見出し画像

モチベーションとエンゲージメントを向上させる3つのチェックポイントを自己決定理論から学ぶ

Gallup社による「State of the Global Workplace: 2021 Report」において、日本の従業員においてエンゲージしている(貢献の意思が強い)と回答した人の比率は5%と世界平均の20%と比べてもとても低い数値になっています。このため、グローバルスタンダードに追いつくためには、職場におけるモチベーションやエンゲージメントの向上が求められる。しかし、そもそも、モチベーションをはじめとしたエンゲージメントを向上させるためには、何が必要なのでしょうか?そこで、人のモチベーションの向上に必要な要素を示した自己決定理論(Self-determination theory)の紹介をしたいと思います。

自己決定理論とは?

自己決定理論(Self-determination theory)は、心理学者である、エドワード・デチ氏(Edward Deci)とリチャード・ライアン氏(Richard Ryan)によって1985年に書かれた「Self-Determination and Intrinsic Motivation in Human Behavior」に初めて紹介されます。そして、2000年代に入ると、この理論が実世界で活用できるのか等の研究が活発になり、この理論が広まりました。

この自己決定理論では、人がモチベーションを向上させるためには、3つの要素が必要であり、それらは、「自律性(Autonomy)」、「能力(Competence)」、「関連性(Relatedness)」であるとしてます。

自律性(Autonomy)

自律性とは、実行者が実行者の意思で決定できる幅があることです。逆に言うと、言われたこと以外をしてはいけないとなると、モチベーションが低下するということです。いわゆるマイクロマネージメントも自律の妨げになるため、モチベーション低下の要因になると言えます。モチベーションを向上させるためには、行うことに対し、実行者が実行者の意思で決定できる部分が必要であるということになります。なお、これは心理的な部分であるので、必ずしも重大な決定権を保有している必要はありません。例えば創意工夫をすることが許されている等、実行者が自律的に決定できることを自身で感じていることが重要になります。逆に、いくら決定権限があったとしても、それを認識していなければ、自律性を感じていないことになるので、結果的にモチベーション低下に繋がります。よって、気持ちとして、自律性を感じているかどうかが重要になると考えられます。

能力(Competence)

能力とは、実行者が実行するべき内容に対して能力を持っていると認識することになります。つまり、実行する内容を遂行できる自信を持っているということです。また、この能力の項目は、実行した際に、達成感を感じられる、または、能力が向上していることを実感できるというような内容も含まれます。さらに、既に能力があり、それを発揮することにより、組織にとってより貢献できることが分かっている場合、その人は、その能力を使って貢献することにモチベーションを感じるということも含みます。なお、実行した内容に対して、好意的なフィードバックを受けることで、モチベーションが向上することも、この能力の項目に含まれます。

関連性(Relatedness)

関連性とは、実行する内容が、全体の貢献に繋がるのか、もしくは、チームのメンバーを助けることに繋がるか等、実施するタスクがチームや部門の利益とリンクしていることを認識することになります。チームの一員であると感じることもこの関連性に含まれるため、心理的安全性もこの関連性の一部と言えます。最近では、インクルージョンという言葉が注目されていますが、このように、チームに認めて迎え入れるという行為は、モチベーションやエンゲージメントを高める上で重要なことであると言えます。

モチベーションとエンゲージメントを向上させるための3つのチェックポイント

例えば、上司が部下に対して、業務を割り振る際、または、部下に対する目標を考える際に、この自己決定理論を活用することで、モチベーションやエンゲージメントが高まる要素が含まれているかどうかをチェックすることができます。それらの3つのチェックポイントは、以下のようになると思います。

  • (自律性)実行する業務内容は、細かく指示されすぎていないか?部下が創意工夫をする、もしくは、実行方法を決められる余地はちゃんとあるか?

  • (能力)業務内容は遂行できる内容か?実行することによって、向上するスキル等はあるか?遂行において役に立つスキルを既にもっているか?

  • (関連性)実行する内容は、チームの目標に関連しているか?周りのメンバーは協力的であるか?

上記は質問の一例でしかありませんので、必ずしもこの通り、確認するということではありません。また、メンバーのステージによってもこれらのチェックポイントの重要度は変わってきます。新入社員の場合は、自律性に対する欲求よりも能力の欠如による不安の方が大きいと思いますので、能力の部分にフォーカスして、できるという自信付けにフォーカスをした方が良いかもしれません。逆に、勤続年数が長く、業務に慣れているような社員の場合は、色々指示するよりは、自律的に自由に動けるようにした方がモチベーションが上がるかもしれません。

大切なのは、モチベーションやエンゲージメントを向上させたいと考えた場合、社員の現業務における自律性、能力、関連性に関して、一度チェックを行い、少なくともモチベーションを低下させるような内容を排除することだと思います。なお、これは、タスクの割り振り時だけでなく、日常のコミュニケーションにおいても、これらのポイントを意識して会話を行い、メンバーのモチベーションやエンゲージメントを維持することを意識することが大事だと思います。



現在、GROWモデルといったコーチングおよび内省や経験学習のフレームワークを活用した、目標およびアクションマネージメントシステムを開発しております。製品に関するご意見を募集しておりますので、何かございましたら、以下よりお気軽にご意見お寄せください。

この記事が参加している募集

#とは

57,875件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?