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最高のパフォーマンスを発揮する方程式

最高のパフォーマンスを発揮するために必要なのは、日々の健康的な生活である。という意味で、前回は食事の大切さについてご紹介しました。そこで今回はパフォーマンスシリーズ第二弾! 心を整えることで自身の能力を最大限に発揮する方法についてです。
テニスを通して競技だけでなく社会で活躍するためのメンタルサポートをされているメンタルコーチの内田公人氏の著書『トップアスリートたちから学ぶ心を整える方程式 最高のパフォーマンスを発揮するメンタルトレーニング』からご紹介します。

パフォーマンスを左右する要素を見極める

目標を達成するために必要な行動って、あなたは何だと思いますか。「祈る?」と考えてしまったあなた、年末なので、クリスマスや宝くじで頭がいっぱいなのでしょう。とりあえず仕事や勉強、スポーツなどを前提にしつつ、まずは「どうやったらその目標にたどり着けるのかを考えること」がセオリーだと思うのですが、内田氏は、目標を掲げてそこに到達できるよう結果を出すためには、「結果にふさわしいパフォーマンスを発揮しなければなりません」と、身もふたもないことをおっしゃいます。
そのパフォーマンスをどうやって発揮するかが求められているわけですが、氏はその解へと導く中で、パフォーマンスには方程式があると明言します。

その方程式とは、

「パフォーマンス=行動の内容×心の状態×自分のリソース」

だというのです。その意図を次のように説明されています。

「自分のリソースとは、過去に培ってきた自分のスキル、体力、考え方などです。自分のリソースは今どうにかできるものではありません。今あるいはこれから変えることができるのは「行動の内容×心の状態」の部分です。
つまり、これからやろうとしていることのパフォーマンスを左右する要素は「行動の内容×心の状態」です。何(行動の内容)をどんな心(心の状態)でやるかで、そのときのパフォーマンスが決まるのです」

つまり、「パフォーマンスの質は行動の内容と心の状態で決まる」ということ。行動の内容とは目標に直結するミッションなので目標ごとにそれぞれですが、ここではもう一つの、誰にとっても等しく考慮すべき「心の状態を良くするための方法」について考えていきます。

心の状態を「フロー」にする

心の状態を良くするために必要なもの、それを内田氏はプロテニスプレイヤーの最高峰、ラファエル・ナダルの自伝から引き出します。孫引きしましょう。

「試合開始45分前になると予定通り冷たいシャワーを浴びた。凍えるほど冷たい水。(中略)試合前の最終段階に行なう儀式だ。冷たいシャワーを浴びながら、パワーと粘り強さが高まってくるのを感じ、別の自分が現れる。スポーツ心理学者が『フロー』と呼ぶ、精神的に高揚した状態に入る。水を得た魚のように本能的に体が動く、非常に集中した状態だ」
                   『ラファエル・ナダル自伝』より


この「フロー」こそが、良い心の状態なのだというのです。私たちがよく耳にする言葉、「ゾーン」もスポーツ科学の世界で用いられている言葉ですが、明確な区別ないそうです。ただどちらかというとゾーンはフローよりも究極的な心理状態で、一流選手でも現役中に3~4回体験するかどうかというものなので、自分から入ることが難しいゾーンという言葉よりも、フローを用いていると氏は語ります。

集中力が高まる状態=「フロー状態」

それではフロー状態についてもう少し具体的にイメージしてみましょう。このフロー状態に入ることで、集中力が高まり、自分本来の能力を発揮する、過去の実績を超えていくことが可能になります。しかも、身を削るような精神状態ではなく、心に余裕が生まれる状態に至るものなので、人間関係もうまくいき、あらゆるパフォーマンスが上がることで、目標に到達することができる原動力になるというのです。

私たちとナダルでは比較にならないよ…と思うなかれ。実はこんな身近な状態をフローと呼ぶなら、「そういうことよくある!」と思うはず。

●スポーツの試合で不思議なほど集中力が高まり、最高のプレーができた
●子どもの頃に家でゲームをしていて、気づいたら夜になっていた
●プレゼンが上手くいったときに思い返せば緊張感が心地良かった
●文化祭の前にみんなでわいわい準備していたら、いつの間にか下校時刻だった

いかがですか? 日常生活のちょっとしたシチュエーションの中で、実は無意識的に実践していたものが多々ありそうですが、その状態を言い表したのが「フロー」です。

さらに内田氏は、「フロー」がベストパフォーマンスを発揮できる非常に良い状態を指すならば、それ以外の平常時、あるいは沈んだ状態を「ノンフロー」と呼んで、人の心理状態はこのいずれかに振れているということを説明しています。

このフロー状態とノンフロー状態を意識的に使い分けることができれば、自身のポテンシャルを最大限に引き出すことができそうですね。そのために内田氏はまず、簡単なワークを提案しています。

ワーク1:
あなたはフローでいると、どんな良いことがありますか?
10個書き出してみましょう

目標を達成するために必要な行動が、具体的になってきたと思いませんか。

「行動のルーティン」と「思考のルーティン」

やるべきことが明確になったら次はどうするか。心が良い状態、つまりフローでパフォーマンスが行えるよう、その状態を作り出すことが必要になってきますね。その際に最も有効な方法として、ルーティンをうまく使いこなすことを内田氏は提唱しています。
昨年現役を引退したイチロー選手がバッターボックスに入って最初に行う動作は有名でしたが、あのようにバットを立てたからヒットを打てるという科学的根拠は当然どこにもありません。しかしイチローは、そのルーティンを準備の時間と言っています。自分の動作に意識を向けることで、集中力を高めたり気持ちを切り替えたり、自分のリズムを作ることができ、心をフロー状態に導いていくのです。


さらに、ルーティンは特定の行動である必要はなく、心を整える思考のルーティンもあるといいます。となると俄然マインドフルネスの重要性を思うのですが、いわゆる瞑想によって心を整えるというだけではなく、実は多様な心の持ちようを意識することでフローに導くテクニックなのだといいます。

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フローを生み出す「外部ツール」と「自分ツール」

もうひとつ、別の視点からフロー状態への入り方を考えてみます。例えば、「あなたは日常生活でフローになりたいときに、何をして気持ちを切り替えますか」と尋ねられた際に、どのような状況、やり方、ツールを用いるかについてイメージしてみましょう。
例えば、「お風呂に入る」、「音楽を聴く」、「料理を作る」、「タバコを吸う」、あるいは「庭園を見る」なども良さそうですね。これらの選択は、いずれも外部ツールを用いた心の切り替え方といえるでしょう。さらに気持ちを切り替える方法はいくつもあって構わないと内田氏は言います。「日常生活の中で気分を切り替える方法をできるだけたくさん持っていれば、いろいろな状況の中でも心を整えることができます」


一方で、このように場所は道具、お金を費やさないで気持ちを切り替え、フローに近づけるのが「自分ツール」です。これは、自分自身の表情、態度、言葉、思考の4つを前提としています。表情や態度が心の状態に影響し、言葉や思考次第で人の心の状態は変化することが脳科学的に明らかになっていますが、これを意識的に行うことで自らをフロー状態に導いていくわけです。

なんだか一気にレベルの高いセッションが必要になってきた気もするのですが、どのような選択も自分次第ではあるわけで、とにかく自分の引き出しに何があるかを確認し、意識的になることが必要そうです。
そこで2つ目のワークはいかがでしょう。

ワーク2:
あなたの身の回りに、気持ちを切り替える『外部ツール』はどんなものがありますか?
できるだけたくさん挙げてください。

さぁ、ワークもやりつつ自身の志向や思考を整理することで、フロー状態に近づきやすくなってきたように思いませんか。
内田氏の著書『トップアスリートたちから学ぶ心を整える方程式 最高のパフォーマンスを発揮するメンタルトレーニング』では、「心に良い影響を与える行動習慣」などあらゆるシーンで役立つトレーニングメソッドがより詳細に紹介されています。気になった方はぜひご一読ください。


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