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【夜間中学へようこそ】子になぜ勉強しないといけないか問われたら

トップ画はコミック版『夜間中学へようこそ』の表紙より。
原作:山本悦子さん
漫画:沢音千尋さん
双葉社


あなたは、
「なんで勉強しないといけないの?」

…と、生徒や我が子に聞かれたら、ちゃんと答えられますか?
今日は11/29、いいブックの日です。
そんな日にぴったりの、この問いへの答えを考えるヒントとなる1冊をご紹介します。

『夜間中学へようこそ』(山本悦子さん著、岩崎書店)児童文学。

🍏夜間中学とは?

中学校夜間学級(いわゆる夜間中学)とは、市町村や都道府県が設置する中学校において、夜の時間帯等に授業が行われる公立中学校のことをいいます。
文科省のホームページによれば現時点で15都道府県に40校が設置されており、夜間中学が少なくとも各都道府県・指定都市に1校は設置されるよう、その設置を促進しているそうです。(←ホントか?😝)
ちなみに40校のうち8校が東京都にあります。

夜間中学に通学するのは、主に次のような方々です。
🍎戦後の混乱期に、十分に義務教育を受けられなかった高齢者
🍎不登校などの理由で、形式的には卒業したが学び直しを希望する方
🍎十分な教育を受ける機会のないまま日本にやってきた外国人の方

本書『夜間中学へようこそ』の登場人物たちも、まさに上に挙げたようなタイプの方々です。

🍏見どころ

「わたしも4月から学校だから」ある日突然、おばあちゃんが宣言します。
孫で中学1年生の優菜ゆうな は、ひょんなことからおばあちゃんとともに夜間中学へ通うことになり、知らない世界へ足を踏み入れます。
それは、かけがえのない日々の始まりでした。

おばあちゃんのクラスは、おばあちゃんを含めたった4人しかいません。
🍎おばあちゃんのように、戦争経験者であるおじいさんの「松本さん」。
🍎17歳のかわいい女の子「ミオちゃん」。
🍎何かと悪態をつく16歳の男の子「和馬くん」。
🍎そしておばあちゃん。

他のクラスには、いろいろなタイプの外国人がたくさんいます。
みんな、それぞれの事情を抱えて、夜間中学へ来ています。

本書の特徴の一つは、現役中学生の目線で夜間中学が語られるところです。
例えば、優菜の通う昼間の中学では授業中の集中力がイマイチで、授業中に手紙が回ってきたり、こっそり携帯をいじったりしている生徒がたくさんいます。

それを当たり前だと思っていた優菜が、夜間中学で、生徒のみんなが熱心に授業に取り組む姿を見てとてもびっくりするシーンがあります。
なかなか問題提起と示唆に富む印象的な場面です。

🍏戦争について

本書は、戦争の悲惨さについても多くを教えてくれます。
少し長くなりますが、おばあちゃんがなぜ子ども時代に学校に通えなかったのかを孫の優菜に語る場面を引用します。
(改行はアヤによる)

(引用開始)
「家が貧しくて、働いてる子どもだっていた。
子どもも働き手だったんだ。
働かなきゃ食べていけない時代だったんだよ」

(※中略)

「戦争が終わったからっていって、1年や2年で元どおりになるなんてことはなかったんだよ。
死んじゃった人は帰ってこないしね。
父親は戦争に行って、そのまま帰って来なかったんだ。
ゆうなは知らないと思うけど、あたしにはふたつ下の弟がいてね。
母親がひとりで、あたしたちと体の悪いおばあさんをみてくれたんだよ。
母親が働きに行っている間、洗濯したり、ごはんを炊いたり、弟のお守りをしたり、おばあさんの世話をしたりするのは、あたしの役目だったんだ」

(※中略。おばあちゃんが当時5歳だったことが語られる。)

「ごはんひとつ炊くのも、今とは比べものにならないくらい手間がかかったんだよ。
うちは貧しくてガスなんてなかったからさ、木で炊くんだよ。かまどでね。
ごはんを炊いて、お汁を作って」

(※中略)

「洗濯でもなんでも、機械なんてないからさ、みんな手洗いで。
冬はつらかったよ。弟はぐずぐず泣いてばかりだし。
ちょっとでも時間があるときは、くず拾いをしたんだ。
釘とかネジとかを拾って『くず屋さん』に持って行くと、お金をくれるんだ。
農家に手伝いにも行った。
農家には、わたしと同じように学校に行かないで働いている子が何人もいたよ」

(※中略)

「あたしはね、学校に行くより、弟の世話をしたり、ごはんを作ったりしてるほうがよかったんだよ。
合間を見て働くこともつらくなかった。
自分が家族を支えていると思うと、うれしいくらいだった。
ずっと、そう思ってた。
でもね、あるとき、ごはんを炊きながら、炎を見てたんだ。
めらめら薪が燃える様子をさ。
そしたら、急に涙がぽろぽろ落ちてきてさ。
気がついたらおいおい泣いてた。
あのとき、なんで泣いたのか自分でもわからなかったけど、もしかしたら、胸の奥のほうではつらかったのかもしれないねえ」

(引用終わり)

いかがでしょうか。涙なしには読めないと思います😭

ちなみに私が本書を知ったきっかけは、家庭教師の関係で、和光中学が入試でこの部分を出題していたのを見たことでした。
さすがは和光、良い目の付け処です。

そしてコミック版『夜間中学へようこそ』の初出は、なんとしんぶん赤旗の日曜版でした🚩
(2019年6月30日号~12月22日号)
和光中学だけでなく日本共産党も、やっぱり目の付け処が良い!✨

戦争は、決して美化して描いてはならぬものです。
本書に出てくるおばあちゃんのように、戦後の混乱期で十分な教育を受けられず、小学校で学習する漢字を読んだり書いたりできない、というご高齢の方は実はとても多いのです。

また、これからの日本は多文化・多民族な国家となることは不可避でしょうから、ヘイトやレイシズムは撲滅される必要があります。
そのためには、さまざまなオリジン(起源)を持った人々が共に学べる場である、夜間中学(や夜間定時制高校)の重要性はどんどん増していくことは間違いないでしょう。

🍏「優菜」と「ゆうな」

上に引用したおばあちゃんのセリフ中で、「ゆうな」とひらがな表記だったことにお気づきでしょうか。
これにも重要な意味があります。

あんまりネタバレしてもアレなのでボカシておきますけれども、孫の名前を初めて漢字で書けるようになったおばあちゃんの喜ぶ姿をぜひ想像してみてください。

教科書的な学びの他にも、個性的でそれぞれの事情を抱えた異年齢・異国籍の集団が、互いに交流することで人間的に広く深く学び成長していく姿はとても泣けますし勉強になります。
超おススメの小説&マンガ。
もっと広く世に知られるべき。
ぜひ読んでみてください!
🙇‍♀️💕

🍏おわりに なぜ勉強しないといけないのか

これは問いの立て方が本来間違っていて、勉強は「しなければならない」のではなく「したほうが良い」性質のものです。

実は、勉強ができるというのはとても幸せなことです。
アフリカなど、世界には勉強したくても勉強できない子ども達がたくさん存在しています。

「義務教育」という言葉が独り歩きしていますがこれは子の「勉強できる」という権利を守るために、親に「子に普通教育を受けさせる」義務を課したものです。
児童・生徒を虐待や強制労働から守り、ちゃんと教育が受けられるようにしようということです。

さて日本人は勉強を以下のように捉えがちですが、完全に間違っていると思います。
🙅‍♀️嫌なもの。できればやりたくない、つまらないもの。
🙅‍♀️歯を食いしばって、苦しみに耐えながらやるところに価値がある。
🙅‍♀️人と競うためのもの。テストや受験のためにやるもの。

酷い教師になると、例えば忘れ物をした罰として漢字や計算のプリントを課したりしています。
勉強は罰としてやらされるものではなく、楽しくて自らやりたくなるものです。

試験に出ることには興味を持つけどそうでないことには興味を持たない、という方も散見されます。
そのような態度は結局は試験対策としてもマイナスに作用します。

『夜間中学へようこそ』を読めば、ヒトはなぜ勉強をするのか、勉強の意義とおもしろさをとてもよく理解することができます。

勉強は入試やテストのためにやるものではありません。
生活や恋愛などに役立って、人生が潤って幸福度が増してこそ勉強です。
受験生も先生方も保護者の方も、そのことを決して忘れないでください。

家庭教師の経験から私がつくづく思うことがあります。
私は、子どもには「勉強しろ」と言いながら自分は内容をまったくわかっていないという大人は大嫌いです😝
我が子や地域の子ども達と勉強のことについて語り合えるように、大人自身がまず勉強を楽しむ必要があると痛感します。

「勉強なんか小学校までで十分」と公言して憚らない麻生副総理。
「高校生には三角関数より投資を学ばせるべき」と宣う国会議員。

知性や学術が軽視、いえ、軽視を通り越して蔑視されがちな今の日本。
こういうときだからこそ、本書を読んで勉強の意義とおもしろさをみんなで実感できたらステキな世の中になると思いました。


では、今回はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございました🙇‍♀️
今後もがんばりますので、励ましのスキ・コメント・フォロー・サポート・おススメ・記事の拡散などしていただけますとめっちゃ嬉しいです。
フォローは100%返します。
今後とも有益な情報発信に努めますので、応援よろしくお願いします🙇‍♀️

もう少しでnote公式による読書感想文コンテストも終わりますが、これからも皆さまと本やStudyについて語り合えますことを心待ちにしています🍏
またねー!
💕

Passing the exam is not an end itself but just a means to an end.
(テストに合格することはそれ自体が目的ではなく、目的のための手段に過ぎない。)

🌸🍃このnoteの執筆者、Book Partnerは、わたくし、コぺル&アヤでした🐣💕


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