山本浩二

ひとひらの舞台

山本浩二

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次の選挙

「今度の選挙ってアンケート調査みたいだわ」 「どこか変わったんか」 「立候補者、政党のほかに支持者なし、支持政党なしを選べるのよ」 「選択肢が増えて投票率が上がるんだろうかな」 「だけど支持しないなんて無効票じゃないの」 「それに中には現状に満足してる奴だっているだろうに」 「満足してる人は棄権すれば良い、どんな結果も甘んじるってことだから」 「じゃあ無効票は不満票なんかな」 「無効票は選挙結果を左右しないけど、重大な民意だわね」 「政治に不満を持っているってか」 「有権

    • 不安と悔しさ

      「精神領域に異常事態が起こったわ」 「なんだその異常事態って」 「種族をなくさない為の女性体と男性体を引き付ける力が弱まったのよ」 「種族の引継ぎが困難になったってか」 「子供は種族の未来でしょう」 「種族を引き継げるのは確かに子供たちだな」 「その子供はどうして生まれてくるのよ」 「男女が惹かれ合った結果だな。その興味を持てなくなったのか」 「種族保存欲の力が弱まっているの」 「ただ見ているだけしかできないのか」 「今の科学力ではどうにもならないようよ」 「このまま滅び

      • 世の調和

        「住みにくい世の中だ、変な規則が多いし不公平だし」 「それはあなたが社会をあまり解ってないからだし楽したい人多いからよ」 「解ってないだって、何年この世界で生きてきたと思ってんだ」 「それじゃあただぼんやりとした生活を重ねてきただけなのね」 「どうしてこんなに変な規則があるんだろう」 「その規則を決めるのは誰だかご存知でしょう」 「選挙で選ばれた政治家先生たちだろう」 「変な規則の数は面倒だと権利を投げ出した人たちの割合でしょう」 「不公平感はどうしてなんだ」 「権利を使

        • ゴミ捨て効果

          「おいおいあの星のまわりゴミがたくさん捨てられてるぞ」 「宇宙のオアシスならぬゴミ捨て場ね」 「丁度いい、これで船が身軽になるな」 「軽快に宇宙旅行ができるわ、ラランがラン」 「どうなっているんだ一気にゴミが増えたぞ」 「これじゃあ人工衛星を安心して打ち上げられないわ」 「放射性物質も衛星軌道上にあるようだな」 「そんなのが地上に降ってきたらどうなるの」 「時どき空で閃光が起こっているわね」 「宇宙ゴミ同士がぶつかって爆発してるようだ」 「これでは宇宙研究開発ができないわ

          問われる生き様

          「ふむふむなるほどなあ」 「どうでしょうか天国か極楽へ行けるでしょうか」 「ううむ、九十九年も生きていたのにたいした事してこなかったなあ」 「辛い事や苦しい事が多かったんですけど、良くも悪くもの人生です」 「この成績じゃあなあ、地獄に落とすのは気の毒だな」 「ではでは?」 「かといって天国や極楽へは送れんよ」 「ええっ、じゃあどうなるのですか」 「あんた一人に迷っている時間ないかんな、よし決めた」 「いったいどこになったのですか?」 「再試験つまりやり直しだ、もう一度頑張

          問われる生き様

          ルーク計画

          「星の欠片のような小惑星を帯で巻くように包むんだ」 「その帯が居住区になるのね」 「そして自転させると遠心力で重力ができる」 「宇宙ステーションルークの完成ってことかな」 「居住区外にエンジンを付けてルークは宇宙船にもなったよ」 「地球めざして宇宙旅行の始まりはじまりだわ」 「居住区にあまり人がいないのがちょっと寂しい」 「最初の住人は工事関係者だけだものね」 「優雅に旅を楽しむことはできない」 「星のかけらを加工するのね」 「宇宙船の発着場や実験室を造る仕事があるんだ」

          ルーク計画

          役立つ訓練

          「いよいよ避難訓練ね、今回はどのような障害でしょう」 「毎回突っ込みどころ一杯で楽しみだ、催し物みたいだものな」 「でも油断したら大変よ、被災者になってしまうもの」 「何回避難訓練に参加してると思っているんだ」 「地割れですって」 「地震なんかなかったし、そう書いてある板が置いてあるだけじゃないか」 「何度も避難訓練に参加したはずでしょう、それとも嘘だったのかな」 「言ってみただけじゃないか、楽しみのひとつだよ」 「ようやく避難所だわ、あまり人が集まっていないわね」 「今

          役立つ訓練

          開拓者の壁

          「やっと精神領域を可視化できたわ」 「なんだい白黒の星空みたいな写真だな」 「見えないものを見えるようにしたのよ、もっと敬意を払ってよ」 「確かに画期的だな、おめでとう」 「うーん、うーん」 「なにをそんなにうなっているんだい」 「この画像どうなっているのか分からないのよ」 「精神領域なんだろう、人の気持ちは分からないってことじゃないか」 「可視化できてもねえ、なにを見ているのか分からなくっちゃ」 「落ち込むことないよ、画期的な最初のものは理解しにくいものだ」 「あらこの

          開拓者の壁

          問われる継続力

          「よく我慢したわ、褒美に魔法を使える力を授けましょう」 「どのような魔法なのですか」 「あなたが思いつく限りの、ただし同じ魔法は二度とは使えない」 「ていうと一度だけなら何種類もの魔法が使えるのですね」 「どのように魔法を使うかはあなたの自由です」 「ワクワクするなあ、悪いことに使ってもよろしいのですか」 「暴君になるか迫害されるかはたまた英雄視されるかは使い方しだいよ」 「へえ~なんて幸運なんだ、楽しみだなあ」 「その魔法は以前つかったでしょう、二度は使えないわ」 「だ

          問われる継続力

          空間不変の法則

          「お隣の地下都市が拡張工事を始めたそうよ」 「拡張工事だと、掘った土はどうしてんだ、捨てるとこあんのか」 「そんなの知らないわよ、わたしに訊かないで」 「それさえ分かればここも広げられて住みやすくなんのになあ」 「まさか地下に穴を掘ってそこへ捨てているのかしら」 「穴掘ってでた土はどうすんだ、捨てるとこねえじゃねえか」 「想像つかないわね、なんとかその方法が判るといいんだけど」 「限りある地下空間だからな、掘った土の捨て場所なんかあるんかよ」 「とんでもないこと思いついち

          空間不変の法則

          時 の 川

          「そろそろ宇宙空間の光景から森林に変えていいかしら」 「あっ、ごめん。いつまでもぼ~っとしててごめん」 「よっぽど宇宙がお好きなのね」 「なんかとっても落ち着くんだよ、故郷を遠くから眺めている気分なんだ」 「あの星たちの奥に地球があるのね」 「どんな星だったんだろうか」 「想い悩み、そしてわずかに安らげる星だったのかしら」 「それじゃあまるで人生のようだ」 「星たちの配置が変わったわ、ワープでもしたってことなのかしら」 「いつまでも同じ空間を飛んでいないってことなんだろう

          時 の 川

          好きと嫌い

          「世の中は似たような事象が多いのね」 「たとえば何となにが似ているんだ」 「原子と恒星系、分子と銀河系よ」 「大きくでたもんだな」 「お金と人口分布も似ているわね」 「なるほどお金は資産家に、人は都会に集まりやすいな」 「それと縄張り争いと戦争よ」 「それなら野生動物のボス決めと権力者の争いもだ」 「どうしてこうも似ていることが多いのかしら」 「人が理解できないことは認知していなからじゃないんか」 「受け入れたいものだけ認識しているのかな」 「世界は認知できないもので溢れ

          好きと嫌い

          付随する危険

          「ふと思ったのだけど時を止めて世界を観察したらどうなるかなって」 「どうなるんだ?」 「宇宙の性質って重なり合っているような気がするの」 「重なり合うだと、別の次元にか」 「最も理解しやすいのは認知しやすい物質の世界ね」 「それ以外になにがあるんだよ」 「あなたには心がないのかな、もちろん精神の世界だわ」 「肉体に心宿るか、人間みたいだな」 「精神世界の力学を探求すれば心の働きが判りやすいと思うの」 「心理的外傷やその動き方が判明しやすくなるってか」 「ただひとつ研究開発

          付随する危険

          積み重ねる人生

          「なに苦虫かかみ潰したような顔しているの」 「いい年になってしまったのに気持ちは未熟なままだとなと思ってな」 「気持ちだけはいつまでも若い人多いわね」 「これまでの人生なにしていたのか疑いたくなるんだ」 「輪廻転生が必要な理由かしらね」 「なんでだ?」 「肉体の進む時間と精神の成長する速度が異なるから年相応にならないの」 「それでいくつもの肉体を経なければならないってか」 「見習いたくなるような生きざまの人っているでしょう」 「ああ惚れぼれするよ、人間として立派だと思える

          積み重ねる人生

          嘘 百 回

          「見劣りのする集落ね、どうしたのかしら」 「むかし盗賊だったらしい、それで近くの人たちに疎まれているんだとよ」 「でも以前の事でしょう、いまの住人に関係あるのかな」 「先祖が被害にあってたら好意的な付き合いはしたくないだろう」 「あのみすぼらしい集落の人たちは現状に甘んじているのかしら」 「先祖が盗賊だなんて濡れ衣だって言っているんだ」 「でも周りの住民たちが盗賊だったって言い張っているのでしょう」 「彼らはあやふやな言い伝えで確かな証拠はないって言っているよ」 「両者の

          嘘 百 回

          慣れきった怠惰

          「ねえ知っているかしら、ほかの居住区りっぱに成ったわよ」 「へえそうなんだ」 「どこか私たちの住まいより便利になっていそうだわ」 「僕らの居住区だってかなり快適だけどな」 「そのうち私たちの居住区より他の居住区のほうが暮らしやすくなるわよ」 「そんなのどうでもいいや、他者は他者で僕らは僕らじゃないか」 「もっと楽しい生活をしたくないのかしら」 「欲張ってどうする、いまでも十分すごし易いだろう」 「あなたも一度この居住区から外へでてほかを見てくるといいわ」 「なんでそんな事

          慣れきった怠惰