(連載88)美術館「ザ・ブロード」で、オペラの衣装を制作:ロサンゼルス在住アーティストの回顧録:2017年
さて、今回は、お仕事の話をしようと思います。
2016年は、ノイズ音楽のボレロ、ボレロで、自分のエネルギーを使いきりました。(詳しくは、前回、前々回、前々前回に詳しく述べています)
音楽の事を引き続き書きたいのですが、次の2017の年があけてすぐ、ちょっと面白い仕事をしたので、それを今回はご紹介させてください。
ロサンゼルスのダウンタウンに「ザ・ブロード」という比較的新しい美術館がありまして、今も(2022年)行列のできる人気の観光名所になってます。
そこの会場のロビーで、一人のオペラ歌手が演じる、1日だけの限定プログラム企画があったんです。
ただ「ロビー」と言っても、「ただのロビー」じゃないですよ。こんな。
反対側からみたところ。
正面のちょっと凹んだところ、上の写真の中央あたりにこんなエレベーターのドアがあって。
ともかくこの会場だけでも、吸い込まれていきそうな空間です。
このロビー全体をステージにして、環境音楽のようなサウンドデザインとライティングを施し、メインのオペラ歌手とコーラス二十人くらいの声がライブで混じり合うという、スペースの全てを宇宙的にこなした大スペクタクル計画でした。
メインのオペラ歌手のは、ジュリアナ・スナッパーなる人物。
ロサンジェルスの人ですが、ヨーロッパでも活動していて、実験的なオペラを次々にやっている人です。
イタリアでは、水の中で歌ったりとか。。。。
なぜ、こんな凄い人と私が知り合ったのか?というと、
私は彼女のボイトレを受けていたのでした。
しかも、
なぜ私が彼女のボイトレを受ける事になったのかというとですねー。
これまた話が、あっちこっちと、散らかりますが。。。(いつも)
皆様、60年、70年に活躍した、ジョン・カサベヴェテスという映画監督をご存じでしょうか?
俳優だったら「ローズマリーの赤ちゃん」が有名ですが、監督としては、「こわれた女」「オープニングナイト」「グロリア」など特徴のあるドキュメンタリー風な作風で、好きな監督の一人であったのです。
普通にイケメン
妻は映画でも共演してますが、ジーナ・ローランド。
彼女もアカデミー賞にノミネートされるレベルのすばらしい女優さんです。
話、続けます。
この2017年当時ですが、カサベティスはもう亡くなっていて、彼のフィルム・フェステバルをやっていたのですが、私は行けなかったので、それに関するレポートを読んでいたら
初日の映画紹介をやった人が、オペラ歌手、ジュリア・ナスナッパーって書いてありました。おそらく映画「オープニングナイト」の主人公が舞台女優だから??
興味をそそられ、どんな人かな?とググってみたら、アート・パフォーマンスによりのオペラ歌手として、活躍している人。しかも、私の家から5分くらいのところにスタジオがあって、しかもボイス・トレーニングや歌のレッスンもやってると書いてありました。
へぇ〜〜と思って、クラスのスケジュールや金額なども調べてみたら、そんなに高くなかった!
オペラ歌手のボイトレ!!
おもしろそ〜!と、興味半分で受けてみる事にした。(なんでも、そこからはいります!)
そして、何回か通っているうちに、親しくなり、結果「ザ・ブロード」のお話へと、つながったというわけです。(ボイトレの方は、自分の才能のせいで、あまり上達しませんでしたが。苦笑)
いつも申しますが、人生、どこでどうなるか、わからないですね〜?この時は、カサヴェテスのおかげですね!!
有難う、ジョン!
僕のファンでいるといい事があるのさ!
さっさと、早送りしまします。
「どんなデザインがいい?」と聞いたら、
「なんでもいいけど、あえて言うなら、バウハウス」と言いました。
「オスカー・シュレンマー風って事?」ってきくと、
「そんな感じ。」
「でも、動きにくくなったりするのは?」
「まったく、気にしないから、大丈夫」
早っ!
で、作ったのが、これです。
じゃーん。
最初のシーンはエレベーターから降りてくるというものでした。
エレベーターからおりたところ。照明の色がかわって、針金ワイヤーがシルバーに光って綺麗だったです。
壁に映る影も昆虫みたいで?
最初の場面が終わり、彼女はいったんエスカレーターで上に登ってゆき、つぎの場面は、今度は上からエレベーターから降りてきて、ドラマチックに登場!!再度フロアを歌いながら歩き回るというスペクタクルなパフォーマンス!
実はこの計画を聞いた時、私はふと思いついた。
「エレベーターからおりてきたら、スカートの後ろの部分を足して、それを引きずり回しながらのパフォーマンスってのはどう?」と、言ったら
「いいね〜、いいね〜〜」とこれまた即、意見が一致していたのでした。
後ろに引きずるトレーンはこんなで、3メートルくらいにしました。
ただ、「本番の時にのパーツの取り付けは、ルンナがやってくれない?」と言われたので、「もちろん!」と答えました。
しかし、、、、。
(いつもの)
実は、これが、本番の時に思わぬ展開になったのです、、、。
この会場は、ロビーなので、どこからどこまでが、ステージという線引きがないんですよね。つまり見てる人も同じフロアで、なんとなく、このあたりまでがステージかな?っていう暗黙の了解で成り立ってました。
それで、本番がはじまって、私はエレベーターのドアの横の暗いところで、そのスカートの取り付けの時がくるまで、目立たないようにじっと待機しておりました。
そしたら、そこへ、照明がいきなり、ピカ〜〜と移動してきたので、ヤバい!ここは、ステージの一部だったんだ。と思って、反対側の方に、ササ〜っと、移動したんです。
そして、すぐ彼女がエレベーターからおりてきたので、すぐ、スカートの接続作業をやって、彼女が中央の方に移動するのを見届けて、ほっと、自分の役割が無事終わってよかった〜〜と胸を撫で下ろし、ハケるタイミングを見計らっていたところ、
今度は、またしても、私がいたところにピカーーーーっとライトがあたりだして、なんと私が移動したところは、今度は、コーラスの人がいるステージ範囲だったのですよ。
照明のリハなどに立ち会ってない私は、そんなのまったく知らず、、、。
すでにコーラスがはじまってしまっているので、何気に後退りしようと思っても、そんな事をすれば、逆に目立ってしまう状況になってしまいました。
とほほ。。。
で、私はとっさに考えた。
コーラスの人たちはみんな黒を着てて、私も黒いシャツだった、このままコーラスの一員として、ビジュアル的には問題ないだろう。それに口をぱくぱくやっていれば、歌ってなくてもわかりませんし、だれも、衣装担当が、コーラスグループに紛れ込んだとは思わなかったでしょう。
しかし、、、、。
事態はもっと深刻になりした。コーラスの人たちにも簡単なコレオグラフィーがあったのでした。知らんかった。手をあげたり、寝っ転がったりとか しゃがんだりとか、、、。それがはじまった。
私は、もう、みよう見真似で、それを真似した。
これは幸いにも、ゆっくりなアクションだったので、なんとか、ついていけました。二十人のうちのひとりなんで、(しかも後ろの方なので)そんなに浮いてなかったと思いますし、私を知らない人には、バレないだろうと思った。
左の後ろのエレベーターの前で寝てるのが私です。
寝てたかと思ったら今度は、すわって、、、。(拡大写真)
なんとか、ごまかせてるしてると思うのですが。。。笑
ともかく、パフォーマンスはジュリアナの圧倒的な歌唱で大成功!!
演目が終了してからのご挨拶には、私も一応、ちゃんと正面で堂々と紹介してもらった(コーラスの事はバレてなかった)
コスチューム バイ ルンナ〜
後で、ジュリアナに報告したら、
あ?そうだったの? くらいでした。
さすが、肝っ玉がでかい!!
夫のトッシュや友人からは「ルンナ、出演してたね〜?」と爆笑されましたが、自主的にしゃしゃり出たわけではない、あくまで、事故!といっても、信用してもらえませんでした、、、、、。
日頃が日頃だしなー。
今回は、以上です。またしても、お茶目披露になってしまいましたが、今後ともよろしくお願いいたします。
読んでくださって、有難うございました。
L*
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