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デザイナーが新聞広告から学べること/BEE STAFF COMPANY 〜2

時々はここで仕事にまつわる話でも書いていこうかなあと思って始めてみます。

今や新聞を取らない方も多い昨今、特に若い方々は新聞広告を目にする機会自体がほとんどないかもしれません。健康食品などの通販広告ばかりになってしまった最近の新聞を見ていても今や新聞は「高齢者向けのメディア」になってしまったことがよくわかります。

そんな中、広告制作に関わる制作者自身が、新聞を見ないどころか新聞広告を作ったことがないという方々も多いかもしれません。

ところが、新聞広告からはデザイナーにとって学べる部分が多くあります。

まずは、とにかく気になった新聞広告をスクラップしていくこと。気になったビジュアル、気になったデザイン、気になったコピー、気になった文字組、気になった書体...etc。

気になる部分、見る部分は様々ですが、とにかく自分視点で気になった新聞広告を切り抜いていく。特に大企業の企業広告やブランド広告は必ずストックする。そしてできれば業種別に分類しておく。これ、とても役に立ちます。


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今の世の中の新聞広告がどうなっているか、企業が今の世相をどう感じとって、なにをどのようにメッセージしたいのかを感じることが出来るのが新聞広告です。

新しい仕事のオファーがあった時に、その企業がこれまでどんな新聞広告を作ってきたのか、また、競合他社はどんな新聞広告を作ってきたのか、打ち合わせ時の資料としてすぐに用意できるのはとても便利です。


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そんなのweb上で検索すれば必要な資料は揃うじゃんという方もいるでしょう。ところが、デザイナーの職分として考えるとそれでは不充分です。

これはデザイナーにとって基本中の基本ですが、新聞広告だけに限らず「広告原稿は原寸で見る」こと。とても重要なことですが、昨今はそこをおろそかにしているデザイナーも多いのではないでしょうか。

どんなサイズの原稿を作ってもレイアウトバランスがいつも同じようなデザイナーがもしいたら、モニターの中だけでデザインを完結させて、掲載の原寸サイズを意識しないでデザインをしていると思って間違いないと思います。

印刷に関していうと、昔に比べて今の新聞は、紙質や印刷の精度が上がったとはいえ、それでもまだまだ新聞印刷は他の紙媒体の印刷とは異なります。

例えば、新聞は他の印刷物に比べて印刷線数が荒い。そして印刷される紙は白くない。いわゆるグレーがかった薄い紙に印刷されるため、インクの裏抜けやインクの移りが起こらないよう、インクの総量に制限があります。そういった条件下で、写真の色味や濃度や彩度がどの程度影響を受けるのかなども知っておかなくてはならないことですが、そういったことは、web上で拾った新聞広告の画像からは学べません。

また、印刷された写真に文字を入れる場合、例えば、明朝系の文字をそこに入れたいとして、どの程度の文字の級数(ポイント)なら白抜きで抜けるのか(あるいはスミで乗せることができるのか)、あるいはラインを入れる場合はどの程度の太さなら白抜きで抜けるのか(あるいはスミで乗せることができるのか)、というようなことは、現物を原寸で見たことがなければわかりません。

これは以前聞いた話ですが、「ここを白くしたいので白を刷ってください」といったデザイナーがいて困ったという話を製版屋さんから聞いたことがあります。「え?クライアントじゃなくてデザイナーがそれ言ったの?」と驚いて思わず苦笑いした記憶がありますが、紙が白くないわけですから白くはなりませんし特色の白なんてものも使えません。

というわけで、

新聞広告は、特に経験の少ない若いデザイナーにとっては広告自体の研究材料としてはもちろん、印刷やデザインの研究材料や教材としてとてもいいものです。デザイナー教育の一環として取り入れてみるのもいいと思いますよ。

この新聞広告をスクラップするということは、俺がデザイナー修業時代に
師匠や兄弟子から受け継いだものです。それ以来ずっと続けてやってきたことを、弊社に在籍した歴代のデザイナーたちはもちろん、いま在籍しているデザイナーたちにも続けていってほしいなあと思います。

(最近の新聞広告は切り抜きたくなる広告が昔ほど多くないですけどね)



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