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夏休みを感じられる映画 (ベルトルッチ作品「魅せられて」)

 「魅せられて」(1996年 ベルトルッチ 監督作品)を再見した。朝5時前に起きた息子が、このDVDを何気なく持ってきたから、まだ朝は曇っていてそんなに日差しも入ってなかったし、スクリーンで見てみた。トスカーナの田舎の風景が目に優しく、なかなか外に出られないこんな日々でも夏休みの気分に浸らせてくれた。

 先日もここで紹介した映画なんだけれども、この映画は見れば見るほど興味深い映画だったと気づく。たぶん最初に見たときは高校生の時とかなんだけれども、その時にはただのティーンの恋愛映画としてしか見ていなかったと思う。

 あまり自分の美しさに自覚的でないような、19歳のリヴ・タイラーと、死期が迫っているジェレミー・アイアンの関係は、「ラスト・タンゴ・イン・パリ」(1972年)のマーロン・ブランドとマリア・シュナイダーの関係の反復のようだし、このジェレミー・アイアンのリヴ・タイラーの美しさの虜になっている様子は、ヴィスコンティの「ベニスに死す」のアッシェンバッハとタッジオの関係のようでもある。(タッジオは自分の美しさに子供ながらに自覚はありそうだったけれども)

 ヴィスコンティとベルトルッチ の関係性というのはあまり聞いたことはないのだけれども、作品の傾向がたまに似ているなと感じる時がある。全部ではもちろんないけれども、上流階級の退廃的な生活を描くような趣向も少し似ているし、2人とも自国ではない国の歴史的大作を作っていたり。あと家族の崩壊と、家族の不思議な関係を描いたり。そういえば、本作でのジャン・マレーの使い方も私としてはヴィスコンティの「白夜」とかぶる。本作でジャン・マレーは夢遊病者の芸術家の役どころだ。二人ともジャン・コクトーを崇拝していたのは共通するだろう。

 そういえばそういえば、全然関係ないのだけれども、リヴ・タイラーが自分の本当のお父さんなのではないかと疑う人の中で、ベトナム戦争で戦っていたイタリア人がいる。これは珍しいキャラクターだと思う。イタリアでベトナム戦争経験者というのは滅多にいない。そして彼はきっと少しネジが足りないタイプの男なんだと思うのだけれども、ベトナム戦争に充実感、輝かしさを覚えていて、できれば再び参戦したいと思っているような人である。戦争がやはり彼をこうしてしまったのだと思う。きっとだからあれ以上の満ち足りた気分を味わえなくて、女と遊びまくっている感じの人だと思う。これを見ているとコッポラの「地獄の黙示録」を思い出す。ベルトルッチが意識していたのかどうかは分からないけれども。

「暗殺のオペラ」のような父親探しのストーリーも久しぶりに復活している。主人公が女性というのは彼の映画には珍しいかもしれない。

 この映画は実はベルトルッチが久しぶりにイタリアを舞台にした映画である。イタリア映画監督として戻ってきたベルトルッチ。しかし登場人物はあくまで米国、英国人たちで、これはベルトルッチがいつも感じていることの裏返しだったのではないかと思う。この米・英国人たちはこの地を芸術が宿っている地を買いかぶり、野原で男女問わず裸で生活したりしている。古代ギリシャ人かなんかのつもりなの?ひどく不自然である。

「私たちは冒険心がないから、今まで不倫なんてしたことない」

なんて言っていたにもかかわらず、なりふり構わず裸で余暇を楽しんでいるのである。ここに私なんかは矛盾を感じてしまう。

そんな体に合わない生活をしているから、終盤で突如として

「私もうここには住めない」

といいだすのである。故郷はここと違っていつも薄暗くて、年中雨が降っているけれども、けれども帰りたいの、と打ち明ける。ベルトルッチ はどういう思いでこのトスカーナで栄華を撮り出したのだろうか。なにかホッとしていただろうか。

私も死期が迫った頃また見てみたいかな。

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以前書いた「魅せられて」の記事はこちら↓


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夏らしいレシピとして、きゅうりがたくさんあって困るとき、私はザジッキ(Tzatziki)を作ります。これはギリシャ料理なのに、イタリア人結構作りますよね?私の周りはそうです。

◉Ricetta

Tzatziki

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<材料>

・きゅうり 1本

・にんにく 1かけら

・ヨーグルト 大匙5杯

・オリーブオイル 大匙2杯

・ワインビネガー 少々

<作り方>

1.きゅうりを全部すりおろします。ニンニクもすりおろします。

2.ヨーグルトとオリーブオイル、ワインビネガーと混ぜて味を調整してできあがり。

Buon Appetito!

美味しいパンと召し上がれ!


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