記事一覧
【短編小説】長生きする方法
バーで働いている。
目の前の男から相談を受けた。
「長生きするためにはどうしたらいいかな…」と。
聞くと、親として息子には色々な選択肢を持たせてあげたいそうだ。
昔から不老不死の夢を見る人はいるし、長生きする方法も伝えてあげたいという。
「もちろん、運動、睡眠、食事が大切なことは知っている。だが、この社会ではそれを確保することはなかなか難しい…。私も手本を見せられない…。何か簡単で確実な方法はな
【創作ショートショート】ブーメラン発言道
何かを極めるのは難しい。
しかし、何かを極めなければ生きていけない環境では、そんなことを言っても仕方ない。
木登り、ゲーム、芸…みんなが知っているジャンルには、すでに天才がいて、太刀打ちできない。
逆にマイナーなジャンルなら…例えばオレンジを皮ごと早食いするとか?
だが、オレンジを手に入れるのも楽ではない。
彼はしばらく考え、ある案を思いついた。
時間もないし、さっそく実行することにした。
【短編小説】レベルアップ
「あなたがレベルアップしたいことは何ですか?」
帰りの電車の中にある広告に目が吸い寄せられた。
レベルアップ。
いい響きだ。人生は壮大なRPGゲーム、そう考えたら、レベル上げが必要に決まっている。
そして、ゲームであれば当然のことながら、レベルを上げれば、新しいエリアに行けるようになる。
実際のゲームと違うのは、死んだらゲームオーバーで、リプレイもできない。ハードゲームに心が燃えるぜ!
誰に教え
【短編小説】伝説の安心感
「へぃ、らっしゃい」
元気な大将の声に迎えられ、僕はカウンター席へと足を運んだ。
還暦を過ぎた、でも50歳前半に見える大将が、湯気の向こうで元気にラーメンを作っている。
「いつものだね」
と、確認のように声をかけられ、僕はうなずくが、大将はその反応を見る前に作り始めていた。
何しろ、僕が幼稚園の頃から通っているラーメン屋さんだ。
昔は家族で来ていたが、大学生となった今は一人で通っている。
目の
【創作ショートショート】無理無理グリム童話88
おばあさんの家に行った帰り道、赤ずきんが森の中を歩いていると、棺の前で嘆く7人の小人たちがいた。
大好きな白雪姫が死んでしまって、嘆いているのだ。
亡くなった時間を聞くと、ちょうど赤ずきんがオオカミに食べられて、三途の川の岸辺へ行っていたころだ。
それであれば、死んでいるのはおかしい。
その時間に死んでいたら、向こうで出会っているはずなのだから。
赤ずきんが白雪姫に触ると、喉に詰まっていたリンゴ
【創作ショートショート】グリム童話ATM
ある駄菓子屋が、グリム童話ATMを導入した。
親がATMを使うのを見て、子供たちも使いたいと騒ぎ、親が手に負えなくなっているそうだ。
グリム童話ATMからは、童話に出てくる食べ物を引き出すことができる。
価格も子供たちのお小遣いで選べるよう、10円〜100円のものだ。
もちろん、普通の自販機と違い、利息もつく。
10日で1割。ただし、最大でも30日間しか利息はつかない。
かしこい子供は、10
【短編小説】グリム童話銀行
※「#毎週ショートショートnote」として書き始めたのに、2000文字近くなってしまった作品です。。。
毎日残業で、食事と言えば味気のないコンビニ弁当。
「これじゃまるで、グリム童話で虐げられていたシンデレラだ」
そう思いながら、夜道を歩いていると、ポツンと一つ光っている建物がある。それはグリム童話銀行のATM店舗だった。
とつぜん、記憶がよみがえる。
いつの記憶か定かではないが、私はグリム童