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デンマークが選んだ国家戦略 〜 IMD国際競争ランキング(2)N52

 日本人にとってデンマークと関わりを持つことはLEGOを除いて稀有な出来事だ。日本で人気のあるH&MもムーミンもIKEAもNOKIAもSpotifyもマリメッコもフィンランドやスウェーデンの企業だ。そのデンマークが今年のIMD国際競争ランキングで堂々2位にランクインされたその秘訣を紹介したい。

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 Wikipediaによると人口は582万人で世界114位(*1)、GDP per Capitaは$63,829(*2)で世界6位、面積42,933 km2は世界130位(*3)と小国ながらとても生産性が高い国であることがわかる。ちょうど北海道の半分くらいの面積で人口も北海道より1割くらい多いくらいだ。

 そんな日本人には馴染みのないデンマークが2位に選ばれた要因はなんだろうか。特にBusiness Efficiencyが2位、Infrastructureが1位と顕著に高く評価されていることに注目したい。全体ランキング1位のシンガポールがBusiness Efficiencyが6位、Infrastructureが7位だったことを考えるとデンマークはこの分野で圧倒的な優位性を構築していることがわかる。特にBusiness Efficiencyが55位と出遅れている日本は学ぶことがたくさんあるはずだ。 

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 さて、私のデンマークとの接点は海外のM&Aの機会を探る際にデンマーク政府の投資部門と知り合う機会があり投資案件の紹介およびデューデリジェンスの支援をいただいたことがきっかけだ。その際にデンマークという国の選んだ戦略について教えていただいた。

 デンマークの戦略は「デンマークに住む人々に高度な仕事を残し、資産(企業やIP)を残さない」という選択だ。デンマークは給与が高く高学歴の人が好むR&Dの仕事を優遇しており、その仕事を維持発展させることこそその国に住む人の幸せと考えた。だからR&Dで新しい発明やスタートアップで芽が出るとあるいは芽が出なくでも高価に買収してもらえる外資資本が現れると売却をしてしまう。むしろ国がそれを斡旋しているのだ。日本人や日本企業にとって外国企業に売却をすることは最もメンツが潰れる行為と思う人は多いと思うが、デンマークではむしろ成功者として讃えられる。せっかく生み出した発明や企業を躊躇なく海外に売り出してしまうという発想こそユニークな戦略であり、世界2位の国際競争力評価を受けた競争力の源泉である。

 したがって常にR&Dの仕事が恒常的に存在し、世界中から優秀なR&D人材が集まる(デンマークパスポートを持っている人に固執せず外部から優秀な人材を集めることでよりデンマークという土地がイノベーションセンターになることを描いている。まさにこれが高度外国人材戦略である)。

 このFDI(外国資本の投資)-> R&D仕事の質と量増加 -> 世界から優秀な人材の集約という正のサイクルを回すことでデンマークは豊かな国として機能している。小国ゆえに選ぶことができる戦略ではあるが、大国はデンマークの取る戦略を前提に自らの手を打つ必要があるはずだ(つまり、それでもシリコンバレーは世界No1のイノベーションセンターである続ける所以だ)。 

 ちなみに国民の学力は圧倒的に高い(ちなみにIMDのEducationは世界No1と評価されている)。これは個人的かつ部分的な経験だが、デンマーク人は極めて頭が良かったし、学力はとても高かった。デンマークは高度な学力と高度な仕事を維持向上させれば国は発展するという良い参考モデルだろう。 

*1 "Population and population projections". Statistics Denmark. Archived from the original on 30 October 2018. Retrieved 12 February 2020. 

 *2 International Monetary Fund. Archived from the original on 18 October 2018. Retrieved 27 October 2018. 

 *3 "Area by region – StatBank Denmark – data and statistics". Archived from the original on 5 April 2016. Retrieved 21 April 2016.  

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