【読書感想】理工系進学を阻むジェンダー要因の分析(著:横山広美・一方井祐子)

下記に要約をしています。自分の体験を交えながら、感想を書きたいと思います。

 正直なところ、私自身はジェンダーに対する問題意識が強い方ながら、数学ステレオタイプを持っていることを自覚した(数学ステレオタイプ=女性は生まれつき数学が出来ないという誤った固定観念)。この文章を読んで思い出したのは小学校の時の経験だった。お母さん達が、男の子が算数で満点を取ると「男の子だからね」「この子は頭が理系なのよ」と言っているのをよく耳にすることがあった。それにより、小学校高学年で既に、「男の子は理系に強いんだ。また、理系は天賦の才能が必要なんだ。」と認識していた覚えがある。またおぼろげながら、「私が算数が苦手なのは女だからだ」とどこかで感じていたような気がしなくもない。今なら、大学受験レベルまでの高校数学はパターンが多く、暗記科目とも言えるレベルで攻略することが出来ることを知り、数学力は筋トレで身につくものだと自信を持って言える。ただ、すごく本音を言うと、超最先端の研究や歴史的難問のようなものを解くのは才能が必要で、それは男性の方が向いているのではないか、と思ってしまっている節がある。理由は多分、門外漢でも知っているような女性の数学者がいない…ことなのかなと思う。それでも、今の通説としては、脳の構造は性差よりも個体差の方が大きいということなので、歴史的に著名な女性の数学者がいないのは、社会的な要因による絶対数の少なさが原因なのだろうと推測する(ここでやっと自分の偏見の融解が終わるイメージ)。

 次に、ステレオタイプ脅威(自らの集団に対するネガティブなステレオタイプにさらされると、ステレオタイプが強まる現象)。これは会社員として働く日常生活の中でよく感じている。上司はしばしば私に「女性は脳の構造的に論理的ではない」という言説を唱えるのだが、相手に対して「私を論理的でないと思っている」というイメージを持ってしまうことで、逆に相手が「私を論理的でないと思っている」という思い込みや恐れが強くなるのを感じる。そして、ちょっとでも論理的ではない部分があると「これだから女は…」と思われるのではないか、やはり私は論理的ではないのかもしれないと不安になると同時に、そういった不安により頭や口が上手く回らなくなり結果的に微妙なアウトプットになるという悪循環を経験したことがある。というか、今なお現在進行中である。

 本書の著者である横山広美教授の報告の1つを紹介する。
https://member.ipmu.jp/hiromi.yokoyama/images/ristex/lec-paper1.pdf

 要約内では詳細を省いたが、こちらには理系各種分野における女子生徒の進学賛成・反対の理由の調査がされていて興味深い。

賛成と⽐較して少数ですが、理系進学を反対した保護者の選んだ理由を調べると、⼯学系全般では「⼥性には向いていないから」、獣医学・畜産学・看護学では「重労働だから」、薬学・医学・⻭学では「学費が⾼いから」が選ばれました。情報科学・⽣物学・数学・物理学では、賛成する保護者が「就職に困らないから」と答えたのに対して、反対をした少数の保護者は「就職があるか分からないから」を選んでいました。

 医歯薬系の「学費が高いから」は実感として納得できた。看護・獣医・畜産は重労働なことを知らなかった…。「就職があるか分からないから」というのは、なんとなくそういう感覚も想像できた。両親が文系出身だったのと、親戚に医学部以外の理系出身で勤め人をしている人があまり見当たらなかったので、理系(特に理学部・工学部)って就職した後どんなところで何する人なの?というイメージを、就活が始まるまで持てなかった。

 親のジェンダー観が子供進路選択にまで影響を与えるのはその通りなので、負のジェンダー観の再生産をしないように自分と向き合って偏見を取り除いていくしかない(いつもの…)。


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