ナイン・ストーリーズ Ⅸ ペッパーの憂鬱
ペッパーの憂鬱
私はね、いつもあの人の側にいるのよ、本当は。
彼女は私を思い出しては、いつも泣いてばかりいるけれど。
彼女は私を思い出さないように、私のことを考えないようにしているの。失礼しちゃうと思わない?
そんなことをしなくても、私はいつも彼女の側にいるし、彼女の足元やお気に入りのテーブルや私の爪痕のついたソファの上で、いつも彼女と一緒の時間を過ごしているのよ。
彼女が眠る時は、自慢の長いしっぽで寝てる彼女の顔をいつも撫でているし、彼女が帰れば足にすり寄ってお帰りな