見出し画像

【要約】理工系進学を阻むジェンダー要因の分析(著:横山広美・一方井祐子)

『ジェンダーの発達科学』の第10章より。
理系の学問分野に女性が少ない理由のうち、社会的要因について検討する。

世界でも稀な高等教育の男女比

 日本においては、理系全般について女子学生率が低いが、理系の中で女子学生率の違いについては研究において注目されてこなかった。ジェンダーや人種等の属性に限らず学習や研究機会の平等が保たれるべきである。理系の中でも、特定の分野について女性を排除する構造があるのではないか。
 各学術分野に対するイメージを調査した結果では、学術分野に対する強固なジェンダーイメージがあることが示されている。

男女平等度とSTEMをめぐる議論

 男女平等意識と各学術分野に対するジェンダーイメージを比較すると、男女平等意識の低い人ほどジェンダーイメージが強いことが分かっている。同様に、男女平等意識の低い親ほど娘の大学進学を応援しない傾向も確認されているため、女性の大学進学においては世代をまたいだ平等意識が必要である。

数学ステレオタイプと「天賦の才能」

  数学能力の男女差については、研究者らは性差によるものではなく個人差であると結論付けている。

数学ステレオタイプ=女性は生まれつき数学が出来ないという固定観念(間違っている)
ステレオタイプ脅威=自らの集団に対するネガティブなステレオタイプにさらされると、ステレオタイプが強まる現象を指す

 数学的能力は、生まれつきの能力、すなわち「天賦の才能」であると考えられやすい。実際に、各学問に求められる能力のイメージと、その能力のジェンダーイメージを分析すると、数学は男性が強いというジェンダーイメージを持たれていることが分かる。しかし、能力はジェンダーに依らないものであり、学習によって伸びる。学習を進める言葉かけが重要である。

物理を嫌いになるのはいつか

 (略)

数学・物理の男性イメージの新モデル

 米国において、理系内で物理を使う学科の方が、そうでない学科より女性進学者数が少ない要因として3つ挙げられている。
 ①男性的なイメージが強い
 ②幼少期の(理系)経験の少なさ
 ③目的達成能力に対する自己効力感の差
ただし、日本においてはこの3つでは説明が足りないため、下記の要因を追加した。
 ④社会風土
結論として、女性が数物に進みにくい理由として、就職、ステレオタイプ、社会風土の3つが強く影響していることが分かる。

要約は以上。
感想をこちらに記入しています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?