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掌編小説

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#ねこ

(掌編小説)アイドルと猫

(掌編小説)アイドルと猫

「ユウカちゃん。事務所の社長の命令なんだけどさ、明日から犬を飼ってよ。テレビの動物番組の密着やるから」
マネージャーのMさんはうれしそうに電話してきた。ちょっと待ってよ。どうすんの?この子。私の膝の上で聞き耳を立てている、ちくわ柄のスコティッシュフォールド、おでんちゃん。ほら、今も耳が動いてんじゃん。気になるよね、おでんちゃん。私はおでんちゃんの背中を撫でながら、電話先のMさんに拒否アピールをして

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(掌編小説)たよりになる猫

(掌編小説)たよりになる猫

「私、これ以上は無理です。無理ですよ!」
私は職場の給湯室で叫んだ。上司のMはなだめるように何かを言い続けていたが、私は彼の顔も見ずに給湯室を走って出ると、会社を早退した。

乗客のまばらな電車の中で、我慢しても流れてくる涙をハンカチで押さえながら、私は会社を辞めようかと考えていた。私は小さな印刷会社のデザイナー。32歳、女。もともとデザインのPC作業の他に、ちょっとした印刷ぐらいはやっていたが、

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