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(連載49)回顧展:会場探しの面接で、きかれた質問:ロサンゼルス在住アーティストの回顧録:2006年

今回はいきなり、いきます。

回顧展をやらないか?という話が持ち上がった。

考えたら、1990年の頭から自分の作品を制作しているので、もうこの時点では15年程のキャリアとなってしまい、それまで、ちょこちょこグループ展などに参加はしたけど、一同にバーーーっと自分の作品を見せる機会はなかった。

この話を話を持ってきてくれた女性。お名前は、クリスティーン・メッケーナ。彼女はロサンゼルス・タイムズで長く音楽のジャーナリストをやっていて、70年代後半の数々のロサンゼルスのパンクシーンをレポートした人のひとりであり、また、アートのライターでもあり、私の夫、トッシュの父、亡きウォラス・バーマンの展覧会なども企画をした事もある女性です。

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その当時、彼女は私の作品にうっすら興味をもっていてくれたみたいで、家に来た時に、たまたま飾ってあった私の絵を見て、「あなた、回顧展をやったらいいよ!」と押してくれたんです。

しかし、「やったら?」と言われて、「はい、では。。。」と、そう簡単にはいかない、このアート・ギャラリー業界。プチ苦笑+顔ひきつり

もちろん、ギャラリー・スペースにお金を出してレンタルするのも一つのやり方ですが、(日本ではこれがポピュラーだと聞きましたが)

そんな、お金の余裕なんて、まったくないのと、できればギャラリーの企画展として(つまりレンタル料はかからない。売れたら50%払う)やってもらった方が、ギャラリー自体がバックアップしてくれるので、いろいろな方面に情報が届くという利点もありました。今とちがって、SNSなどがない時代だったので、自分でプロモートするのも限界がありましたのでね。

しかし、ギャラリー側もある意味、ビジネスなので、作品が売れるのかとか人が集まるのかなどと、計算はするでありましょう。とくに現代美術はハードルが高いってもんじゃないです。

なので、私なんか、持ってのホカ、。。。

「回顧展をやればいいのに」と、言われた時も、心の中では、そんな、やれるもんならやりたいわ〜。と、思いました。

しかし。

彼女は「私が場所を見つけてあげるから!」とまで、言ってくれたんですよ


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だったら、は、はい。。。。。。。是非おねがします!

となりました。


で、まず、最初に取ったアポがなんと

サンタモニカ現代美術館!



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い、いきなりそんな上から狙わなくても。。。。と思いました。

どこか小さなギャラリーでいいのに。と思いました。

ここはその昔、グループショーで参加させてもらったことはあったけど、そんな昔の事は、本人しか覚えとらんわ!!

そして、「もうアポとってるから」と言って、彼女もいっしょについてきてくれるというんです。まるで保護者のように、、、、。この時点で50歳前のアタクシに保護者がいるのか?という問題には、諸説ありますが。苦笑


で、、、、早速、そこのメインのキュレターの人に接見することになった。

ま。ここまでは、ちょーーーースムーズ。苦笑


ポートフォリオ持参して、(作品集=その頃はまだデジタルではなくて、いわゆるプリントされた「写真」です。)

覚えてらっしゃいますかね? ロンドンにも持っていった昔作った、赤い箱に自分の作品の写真とミニチュアを入れたやつ。


 これですよ。

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これを持っていって、見せました。

そして、服の作品だけでなく、その頃の音楽活動の話もしました。セックスロバの事が書かれた記事や、ヨーロッパのツアーに行った事、テレビにも出たし(民放、一回だけ)LA ウィークリーのベストダンス・ミュージックの賞に2年連続でノミネートされた事などなど、

ちょっとでもメディアから注目されたような記事、ともかくなんでもいいから、、、、と思って、やたら、まくし立てた。

そして、今はジャンポール・ヤマモトというバンドをやっていて、回顧展では、以前の「汚れの首輪のファッションショー」の進化版をやって、自分がその音楽も担当したい、と。

いっきに、喋り尽くしましたーっ!
ふぅ〜〜


そしたら、ふんふん、と聞いてくださっていたのですが、

いきなり私の作品のファイルを閉じて、

 で、 あたなのビジョンは、

 何なの ? と。



私は  「は〜?」 


と なりました。


この、今見せた過去10年の作品群、そして音楽の話。。。

これだけでは、わからないってこと??


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えっとぉー?

 

あのぉ ビジョンて?  なんだっけ?


ぼんやりとはわかるのだが、相当する日本語は?と言われても、よくわからない。

具体的な構想?計画?全体像??

辞書には、「未来像とか夢」ってかいてあった。


、、、っていうか、回顧展なのに、未来の夢をきくか?

今みせた、

この服の作品とこの音楽活動だけじゃ、

私のやりたい事が想像できないのか?


これみて、わからないのだろうか??

私のやってる事は、服の作品やら、ファッションショーやらバンドやら、いろいろあるから、ビジョンがない?というのでしょうか??


だったら、あの現代美術の大スター!マルセル・デュシャンを見よ!

キュビズムの絵を描いて、便器にサインして、モナリザに髭描いて、女装して、でっかいガラスの作品かと思ったら、チェスをやって、って、いろいろやっとるよ。

前回のあのオノヨーコ様だって、詩を書いたり、歌ったり、叫んだり、空気売ったり、ベッドで寝たままインタビューですよ。

ファッションの世界では、山本ヨージだって、ジャン、ジャン・ポールゴルティエも80年代に自分が歌ってレコード、出してました。

なんなら、空海だって、お経だけでなくて、温泉みつけたり、ため池作ったり、書道したりしてましたし。


まさか、
このキュレーターの人はデュシャンに向かって、

あなたのビジョンは?って尋ねますか?

そんなん、そちらで

勝手に想像してくれることでは?



この予想もしてなかったの質問に、私だけでなく、クリスティーンも黙ってしまった。。。。。

そして、なんかいやーな雰囲気とともに、我々は部屋を出た。

そして、あんの場、 きっぱりと 断られた。


私は、天下の美術館だしなあ、まあ、しかたないわー。と諦めたものの、この「あなたのビジョンは何?」が、頭にこびりついた。

なんで、自分は答えられなかったんだろ?

服、音楽、絵、が同じくらいのレベルで進行していた私は、どれも落とせない。だったら、この三つを統合して「ビジョン」というものを自分の言葉で説明する。これは、営業スキル? そのスキルが私には、なかったのか。

いえ。。。

スキルじゃなくて、私って、もともと、ビジョンがないのかも?とも思った。

たしかに、絵を描いたり、服をつくったり、バンドやったりしてるので、いいように、言えば、「マルチだね〜」なんて言われたこともありますが、大抵はお世辞で、心の底では、「いったい、あんたは、何かやりたいの?」と思われてたに違いありません。

しかし、いかんせん、

私には、どうなりたいのか、がない。

作品としての服を作りたいから作った。だからといって、アートで食っていけるとも、最初から思ってないし、(もちろん食っていけたら嬉しいですよ)

絵を描きたいから描いた。だからといって、これが1億円で売れるとも思ってないし。(もちろん売れたら嬉しいですよ)

音楽だって、やりたいからやってる。(もちろん、BTS  の前座をやってくれないか?っていったら、喜んでやりますよ。笑)


やりたいからやってる人は、ビジョンがないのか。。。

誰もが納得できる未来像を説明できないととダメなの???


子供の頃、よく大人から、大きくなったら何になりたい?と尋ねられました

この答えが「職業名」だったのが、子供ながらにすごく違和感があった。

大きくなったら、豊かな人間になりたいとかじゃ、ダメだった。

やりたいことが、なんでもできる人間になりたい。じゃ、ダメだった。

つまり、そんな答えじゃ、ヴィジョンがないんだろう。


つまりミュージシャン、だったら、曲作ってアルバム出して、グラミー賞を目指す。

画家だったら、ギャラリストを探して、評論家にいい評価を書いてもらって、お金持ちのパトロンがついて、巨匠になる。

服だったら、ファッション・デザイナーになって、パリ・コレに参加し、イタリアでお店を出し、ヒップホップで売れてる人とコラボをする。

最近だと、ユーチュー・バーになって、再生数を増やして、インフルエンサーになり、サブスク増やして、地球に優しいことを目指す。

これがビジョンというんでしょう。



けれど、私のようにひたすら、パッションと直感だけで、突っ走っている人間だと、未来像なんて、考えたこともないので、

どうなりたいが、ない! のだ。


そして、 

思うに、


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アタイは、バカボンのパパなのだ!


そうだ!


あのスティーブ・ジョブスも、言ってた。


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バカのままで、いろ!って。

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別にねー、世間様にわかってもらわなくても、いいんじゃネ?

自分の信じた道をただ、ただ、走り続ける。それでいいやん?

ビジョンがなんや?  どれがどした??

バカボン的に生きればいいじゃん?

誰になんと言われても、作品を作りつづける。人の目なんか、気にするな!

たとえば、山にこもって仙人のような生活をして、自分の世界に深くはいりこんで作品を作る。それはそれで、素晴らしい!

ずっと砂漠を旅して、空と砂嵐に向き合って、自然の一部となって、作品を作るのも、すごいと思う!


しかし、


ここで問題なのは


私は都会が好き......



ワインとタクシーとネオン・サインが好きなんです。
人と楽しく、ワイワイやったりするのが、好きなんです。

砂漠とか山の中では生きられないタイプの、ホモ・サピエンスなのですよ。

ここが、矛盾しとるのだ!
だから。

つい思ってしまうんですよねー。

ずっとこれからも、ずっと、ずっと


バカボンのパパでいいのか?

死ぬまで、フーリッシュのままでいいのか?

ちょっとは、頭良く(みせて)立ち回ることがあった方が、みんなにわかってもらえるんじゃないか?

そして、どーせなら、自分をわかってくれた人と、ワイン(安価)を飲んだ方が人生、楽しいんじゃないか?

そのために、バラバラだと思われてる自分の創作活動を、きちんと言葉で説明できる、そういうスキルを磨くことも大事なんじゃないか?という

このビジョン問題

それ時以来、ずっとずっと私の頭の中で、くすぶり続けることになってしまいます、、、。

ここで、お話を終わりたいところですが、この直後、回顧展がどうなったのかいいますと、

あと30秒で読めるので、最後までお願いいたします。

私は、もう諦めていたが、このクリスティン女史、そんな事ではくたばらなかったみたいで、すぐ、違うギャラリーにあたってくれてたんですよ。

しかも場所はその美術館のとなりのとなり!!

(いやがらせ、かい? 爆笑)

場所は、サンタモニカにあるトラック16ギャラリーというところで、ロフト・スタイルの大きなギャラリーでした。(現在はダウンタウンに引っ越してます)

で、ここは、もう面接なしで、すぐオッケーだったんです!

さすがのクリスティン女史のパワー?

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これをコネクションと呼ばずになんと呼びましょうか? 苦笑

ここはパフォーマンス・アートや実験的演劇などもやってるロフト型のギャラリーで、考えたら、私にはぴったりであった。

(最初からここにすればよかったのでは?苦笑)

そして、なんなりと、回顧展の運びになりました。

その初日にランウェイのショーをする事も、すぐに決まり、これが、先日話した、元ディーボのアランに即興演奏をおねがしたショーです。

次回は、このイベントのお話をします。

読んでくださり有難うございました。

L*




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