上で足を畳んで、机に置かれた紙を眺めた。  手書きの字。

          ミネクラヴィーレ 「5話」

          ミネクラヴィーレ 「4話」

           ミネクラヴィーレというアンドロイドが、蒸気の街で目覚めて4日目。早朝から街の案内をしてもらい、昼食を家で済ませていた。 「あいふぁふ?」 「食いながら喋んな」  Ms.Flosに叱られながら、咥えたパンをしっかりと咀嚼し、飲み込んでから復唱した。 「挨拶って、誰に?」 「ここの人間」 「ここの…人間…」  首を傾げるそれに呆れ口を漏らす 「テューズだけが対象じゃないぞ。地域の交流は大事だ。街の外から人が来て住むとなれば、交流はしていかないと」 「なる、ほど?」 「

          ミネクラヴィーレ 「4話」

          ミネクラヴィーレ 「3話」

           日差しのない早朝。薄暗い街並を照らす街灯に梯子をかける老人に頭を下げながら、彼女は慣れた足取りで進んで行く。その後ろを駆け足でついて行くミネクラヴィーレ。 微かに照らされた明るい街と、街灯に何かをしている老人に気を取られてしまう。 「ミズ・フロース、あの人は何をしてるの?」 響き渡る声に戸惑いつつも、彼女に寄って尋ねる。視線を交わすこともなく、「職員」と告げるだけ。 「しょくいん…?」  それ以上は答えず、目的地である役所に着いたのだ。 「復唱」 「は、はい!はじめまし

          ミネクラヴィーレ 「3話」

          ミネクラヴィーレ 「2話」

           日が暮れてからも、掃除は進められた。Ms.flosは資料を読みながら指示を出す。朝になる頃には、それは疲れ果ててヘタレ混んでしまった。 「お前、疲れるんだな」 「疲れるよ~」  埃まみれになったまま、口を開けてだらける。「あ~~」と呻くそれに、近づいて口に手を突っ込んだ。驚き抵抗するも虚しく、彼女は乗りあがり、口の中をのぞき込む。 「どういう仕組みでしゃべってんだ」  抵抗しながらも何かをしゃべろうとしているが、腕が入っているから意味がない。必死に歯を突き立てるがびくともし

          ミネクラヴィーレ 「2話」

          ミネクラヴィーレ 「1話」

          出会いのお話  出会ったのは、雨が降り注いだばかりの、蒸気の晴れた日だった。 蒸気がだんだんと青空を覆い隠していく。そこにそびえ立つ時計塔。その最上階の物置部屋に、それは居た。 「これを、片せと?」  彼女はそれに布をかけ直し、仲介者である老人を睨んだ。 「そうは言っていない。掃除が行き届いていなくてもいいから部屋を購入したいと言ったのはそちらだろう。勝手にやってくれ」  老人は睨みに怯みながら、螺旋階段をいそいそと降りていく。彼女は詰まれた荷物に腰かけて、葉巻に火を

          ミネクラヴィーレ 「1話」