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65)シーフード(海産食品)が人類の知能を発達させた

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術65

ミトコンドリアを活性化して体を若返らせる医薬品やサプリメントを解説しています。

【約38億年前に地球上に生物が誕生した】

 生物とは生命活動を行うことができる生き物です。「外界と膜で仕切られた細胞からできている」、「DNAを持って自分の複製を作ることができる」、「外界から栄養分を取り入れてエネルギーを産生し、物質を分解したり合成する代謝を行う」といった特徴を持っています。さらに、「進化することができる」という特徴を加える意見もあります。


地球が誕生したのは約46億年前で、その地球に最初の生命(=生物)が出現するのは8億年後の今から約38億年前です。最初の生物は、はっきりした核を持たない(核膜をもった核が無い)原核生物です。これらの生物は、海の中を漂う有機物を利用し、酸素を使わずに生息していました。


約25億年前に光合成を行う藍藻(シアノバクテリア)が登場します。それまで地球上には酸素は存在しませんでしたが、そこに太陽光エネルギーで無機物である二酸化炭素と水からグルコース(ブドウ糖)などの有機物を作り出し、酸素を放出するという光合成を行う真正細菌のシアノバクテリアが出現しました。それまで無酸素状態だった地球大気に大量の酸素分子が放出され、嫌気性生物の多くが絶滅し、酸素を利用した呼吸をする微生物(α-プロテオバクテリア)も誕生しました。


真核細胞の葉緑体やミトコンドリアは、ある種の細菌が原始真核細胞に取り込まれて共生するようになって形成されたものです。光合成を行うシアノバクテリアが原始真核生物と共生して葉緑体となりました。葉緑体は植物に存在する細胞内小器官です。光合成が主要な機能ですが、その他に窒素代謝、アミノ酸合成、脂質合成、色素合成など、植物細胞における代謝の中心となっています。


酸素を用いて呼吸を行うα-プロテオバクテリアが原始真核生物に共生してミトコンドリアになりました。ミトコンドリアは酸素を使って細胞に必要なエネルギーを産生する働きを担っています。
 

原始真核生物はシアノバクテリアやα-プロテオバクテリアを餌として捕食していたのですが、そのうちに寄生して細胞内小器官へと進化し、共生するようになったのです。

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図:約46億年前に地球が誕生し、約38億年前に生命(=生物)が出現した(①)。約25億年前に光合成を行う藍藻(シアノバクテリア)が登場し、地球大気に大量の酸素分子が放出され(②)、酸素を利用した呼吸をする微生物(α-プロテオバクテリア)が誕生した(③)。α-プロテオバクテリアが原始真核生物に細胞内共生して(④)ミトコンドリアになった(⑤)。光合成を行うシアノバクテリアが原始真核生物に共生して(⑥)、葉緑体となった(⑦)。



ミトコンドリアや葉緑体が動物や植物の細胞に細胞内小器官として形成された後、地球上では生物が誕生と絶滅を繰り返しながら進化していきます。
 

約5億4000万年前には生物が爆発的に多様化し、現生生物の直接的な祖先が誕生しました(カンブリア爆発)。
約2億5千百万年前には、地球規模の激烈な環境変動により生物が大量絶滅しました(ペルム紀・三畳紀絶滅)。
約6600万年前に起きた小惑星衝突を引き金とする環境の変化によって恐竜などが大量絶滅しました(白亜紀・第三紀絶滅)。

その後、哺乳類が進化し繁栄しました。


【人間の脳は魚を食べて大きくなった】

 人類はオランウータンやゴリラやチンパンジーと共通の祖先から進化しました。動物進化の系統樹において、約1300万年前にオランウータン、約650万年前にゴリラ、約490万年前にチンパンジーが人類から分岐したと考えられています。
 

人類の特徴は他の動物と比べて知能が高いことですが、知能の発達には脳が大きくなることが必須です。


チンパンジーの脳容積は400cc程度で、現代人の成人男性の脳容積の平均は約1350ccです。チンパンジーと同程度の脳容積しかなかった初期人類から、高度の知能をもった現生人類に進化する過程で脳容積は3倍以上に増えました。チンパンジーの脳容積は500万年前と同じで、人類の脳容積が3倍も増えた理由は、人類が動物性食糧を多く摂取するようになったからです。特にシーフードを食べるようになって脳が大きくなったと考えられています。 シーフード(seafood)は 魚介類や海藻など海産物を主とする食品です。脳が大きくなるためにはドコサヘキサエン酸(DHA)が必要なのですが、森やサバンナにはDHAを含む食品は無いためです。


脳組織の50から60%は脂質から構成されていますが、このうち約3分の1はアラキドン酸やドコサヘキサエン酸のような多価不飽和脂肪酸です。アラキドン酸は必須脂肪酸で人間は体内で合成できません。ドコサヘキサン酸は同じω3系不飽和脂肪酸のα-リノレン酸から体内で変換されることになっていますが、その効率は極めて悪いので、最近ではドコサヘキサエン酸も必須脂肪酸に分類されています。 
 

つまり、脳の成長に必要なアラキドン酸とドコサヘキサエン酸は食事から摂取しなければなりませんが、この2つの脂肪酸は植物性食物には少ししか含まれていません。アラキドン酸は肉、ドコサヘキサエン酸は魚の脂に多く含まれています。


オランウータンやゴリラやチンパンジーのような類人猿から初期人類(猿人)にいたる1000万年以上の年月において、私たちの祖先はアフリカの森林に生息し、主に植物性の食物を食べていました。
 

約440万年前に現在のエチオピアの地域のジャングル(密林)に生息していた初期人類のラミドゥス猿人の食事は、木の葉や果実やベリー類など軟らかい植物性食物が主体でした。歯の構造から硬い植物を食べるようには適応していなかったようです。

 

約400万年〜200万年前に生存したアウストラロピテクスは二足歩行を行うようになり、密林からより開けた草原で住むようになります。アフリカ東部や南部のサバンナ(乾期と雨期のある熱帯に分布する疎林と灌木を交えた熱帯長草草原地帯)の環境に適応し、歯が発達して硬い殻をもつ大きな種子や地下の根なども食べるようになります。植物性食物を中心にして、さらに小動物の狩猟や、動物の死肉や肉食獣の食べ残しから動物質性食糧を得るようになりました。このような食生活が250万年くらい前から起こった気候の変化で変わっていきます。


人類が狩猟を開始する直接のきっかけは250万年前くらいから起こってきた気候や環境の変化です。このころから氷河期に移行し、地球上の気温が低下していき、アフリカのジャングルは縮小し、草原やサバンナに変化していったからです。
 

氷期の間は地球全体が乾燥し、降雨量が少なくなると大きな樹木は育たなくなり、草原が増えてきます。そこに草食動物が増え、草食動物を獲物とする大型の肉食動物が棲息するようになります。人類はそのような獣を狩猟によって食糧にしてきました。動物以外にも、漁によって魚介類も多く摂取しています。間氷期になって気候が暖かくなって樹木が成長すると木の実や果物なども増えますが、基本的には肉や魚など動物性の食糧が半分以上を占めていたようです。

氷河期というのは地球の気候が長期にわたって寒冷化する期間で、北アメリカやヨーロッパ大陸に氷床が拡大し、アジアやアフリカも気温が低下して涼しくなり、熱帯性の密林は縮小していきます。氷河期は数万年続いて再び温かい気候に戻ります。氷期と氷期の間を間氷期と呼びます。


約250万年以降、4万年から10万年の周期で氷期と間氷期を繰り返しています。最後の氷期が終わったのが約1万年前で現在は間氷期にあたります。ホモ属(Homo)が現れたのは今から250万年〜200万年前です。ホモ属は現代の人類(ホモ・サピエンス)と同じ属です。  
この頃から人類は石器を道具として利用し、狩猟や肉食獣の食べ残しから得た動物性の食糧が増えてきます。さらに、160万年前くらいから人類は火を使うようになり、食物を火で加熱することによって栄養の吸収が良くなります。150万年前に住んでいたホモ・エレクトスは積極的に狩猟を行っていました。 


このように初期人類の食事は植物性食糧由来の糖質が多いものでしたが、250万年くらい前から動物性食糧が増えるようになり、少なくとも150万年前くらいから農耕が始まる1万年前くらいまでは、低糖質・高蛋白食であったことになります。このような食事が人類を進化させました。
約1万年前に最後の氷河期が終わって地球が温暖化して農耕と牧畜が始まります。農耕によって穀物の摂取が増えました。糖質の摂取量は現代人では1日250から400グラム程度ですが、狩猟採集時代の糖質摂取量は1日10から125グラムと推定されています。


農耕が始まってから、成人の平均身長は減少しているという報告があります。また、骨粗しょう症や虫歯も増えています。そして、農耕が始まって人類の歴史の中ではじめて脳の重量が減少していることが報告されています。現代人の脳容積は、2万数千年前までヨーロッパに存在したネアンデルタール人の脳容積より10%程度小さいことが明らかになっています。その理由としてタンパク質や不飽和脂肪酸の摂取量の減少が指摘されています。農耕によって穀物が豊富になり、糖質が増えた分、肉や脂肪の摂取量が減ったからです。

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図:人類の祖先の類猿人から初期人類にかけての数百万年間は主に森林に生息して木の葉や果実などの植物性食糧が主体であった。約250万年くらい前から氷河期に入ると森林が縮小し人類は狩猟採集によって食糧を得るようになり、動物性の食事が主体になった。約1万年前に最後の氷河期が終わると農耕や牧畜が行われるようになった。産業革命後(19世紀以降)は精製した糖質の摂取が増え、さらに1970年代以降は砂糖や異性化糖などの単純糖質の摂取量が増加した。人類は肉とシーフードの摂取が増えてから脳が大きくなり、知能が発達した。
近年における単純糖質の摂取過多は、肥満や糖尿病やメタボリック症候群やがんを増やしている。



【細胞は脂質二重層で包まれている】

 体を構成する個々の細胞は細胞膜で囲まれています。細胞膜は脂質二重層によりできており、この細胞膜によって細胞外と細胞内が分けられています。脂質二重層はリン脂質分子が膜状に並んで作られます。リン脂質分子は親水性のリン酸部分と、疎水性の2個の脂肪酸が尻尾のように繋がった構造をしています。

細胞の内外は主に水で満たされているので、リン脂質分子は親水性のリン酸部分(頭部)を外側に、水に反発する疎水性の脂肪酸部分(尾部)を内側にして、7.5ナノメートル(nm)程度の厚さの2重の層を作って並びます(図)。

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図:リン脂質は親水性のリン酸部分(頭部)と、疎水性の脂肪酸部分(尾部)から構成される。疎水性の尾部は水によってはじかれ、互いに引き付けられて内側に並び、親水性の頭部の領域が水に接する外側に露出して膜状の二重層を形成する。この脂質二重層が細胞膜の基本構造になる。


細胞の内外を分ける細胞膜は脂質二重層を土台にして、その中にタンパク質粒子が浮遊するように移動しています。脂質二重層に浮かぶタンパク質粒子は、受容体や物質を通すチャネルなどとして働きます。細胞膜に埋め込まれたタンパク質や脂質に糖鎖が結合し、細胞の識別や情報交換のマーカーとして細胞機能に影響を与えています。(図)

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図:細胞膜は脂質の二重膜の海に、膜タンパク質が氷山のように頭を少し出して浮かんだような構造をしている。この構造モデルを流動モザイクモデル(fluid mosaic model)と呼んでいる。



【多価不飽和脂肪酸は脂質二重層の流動性を高める】

 脂肪は、それを構成している脂肪酸の構造の違いによって融点などの化学的性状が異なってきます。二重結合をもつ不飽和脂肪酸の多い脂肪は常温で液状になりますが、飽和脂肪酸になると固まりやすくなります。固まりやすい脂肪を多く摂取すると血液がドロドロになって動脈硬化が起こりやすくなります。
 

前述のように細胞膜は流動性を持ち、脂質や膜タンパク質は動いています。この流動性は膜の構成物質で決まります。特にリン脂質を構成する脂肪酸の不飽和度(二重結合の数)に影響されます。不飽和度が高まるほど脂肪酸の融点は低くなるためです。つまり、不飽和脂肪酸を多く含む細胞膜は流動性が高まります。

 

脂肪酸は、構造の違いにより「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2種類に分類できます。パルミチン酸(炭素数16)やステアリン酸(炭素数18)のように炭素と炭素の間に二重結合が全くない脂肪酸を飽和脂肪酸といい、二重結合がある脂肪酸を不飽和脂肪酸といいます。
 

不飽和脂肪酸のうち炭素の二重結合が一つのものを「一価不飽和脂肪酸」、2つ以上あるものを「多価不飽和脂肪酸」といいます。一般に、脂肪酸は炭素の数が多くなるほど融点(固体から液体に変化する温度)が高くなります。また、同じ炭素数の脂肪酸を比較した場合、二重結合の数が多くなるほど融点が低くなります。

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表:脂肪酸は炭素の数が多くなるほど融点(固体から液体に変化する温度)が高くなる。同じ炭素数の脂肪酸を比較した場合、二重結合の数が多くなるほど融点が低くなる。


原子は、他の原子と結合できる手を持ち、その数は原子毎に異なっています。炭素原子は、他の原子と結合できる手を4本持っています。炭素-炭素二重結合とは、2つの炭素原子どうしが互いに2本の手でつながっている状態のことをいい、「C=C」で表記します。

分子が接近すると分子間に引力のような力が働きます。この分子間引力をファンデルワールス力(van der Waals force)といいます。ファンデルワールス力は、分子間の距離が近づくほど強くなります。
 

飽和脂肪酸は炭素原子が直鎖状に並びます。まっすぐな棒状の構造なので、たくさんの分子が集まると、鉛筆を束ねた構造になります。したがって、ぎゅぎゅう詰めになるので、分子が動きにくくなり固体となります。ファンデルワールス力が強く働いて分子間の結合が強固になるためです。液体にするには熱を加えなければなりません。したがって、融点が高くなります。
 

不飽和脂肪酸は二重結合の部分でくの字に曲がった構造になります。分子が曲がっているため、分子を束ねると隙間の多い構造になり、分子間のファンデルワールス力は弱くなります。その結果、分子は動き回ることができ、融点が低下して液体になります。(図)

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図5:脂肪酸のステアリン酸とオレイン酸は、どちらも18個の炭素原子で構成される。 ステアリン酸は炭素結合が全て飽和しているが、オレイン酸は不飽和脂肪酸であり、1つのシス二重結合を含んでいる。ファンデルワールス力いよる分子間の引力による結合はステアリン酸の方がオレイン酸よりはるかに強くなる。その結果、ステアリン酸の融点は69.9 ℃であり、オレイン酸の13℃の融点よりも高くなっている。不飽和脂肪酸が豊富な細胞膜は、飽和脂肪酸が豊富な膜よりも流動性が高くなる。



植物油や魚油が液体なのは不飽和脂肪酸が多いためです。細胞膜に不飽和脂肪酸が多く含まれるほど、流動性が高くなります。
 

体内の隅々の組織に酸素を運ぶ赤血球は、赤血球自身の直径よりも細い毛細血管を通過できます。赤血球の細胞膜が柔軟で、変形する能力をもっているためで、これを赤血球変形能といいます。赤血球の細胞膜の飽和脂肪酸の割合が大きくなると細胞膜の流動性が低下し、赤血球変形能が低下し、体の隅々まで酸素が行き渡らなくなります。食事からの不飽和脂肪酸の摂取が多いと、組織の血液循環が良くなります。



【DHAは脳の働きを良くする】

 22個の炭素と6個の二重結合を持つドコサヘキサエン酸(DHA)は、膜に一般的に見られる最も長く、最も不飽和の脂肪酸です。DHAは網膜および脳組織に特に豊富に存在します。DHAは網膜および神経組織の働きに必須です。不十分な量のDHAは、視力や学習の不規則性からうつ病や自殺に至るまで、さまざまな異常に関連しています。


人間は、ほぼ同量のオメガ-3およびオメガ-6必須脂肪酸を含む食事を摂取して進化しました。しかし過去100〜150年の間に、トウモロコシ、ヒマワリの種、ベニバナの種、綿実、大豆からの植物油の摂取量が増加したため、オメガ-6脂肪酸の消費量が大幅に増加しました。
今日、西洋型食生活では、オメガ-6とオメガ-3の脂肪酸の比率は、従来の1〜2:1の範囲ではなく、約20〜30:1の範囲です。


魚油はオメガ3系不飽和脂肪酸のDHAとEPAが多いのですが、これは魚がDHAやEPAを合成しているわけではありません。DHAとEPAは微細藻類から由来します。つまり、ある種の微細藻類がDHAやEPAを合成し、それをプランクトンが食べ、プランクトンを小型魚が食べ、小型の魚が大型の魚(マグロ、カツオなど)に食べられるという食物連鎖によって大型魚にDHAとEPAが多く含まれることになります。それを人間が食べています。

温度が低下する海の中では、飽和脂肪酸が多い細胞膜は流動性が低下します。低温の環境でも細胞膜の流動性を維持するために藻類が高度多価不飽和脂肪酸を合成しているのかもしれません。

人類はオメガ3系多価不飽和脂肪酸を多く摂取することによって脳が発達し、高度な知能を獲得しました。発育期の子供にDHA/EPAの摂取を増やすと頭が良くなるというデータは多く報告されています。子供の知能を高めたければ、脂ののった魚を多く食べさせるか、DHAのサプリメントを摂取することは有効です。高齢者の認知機能低下の予防にも有効です。

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術 記事まとめ

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