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雑記

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記事一覧

「観客」と「映画批評」について

「観客」と「映画批評」について

大金と時間をかければ、大衆が面白がる「娯楽」が作られる。だが、芸術は本質的にバカの面倒を見る必要がない。

このテキストにおける映画というのは、視聴覚的な表象手段としての総合芸術を意味する。

芸術を学ぶ必要話題の映画が上映されれば多くの人々が駆けつけ、家ではネットフリックスで映画を見ることはあくまで普通のことである。しかし、世の中のほとんどは「映画」を知ろうとはしない。大衆的な娯楽として、自分勝

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映画予告編の美学

映画予告編の美学

私はあまり予告編を見ない。最近の予告編は専門の制作プロダクションが配給会社の依頼を受けて作っていることが多く、往々にして配給会社のエゴが含まれているからだ。しかし、映画館に行けば自分の意志とは別にそれを見ざるを得ないこともあり、「ああ、これは面白そうだ」などと思わず呟いてしまうこともある。この記事では、予告編と映画本編を切り離して考え、私が好きな予告編をそれ単体の作品として見つめることでその魅力を

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光という神話について

光という神話について

『地獄の黙示録』(1979) には、何度見ても思わず目頭が熱くなってしまうシーンが有る。アメリカ兵の慰問のために、プレイメイトがヘリコプターに乗って訪問する有名なシーンなのだが、ここで問題にしたいのは戦場における休息といったテーマ性でもなく、"Suzie Q"の時代性でもない。下の動画にもあるような、一瞬差し込む光がいかに神話的であるか、という話題である。フィルムの上の光と影の明滅こそが映画になる

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採点不能

採点不能

教科書に従って、セオリー通りに撮ったような"正しい"映画というのがある。技術が上手い、構図が良い、必要な要素が含まれている、脚本の序破急など。私は、そんな教科書に載っているような映画理論を駆使して作られた映画を退屈に感じてしまう。批判的に映画と対峙する時、それは単なる"採点作業"になってしまう。"正しい"映画、すなわち傑作は十分に素晴らしいが、刺激のない体験である。そんな"傑作"は、作品ではなく、

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京都、あるいは、美

京都、あるいは、美

精神と言語の自律性大学をもうすぐ卒業する。4年間の京都での生活が終わるとき、自分が志向してきたものを振り返ってみれば、なにか感傷めいた心の動きを覚えてしまう。志向してきたもの、それは、人脈を広げることでもなく、専門の勉強に邁進するでもなく、音楽と映画などの芸術だけで成り立つ世界、すなわち、「精神」の世界の自律性を、この手で掴もうとする姿勢。いわゆる「微笑しつつ無意識な無言の人生に君臨している、精神

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電車に揺られながら『ソーシャル・ネットワーク』についてふと考える

電車に揺られながら『ソーシャル・ネットワーク』についてふと考える

映画としてどれほどの瑕疵があろうとも、狂的に好きな映画というのは誰にでもあるものだと思う。私にとってのそれは『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)であるのだが、ここ数日の間、ふと思い出すことがあり、何度かクリップを見返していた。

新生活が始まる時、自己紹介をする機会は非常に多い。趣味は何ですか、と問われれば、「サウナ」と答えるのはどうも下品で、「散歩」だと答えれば間の抜けたように思われそうで

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初めてシネマヴェーラ渋谷を訪れたことの感動

『アメリカ映画史上の女性先駆者たち』という特集に興味があったが、なかなか時間を取れず、どこかもどかしい気持ちを抱えたまま気づけば4月も半分を過ぎた。今日丁度よくまとまった時間が空いたので、ふとシネマヴェーラ渋谷まで歩いてみようと思い立った。おそらく蓮實重彦のインタビューか何かで見たのだろう、シネマヴェーラ渋谷の名前は前から知っていたので、随分と気になってはいたし、極めてエキサイティングな特集にまさ

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今年に入ってから読んだ本を振り返ってみる

表題の通りである。以下に列挙する。

トポロジカル物質とは何か 長谷川修二

じっくり派もお手軽派も必ず得する! NISA 入門

次世代半導体素材 GaNの挑戦 天野浩

あなたにもわかる相対性理論 茂木健一郎

マイクロ波技術 阿部英太郎

統計でウソをつく法 ダレル・バフ

それは本とは呼ばないだろうと叱られそうな気もするが。2022年に入ってから読んだ本がこれだけかと、自分に対してどこか失

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