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パリと名古屋の食文化 N71

 昔、会社の後輩が突然会社を辞めて料理人になると言い出した。働きはじめて3年くらい過ぎようとしていた時期だったが、確かにサラリーマンより料理人の方が向いていると思えたこともあり、暖かく応援をした。その後、彼は名門料理学校に入学して、その後フランスに留学をする。将来はイタリアレストランをやるのが夢だと彼は言った。  

 イタリア料理ならイタリアに留学すべきだと思うところだが、彼曰くフランス料理は複雑でイタリア料理はシンプルだから、フランス料理を学べばイタリア料理も作ることができるとのことだった。この説が彼の自説によるものなのから料理学校で一般的な考えなのかは知らない。結局、帰国して東京の郊外でイタリア料理店を開業した。そしてその後業態を変えてラーメン屋だかカレー屋だかを都内に開業したと噂を聞いた。結構な人気の店らしい。彼の性格からするとNOTEをやっていると思う。  

 イタリア料理がシンプルな理由は素材が新鮮で良いからだそうだ。トマトとガーリックとオリーブオイルで味付けをすれば、どんなものでも美味しく仕上がる。言い換えるとフランス料理が複雑な理由は素材が新鮮ではないからだ。したがって必然的にソース文化が育ち、(悪い)素材の上に味付のしっかりしたソースを載せることで新たな味わいを見出すような喜びに調理方法が発展したという説を国際的な会計士の先生から教わった。これも自説の可能性はあるが。  

 そこで思いついたのが、名古屋だ。名古屋は日本を代表するソース文化の地域だ。八丁味噌(厳密にいうと三河だが)、酢(ミツカン酢本社は愛知県半田市)、みりん(三河みりん)、ケチャップ(カゴメ)、味噌カツ、あんかけスパなど枚挙にいとまがない。  

 そう名古屋も食材が恐ろしく悪い。とにかくこれでもかというほど調味料をかけてご飯を食べる文化はこのソース文化から来ている。そしてあんかけスパをはじめとする食事のトンチンカンな食べ方も食材よりもソースを重視した結果だろう。  Wikipediaには「名古屋めし(なごやめし)とは、グルメ激戦区として知られる愛知県名古屋市の名物料理を指す造語である。・・・全国的に知られているメニューに更なるアレンジを利かせたアイデア料理が特徴で、味付けが濃厚でクセが強い点で共通している」とあるが、まさにその通りだ。

 こう言った観点で食事を眺めるとその地域ごとの地理的な特性が見えてくる。名古屋とは疎遠な人からはパリと一緒にするなと言われるかもしれないが、尾張人は派手好きで洋服に一番お金を使う人たちでもある(昔名古屋のLVMH店舗が日本だか世界だかで売上No1だったと伺った)。 

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