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『もうコミュニケーションで悩まない! 断り方の極意 「NO」と言える技術と「ことわり」の作法』第1章前半・無料全文公開

11月8日発売の書籍『もうコミュニケーションで悩まない! 断り方の極意 「NO」と言える技術と「ことわり」の作法』から、第1章「なぜ『YES』と言ってしまうのか」の前半を全文公開!

1.「はい」をOKと取られてしまう

 あなたは、どういうときに「はい」と言っていますか?

たとえば、肩書が上の人から指示されたとき、反射的に応えていませんか。本音はやりたくないし、明らかに無理難題。なのに相づちを打つように、「はい」と答えてしまう。あとになって「しまった……」と思っても、もう遅い。

いったん「YES」と意思表示してしまうと、同意したことになり、元には戻れません。

なぜ、不本意なのに同意した言い方になってしまうのか、考えたことはありますか? それは、「なるべく波風を立てたくない」「不利になりたくない」からではないでしょうか。

あからさまに反対の意を唱えると、相手を怒らせ、事を荒立てかねない。だから、あいまいな態度で済ましてしまうのです。

これは日本というお国柄も影響しているといえます。農耕民族で島国の日本は、「まわりに合わせることを良し」とします。皆がやっているから自分も、という発想です。

あからさまに異を唱え、場を乱すことはよくないと思っているのですね。「空気を読め!」と怒る人もいれば、「出る杭は打たれる」ということわざもありますが、 まさにこれがそうです。

一方、諸外国は、狩猟民族でまわりを他国に囲まれ、いつ攻められるかを気にかけます。多民族国家も多く、人との違いを表明しないと目立たず埋もれてしまう。いってみれば、「YES」「NO」を発言しやすい土壌がもとからあるといえます。

日本では、学校でも会社でも、黙っている人は多いですよね。発言すると目立ちますし、余計なことを言って波風を立てたくない。自分に関係なければ、心の中で「違う」と想っても黙っておく。処世術としては、これもありでしょう。

しかし、これが取引で重要な判断を下すとか、立場が危うくなる場面だったらどうでしょう。取り返しのつかない事態に発展することもあるのではないでしょうか。

このように、なんの意思表示もしなければ、

●危険な兆候をスルーし、大きな事件に発展する。
●業績が危うくなり、多額の赤字を計上する。
●知らないうちに、不正に手を染めている。
●疑問を挟まずにいたところ、不祥事が明るみに出る。
●不利な条件を飲んでしまい、大きな損害を被ってしまう。
●イヤなのに断らないでいると、パワハラ・セクハラに発展する。
●SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の発言がもとで、見知らぬ相手に攻撃される。

……など企業の不祥事から男女間のトラブルまで、おかしいと感じていながら放置していると、大きな問題に発展することがあります。

では、自分個人の問題として考えた場合はどうなるでしょう。

■最後は自分に返ってくる

違和感やイヤな感じがするというのは、「組織や仕事になじめない」「ちょっと意見が合わない」程度です。そう深刻にとらえるまでもなく、ダメージもありません。

しかし、違和感をスルーしていると、次第に事が大きくなっていきます。最後には、自分に降りかかってくることも。たとえば、次のようなケースです。

●面倒くさいと思いつつ、SNSのメッセージに一つひとつ返信。付き合いがよく、仕事にプライベートに、むやみやたらと予定を入れる。夜は遅くまで飲み歩き、土日は家族サービスとフルスロットルで走り続け、体を壊して入院。

●お客の要望にとことん合わせる。見えないストレスが溜まっている。

●待遇・条件で会社を選んだものの、職場の雰囲気になじめない。そのまま我慢して仕事を続ける。けっきょく体を壊し、辞めることになる。

●ミスを隠していたところ、取り返しのつかない事態に発展。自分だけ処罰を受ける。

●価値観や生活スタイルを考慮せず、好きな気持ちを優先して結婚。数年後、けっきょく離婚する。

このように、自分の気持ちにフタをし、体が発している声を無視すると、自分自身に返ってきます。人に迎合してばかりで自分を優先しない。いってみれば、それは自分の船ではなく、他人の船で漂流するようなもの。

気づいたときには事が大きくなってしまい、「こんなことになるなら、早めに断っておけばよかった……」と後悔するのです。

悪くなるときは、どこかで兆候があるものです。それではなぜ、こうした事態に陥るまで気づかず走り続けてしまうのでしょうか。具体的な事例をもとに、一緒に考えていきましょう。

■反発心を口にしてメダル獲得。田中さんの事例

田中さん(仮名・20代女性)はアスリートの選手です。恵まれた体格をもち、オリンピックでメダル獲得が有望視されていました。

ただ、彼女には「本番に弱い」というウィークポイントがありました。練習ではすこぶる順調なのに、試合ではここぞという場面でミスをし、力を発揮できません。監督はさまざまな改善策をアドバイスし、本人も指示に従って努力するのですが、なぜか試合では不本意な結果に終わってしまう。

ついには監督も本人も困り果て、妻と私のところに相談にお見えになりました。深く探っていくうちに、思わぬところに原因が潜んでいるとわかったのです。

■母との思い出がブレーキとなっていた

ヒアリングを重ねていくうちにわかったことは、チームメイトの近藤さん(仮名)に対するライバル心がある、ということでした。

指示に素直に従う近藤さんは、監督から何かと目をかけてもらえる。一方、自分は注意されてばかり。時に監督と近藤さんのふたりから言われることも……。さすがにこれでは田中さんも内心おもしろくありません。

でも、そんなことは口には出せません。「私のために言ってくれている。期待に応えなければ」と自分に言い聞かせました。

ところが、そう思えば思うほど、「うまくやらなきゃ」とプレッシャーが覆いかぶさってきます。身体は敏感に反応し、自分の意志と違う方向に力が入るようになりました。

彼女は幼いころ、厳しい母親のもとで、できる妹と比較されながら育ちました。いくら頑張っても妹に勝てず、母から褒めてもらえません。そのため、いつもどこかふてくされていました。まさに監督(=母)とチームメイトの近藤さん(=妹)との関係そのものです。

母に甘えられなかった思い出が監督への想いとつながり、「目をかけてもらいたい」という欲求が強く出てミスを呼んでいたのです。

言葉では「はい」「わかりました」と言い、自分を納得させる。しかし、心の底では反発。外に出している自分と、内に隠す自分とのギャップが大きくなります。厳しく指導されるうち、どうしていいかわからなくなり、自信を失いかけていました。

深層心理には、「監督(=母が重なる)に目をかけてほしい」といった願望が隠れていたのですね。

指導には従っているし、まわりにもそう映っている。それなのに最高のパフォーマンスを出せない。そういうときは別の原因が隠れていることがあります。

■満たされない想いを外に出した瞬間

満たされることのなかった母への想いが反発心となり、ミスが生じていました。そこで田中さんに、「苛立つ気持ちを思い切り表現してください」と伝えました。すると、「自分だってちゃんとやっているんです!」と強く言い放ったのです。

隠れていた気持ちが外に出てきました。それは、わかってくれなかった母への想い。いちばん言いたかったことだったのです。

思いの丈を言い放つと、くすぶっていた心が晴れていきました。練習にも身が入り、びっしりと汗をかくようになります。海外遠征では連戦連勝。オリンピックへの切符を手に入れます。そしてオリンピック種目に参加以来、初のメダルを日本にもたらしたのです。

このように、ちょっとした引っかかりを我慢し、スルーしていると、不満や違和感が無視できないほど大きくなっていきます。そういうときは目を逸らさず、心をオープンにしていく。そうすることで、大きく飛躍していけるのです。

もしあなたが頑張っているわりに報われていないと感じるなら、言っていないことが何かないか、チェックしてください。もしかすると本心をごまかしているかもしれません。

その場合は一度立ち止まり、利害関係がなく信頼できる人、あなたのことをわかってくれる人などに聞いてもらうようにしてください。そうすれば、思いの丈を言って気持ちが晴れ、脱け出せていきます(そういう人がいない場合は、紙に書き出してください)。

田中さんにやってもらった一連のプロセスは、「ひろ&れいこ流 クリアリング」と呼ばれるオリジナル・メソッド。体調を整えることから願いを叶えることまで、幅広く使えるものです。

妻のマダムれいこと共に30年に渡り実践していて、その効果は実証済。私たちのサイト「健作堂」(www.kensakudo.com)にある最高の引き寄せメソッド「クリアリング」特設ページ、書籍ではマダムれいこの著書『離婚回避のトリセツ』(131頁、ごきげんビジネス出版)、『大好きなあの人にずっと愛される本』(144頁、KADOKAWA/中経出版)でも紹介しています。詳しく知りたい方は、ぜひチェックしてみてください。

自分に正直になると、心はスッキリし、フラットな視点で物事を眺めるようになる。よいことが増え、物事に対し、前向きになれる。次第に人生も上向きになっていくのです。

チリも積もれば山となる––––ささいなことでもスルーせず、心のモヤモヤを外に出してみてください。そうすれば、ブレーキをかけている「何か」に気づくことができ、状況は好転––––飛躍するきっかけになるでしょう。

2.軽い気持ちで「はい」と言ってしまう

仕事で「これ頼んでいいかな」と軽く言われ、あまり深く考えずに「はい」と答えてしまったことはありませんか? いざフタを開けてみると、「うわっ大変! 引き受けなきゃよかった」と後悔するケースです。たとえば、次のような展開です。

人は頼みごとをするとき、カンタンに言ってきます。こちらは「断って機嫌を損ねてもなー」と思い、いったん引き受けます。しかし、実際にやってみると、想像していた以上に量が多いではありませんか! 「ムリ、ムリ」と思って断ろうと考えてはみたものの、「早々と言ったら無責任と思われやしないか」と邪念が生じ、しばらくは自分でやろうとします。

ところがそうは問屋が卸しません。苦戦するこちら側をよそに、当の本人は涼しい顔。同僚と談笑し、さっさと帰ります。一方、残された自分はモヤモヤしてきます。それもそのはず。重荷をこちらに預けてスッキリしている相手の顔を眺めれば、誰だって腹が立ってくるでしょう。

なぜ、あのときスパっと「NO」と断れなかったのだろう……。断っていれば、こんなことにはならなかったのに。なんて自分は優柔不断なんだ! そんな自分に腹が立つ。

あなたがもし、このような場面に遭遇したら、きっとそう思うことでしょう。

自分としては何の気なしに「はい」と答えただけ。なのに、同意したと見なされる。でもそれは愛想よくいたいから。ところが、「いい人でいたい」といった良心が時に裏目に出るのです。

イベント幹事、PTA、自治会役員、組合、サークルなどの世話役を一度でも引き受けたことがある人なら、わかると思います。いったん「はい」と答えようものなら、話が先へ進んでしまうということが。

あとになってからでは、「できません」とは言いにくい。役割が決まって事がスタートしてからだと、とくにそう。まわりにも迷惑をかけるし、評価も落としかねない。だから何も言わないまま、ずるずると時間だけが過ぎていくのです。

もちろん、悪いことばかりではありません。「いざというとき頼りになる人」と、一定の評価が得られるのですから。だからこそ、やめられないのです。途中で投げ出し、迷惑をかけるわけには……。だからノド元まで出かかった断り文句を、ゴクンと飲み干すのです。

3.はっきり断るよりも、あいまいな返事がラクだから

では、最初から「できません」と断っておけばいいのに、なぜそうはしないのでしょうか。

ひとつの理由は、はっきり断るより、あいまいに「はい」と返事をしておいたほうがラクだから。断ると波風が立つし、言うときに負担感がある。だから無意識のうちに避けようとするのですね。

とくに皆同意見のときなどがそうです。ひとりだけ違う意見を述べると目立ちます。たとえば、共産圏の国や硬直した組織で異論が出ないのも同じ理由です。

しかし、現状を重視してなんの意思表示もしないでいると、問題が残ります。むしろ、あとになればなるほど負担感は増し、断りにくくなるもの。それならせめて、「ちょっと待ってください」くらい言っておき、返事を保留しておいてはいかがでしょうか。

■「はい」「わかりました」と、つい言いそうになったときは……

こういうときの対処法は「ちょっとむずかしいかもしれません」と、いったん断っておくこと。相手に悪いなどと善人ぶらずにいること。控え目に言っておいて、あとから引き受けても遅くはないのです。

大切なことは、「一事が万事」だととらえ、いきなり頼まれたときでも、「ちょっと待って。考えさせてください」とストップをかけられるように準備しておくこと。「NO」より「YES」がラクだとばかり、安易に言わないことです。

そうすれば、「やる・やらない」をゆっくり考えることができ、仮に断る場合でも、最もな理由をつけて上手にかわせます。生半可な返事をしなければ、変に誤解されたり、みずから評価を下げたりせずに済むでしょう。

すぐには断らず、「ちょっとだけ返事を待ってください」と言うだけでもいいのです。そうすれば、少なくとも引き受けたことにはならず、いつでも断れます。あとになって、「しまった」と思うことも減ってくるでしょう。

4.日本人は断るのが苦手 人と違うことができない

沈没しかけた船から海に投げ出された女性を助けるには、どのように声かけをすれば男性がその気になるか。国別に考えた、たとえ話をご存知でしょうか?

ヒーロー願望のアメリカ人であれば、「ヒーローになれる」。
スマートさを求めるイギリス人なら、「紳士たるもの、飛び込むものだ」。
厳格なドイツ人には、「飛び込むのは規則で決められている」。
遊び好きなイタリア人には、「先に美女が飛び込んだぞ。カッコいいとこ見せろよ」。

そして日本人には、「みんな飛び込んでいる」と言えばいいそうです。

たしかに多くの日本人は、「みんながするから」という理由で動きます。人と違うことをすると目立ってしまい、批判されかねません。

だから、本当はやりたくなくても従い、逆に、やりたいことでもすぐには手をあげない。いつもまわりの動向を見ながら場の空気を乱さないように、なるべく目立たないように動きます。これが大勢の日本人を占める心理であり、すぐに断れない理由です。機嫌を損ねてはいけないと、相手を気づかうことを良しとします。

しかし、本当にダメなら、意思表示をしないといけません。あいまいなままだと同意したことになり、話が進んでしまうからです。

放置してあとになって反対すると、問題がややこしくなります。そうならないためにも、早い段階で自分の意見を言っておくことです。

■誤解を生みやすい日本のお国柄

私が20代のころ、飲み会や慰安旅行、ボーリングやキャンプといったイベントごとが苦手で、気乗りしない態度をしていました。すると後輩は、「郷には郷に従え」と詰め寄ってきました。そういう本人も、本当は行きたくないイベントだというのに、です。

表向きは文句を言わず、私の態度に注文をつけてくる。私は、「参加したくないなら、しなければいいのに」と内心思っていました。

人一倍自己主張の強い彼なのに、自分の意を曲げてでもまわりに合わせる。その理由は、上下関係を重んじる体育会系だから。意のままに発言する私の態度に、我慢ならなかったのでしょう。いまなら彼の気持ちもわかります。

ただこの話は、30年以上も前のことです。いまの時代はどうでしょう。残念ながら日本人の根本的な性質は、あまり変わっていないようです。

若い人に尋ねてみると、いまの時代でもまわりに合わせようとムリしたり、逆に、合わせられず会社を辞めたりしている。けっきょくそれも、自分の気持ちを素直に言えない日本人の特性の一端をあらわしているといえます。

一方私は、ある面では「YES」「NO」をはっきり言ってしまうところがありました。

欧米人には「わかりやすい」「素直」「正直」と評価される。反対に、日本人には「配慮がない」「正直すぎる」「人の気持ちがわかっていない」と批判される。同じ接し方をしているのに、どうしてこうも違うのだろうと、当時はすごく悩んだものです。

私は人への気づかいがうまくできず、突拍子もないことを言うことがありました。誰とも群れず、自分なりの持論をもっていたので、よく意見がぶつかっていたのです。

評価はお国柄によっても変わってきます。いずれにしても、どういう状況であれ、上手に意見を言えて、要望を通せるようになれたらいいですね。

私自身は人から、「空気が読めない」「TPOに合わせたトークができない」と、ずっと言われてきました。とくに日本では、「同調圧力」といわれる言葉があるように、まわりに合わせておかないと、時として浮いてしまったり、変わり者とみなされたりすることがあります。

そこで本書のアドバイスを取り入れていけば、徐々にうまく振る舞えるようになります。要は、「状況を知る」「タイプを知る」「タイミングを読む」「言い方を工夫する」といったことを身につけていけば、浮いた存在にならずに済むからです。

第1章では、問題がどこからきているかについて述べていますので、自分なりの解決策を考えてみるのもいいでしょう。

5.断りベタ 反射的に言ってしまう

ここで少し違う例を出しましょう。これまで挙げてきた弱気な人たちとは、真逆のタイプです。「何言ってんの!」「それ常識でしょ!」みたいに言い方がきつく、反射的に否定します。何ごとも早合点。言わずにはおれず、ストレートにダメ出しする。いわばアクセルを踏みすぎる人といえます。

このタイプは、責任感が極端に強く、曲がったことが嫌い。ちょっとでも疑問を感じると、すぐさま反応します。間違っていると思うと、「そうするのがスジでしょ」と道理を求め、それにそぐわないと「理不尽だ」と腹を立てます。

正義感が強いのはいいのですが、正論をぶつけすぎるのが玉にきず。相手の状況を見ずに反射的に否定。言い方が強すぎ、敵を増やしてしまいます。

ただ、なぜ自分がそこまで怒っているのか、いまひとつ理解できていないようです。このタイプは、自分がかかわってしくじったらいけない、間違ってはいけない、などといった強迫観念が根底にあります。だから少しでも違うと感じると、強い言い方になり、相手を否定した表現になってしまうのです。

ブレーキばかり踏んで、言いたいことを言えないタイプとは対照的。秒で断り、否定的なことでも言えるわけですから。

ただ、アクセルとブレーキのバランスが取れていない点では似ています。どちらも過剰に反応しているからです。その意味においては、上手に断れていない点で同じといえます。

■人を否定しすぎない

もし相手を反射的に否定した言い方で詰め寄っているのなら、「ちょっと待てよ」と自分にブレーキをかけましょう。「おかしいでしょ!」「何やってんですか!」「わかってるの!」と言いたくなるのをぐっとこらえ、ひと呼吸、間を置いてから話すのです。

思わず口を突いて、きつい言い方をしたときは、「少し言いすぎたかもしれないけど」「よくやっているのはわかっているよ」とフォローしましょう。

反射的な態度に注意し、少しだけ相手に寄り添う。そうすることで、ちょうどいい塩梅の言い回しができるようになります。前置きやフォローを入れるといいでしょう。

たとえば、「僕は自分の考えが通らないと、すぐ頭に血がのぼってカッとなる。それも、よかれと思って発言したときにね。大抵そういうときは、人の話を聞いてない(苦笑)」「私、少しきつい言い方になるみたい。けど悪気はないからね」などと言っておくと、誤解されずに済みます。これはSNS時代にも使える処世術です。

自分のスタンス(短所)をひとこと添えておくことで、あなたに賛同する人は増え、応援してもらえるようになり、仕事もスムーズに進みます。ちょっとした心がけで、あなたの人生が充実していきますよ。

6.上の顔色を気にする

世界に共通していえることがあります。それは「上の顔色(意向)を気にする」こと。

会社でいえば、社長や上司。営業でいえば、取引先やお得意さま。業界団体でいえば、役職や理事長。政府でいえば、世論や支持率。日本でいえば、米国の顔色。恋愛でいえば、好きになってしまった相手です。

このように、利害関係ある相手、自分よりも強い相手、好きな人には強く出られません。

もし強く出て、評価を落とす。担当をはずされる。フラれてしまう。そうなったら、取り返しがつかない。だから相手の顔色を気にするのですね。

しかし、相手の顔色ばかり気にしていると、判断を見誤ります。まわりの状況や世の中の動きを見落としてしまう。また、たいしておそれなくてもいい場合もあります。

上の人も「これやってくれる? できれば」と、軽い気持ちで言っていることも少なくありません。「ダメならダメと言ってくれればいい」という程度。それなら逆に、できない理由を添えて、こちらの意向を正直に言えば、わかってくれるかもしれません。

ところが、いざ言おうとすると、関係が悪くなるのを極端におそれ、やはり返答に四苦八苦します。それだけ立場が弱いほうは、断ることや意見を言うことはむずかしい。

とくに要領が悪く、お人好しな人はなおさら。相手の機嫌を損ねてはいけないと気を回しすぎ、課せられた仕事だと思って断りません。極力自分でやろうとします。

しかし、これでは遅かれ早かれキャパを超えます。仕事に追われ、時間だけが過ぎていく……。すると今度は、カンタンな仕事も片づかなくなり、しまいに成果も出せなくなる。そうなると、結果的に評価を落とすことにもつながりかねません。

自分より上の立場の人に、意見・要望を言うのがむずかしいのは、資本主義・共産主義にかかわらず世界共通。「NO」と断れないのは、上の顔色を気にするからなのです(具体的な対処法は、第2章以降で詳しく述べます)。

7.親に反論できなかった

親が厳しくて言い出せなかった幼いころの経験も、いまの人生に影響します。

たとえば、口よりも先に手が出る父親や、いくら訴えてもわかってもらえない母親のもとで育ったケースです。この場合、反発する(=怒りが外に出るプラスの反応)、無抵抗になる(=あきらめて主張を引っ込めるマイナスの反応)になりがち。

前者のタイプは、既存の体制や現代社会に反発し、「NO」を突きつけます。

後者のタイプは、内心違うと感じていても抵抗せず、服従します。

どちらのタイプも被害者意識が強く、反応的な生き方で、不自由なことには変わりません。ただ、後者は我慢している分、ストレスを抱え込む傾向にあるといえるでしょう。

では、自分を抑圧することがいかに人生に影響をおよぼすか。事例をもとに見ていきましょう。

■不本意でも「はい」とうなずく山口さんの事例

山口さん(仮名・20代男性)は花粉症の時期になると、ハンカチを手離せずにいました。しょっちゅうくしゃみをし、鼻水が止まりません。家にいるときは一切出ないのに、出社すると決まって症状が出ます。

ある日、私が話しかけても、リアクションがほとんどありません。心ここにあらずという様子です。こちらに顔は向けているものの、目はパチパチとまばたきをし、ムリして話を合わせているようです。

その不自然な振る舞いが気になり、どうしたのか尋ねると、重い口が開きました。

「頭痛があり、座っているのもやっとです。こんな症状が出ると、決まって3か月は悩まされるんです」

ヒアリングを重ねていくうちに、彼の悩みがどこからきているか、少しずつつかめてきました。

■父に反抗できず、従い続けてきた日々

彼は長男で、父親からはスパルタ教育を受けて育ちました。反抗すれば、口よりも手が先に飛んできます。そのため幼いころは反抗できず、従うしかなかったそうです。それが大人になってからは、父親とお酒を酌み交わす仲になれたと言います。

ところが、話はそこで終わりませんでした。就職して上司に仕えるようになると、今度は上司が父親にとって代わる存在になったのです。間違っていると思っても、「NO」とは言えない。「それでいいんでしょうか」と皮肉めいた言い方に、どうしてもなってしまう。しまいに上司は怒り出し、仕方なく山口さんは主張を引っ込めます。

上司の意見に対し、「違う」と内心思っている。しかし、うまく言葉で表現できず、仕方なく従っている。幼いころ、父親に反抗できなかった思い出がよみがえり、身体が敏感に反応していたのですね。

彼は頭痛薬と抗アレルギー剤を飲み、症状を一時抑えていました。

不思議なことに、休みの日に家で過ごしていれば、症状が出ることはありません。ところが、休み明けに一度出社すると、途端に鼻水と頭痛が出はじめるのです。

彼が意見を言うときは特徴的です。「はのお~~~(あのー)」と鼻の穴が大きく開き、ストローをくわえたように口をすぼめて声が細くなります。

上司という「従わないといけない存在」に圧を感じ、声をあげることに抵抗がある。こわばった身体のまま声を絞り出す状態。言動はぎこちなく、取ってつけたような物言いです。

過去のトラウマは、いまの仕事や人間関係に大きく影響します。

ふだんは自己主張せず、断るのを苦手とする人が、どうしても「NO」と言わなければいけない場面に遭遇すると、言い慣れていない分、苦しくなる。ぶしつけな言い方になりがちで、相手の心情を害し、トラブルになることがあります。

時に「あんなに温厚だった人が突然キレた」「社会的地位もある人格者ともいえる人がパワハラ・セクハラをしていた」というニュースが出ますが、まさにこのようなケースです。

ふだんは自分の感情が出ないように抑え込んでいる。ところが、ある一定のところまでくると、抑えが効かなくなって爆発。その瞬間、我を忘れているため、何をしているのか自覚がありません。

山口さんのように、何かに遠慮して自分を出せていない人は、親の価値観や育った環境に縛られていることが多いです。いってみれば、自分の人生を生きていないようなものです。

もしあなたが過去の体験から当時の記憶を引きずり、他人に同調してばかりいるなら、(せっかく本書を読んでいただいているのですから)これを機に生まれ変わりましょう。

率直な意見をすぐには言えなくてもよいので、まずはあなたの意向を相手に伝えてみてください。そうすれば、言えた自分にOKサインが出て、少しずつ気分が晴れていきます。

これが本章1節「『はい』をOKと取られてしまう」でも紹介した、現実を一変させるメソッド、「ひろ&れいこ流 クリアリング」です。クリアリングをしていくと、不満やわだかまりが消え、物事がスムーズに進むようになります。次第に自分の人生を生きられるようになることでしょう。

うまく断れない人も、まずは自分の懸念を誰かに伝えてみてください。あなたの中の小さな声=「NO」を外に出すことからはじめるのです。

たとえば、仕事で忙しいとき、まわりに気兼ねして休めない人は少なくないでしょう。そのようなとき、「まあ、いまでなくてもいいかな」とムリに自分に言い聞かせていると、次第に不満が募ります。心では「大丈夫」といいながらも、口元が引きつり、口調にトゲが出てきます。

それは、被害者意識が心の奥底で叫んでいるから。そのようなときは自分の正直な気持ちに、「よしよし」と声をかけてあげてください。ワガママな自分にOKサインを出してあげるのです。そうすれば、否定的な自分を許せるようになり、セルフイメージ(自己認識)や自己肯定感がアップしていきます。

■上手に意思表示して要望を通してみよう

自分の意見がすんなり言えるようになると、気分がよくなります。

「言ったってどうせムリ」と決めつけあきらめていたのが、「言ってみたら要望が通った」––––そのような体験がひとつでも出てくると、うれしくなりますよね。自分を肯定するようになり、人を思いやれるようになる。まわりからの評価は上がり、自分らしくいられる。その結果、閉塞感から脱け出す一歩になるのですね。

このように、上手に「NO」と言えるようになると、好循環が生まれます。自分の力に目覚め、「流れを変える一手」が出せるようになっていきます。

望む人生をみずから選んでいく––––これが「NO」と言えるひとつのゴールといえます。

*   *   *

第1章前半はここまで!
続きを読みたい方は、各電子ストアにて随時発売になります。ぜひお買い求めください。
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書籍『もうコミュニケーションで悩まない! 断り方の極意 「NO」と言える技術と「ことわり」の作法』

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■書籍情報

断りたいのに“NO”と言えず、つい“YES”と言ってしまうあなたへ
断り上手になり、望む現実を手にしませんか?


あなたはこんな状況に陥ったことがありませんか?
●言いたいことが言えず、悶々とする
●断りたくても断れず、イヤな状況が続く
●いくら訴えても要望が通らず、あきらめ感がある

意思表示しないと、勝手に物事が進んでいってしまいます。
そんなときは、断っても不利にならず、抜け道をつくる。こちらが望む方向に話をもっていく「ことわり」の作法を身につけるといいでしょう。
本書では、今すぐ使える「断り方の極意」を1冊にまとめました。物事が円滑に進む断り方、要望の通し方、かわし方、返し技など、私自身の経験やクライアントの事例に加え、世の中の様々なケースから導き出した法則や技の数々を伝授。

本書の技を身につければ…
●人に振り回されなくなる
●言いたいことが言えて、ストレスが減る
●断り上手になり気分が晴れる
●思い通りに物事を動かし、人から支持される
といった変化が期待できます。

かくいう私も、相手の反応に恐れ、うまくコミュニケーションができず、傷つきやすい性格の持ち主でした。そんな私でも変われたからわかるのです。断り上手になり、自分の意見が言えるようになれば、どれだけ救われるか。さらに要望が通るようになれば、人生を好転させていけるのかを。

次はあなたの番です。様々なシーンで使える技を用意していますので、思う存分吸収し、使いこなしてください。そして自分なりの「解」を見つけてください。そうすれば、昨日より今日、今日より明日と、成長していく自分に手ごたえを感じるでしょう。

【目次】

第1章 なぜ「YES」と言ってしまうのか
第2章 人を動かす断り方
第3章 相手を不快にさせない「かわし方」と「要望の通し方」
第4章 もしものときの回避策
第5章 自分を守るセルフケア

【購入特典】

「NO」と言える技術・「ことわり」の作法を活かす解説音声 ほか3大特典

詳しくは下記をご覧ください。

■著者プロフィール

ひろ健作

カウンセラー・コーチ/企業コンサルタント
元々対人関係が苦手で、女性に対し奥手であったことから、私財の大半を費やし成功法則をはじめとする人生の知恵を学ぶ。その後コミュニケーションをベースとした人間関係スキル、願望達成法をセミナーアシスタントとして10年学び、独立。30年をかけ築いた「オリジナル・メソッド」と、そのコーチ力には定評がある。現在は妻のマダムれいこと共に「恋愛と結婚の専門家」「夫婦関係カウンセラー」としても活動。2万人以上の方々を幸せに導いている。クライアントは、経営者、医師、アスリート、主婦、会社員など幅広い。
著書にはマダムれいことの共著『大切にしてくれる彼と もっとしあわせになれる 恋愛の教科書』(すばる舎)がある。

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