恋愛エッセイ : 僕たちの世代の男は、奥さんが最初に作ってくれる夕食を楽しみにしていた

今は時代が変わり、男も料理を作るようになった。
僕たちの時代、これは僕の友人たちも同じだったが
結婚式を挙げて、新婚旅行から帰って来て新婚生活最初の夕食に奥さんが何を作ってくれるか、楽しみにしていた。
豪華な料理を期待していたわけではない。
どんな料理を作ってくれるのか、楽しみだった。

僕の奥さんはカレーが大好き、新婚生活初日の夕食に奥さんは茄子カレーを作ってくれた。
和風出しのひき肉のカレーの上に素揚げした茄子がのっていたのだが、初めて食べたが美味しいと思った。そして、その他に野菜サラダと奥さんの手作りのマシュマロヨーグルトがデザートに出て来た。  
マシュマロヨーグルトとは、ヨーグルトのなかに
マシュマロを入れ半日くらい冷蔵庫に入れておくと
マシュマロが半分溶けてまろやかな美味しいヨーグルトとなる。それ以上経つとマシュマロが全部溶けてしまうので、時間を逆算して奥さんはいつも作ってくれる。

僕の友人の奥さんは、最初の夕食に奥さん手作りの
ハンバーグのスープを出してくれたという。
友人は美味しかったと言っていた。

僕の先輩の奥さんは秋田出身の人、最初の夕食に
きりたんぽ鍋を作ってくれたという。
先輩は、きりたんぽ鍋を食べながら、秋田から長野までお嫁に来てくれた奥さんを大切にしようと思ったと言った。

大学の時の親友の1人は愛媛の出身だった。
その親友の奥さんは最初の夕食にいなり寿司を作ってくれたという。
関東のいなり寿司は握り寿司を大きくしたような形をしているが、関西のいなり寿司は三角形だ。
親友の奥さんは大学時代に知り合った埼玉出身の人
親友が東京でいなり寿司を食べる度に、三角やないいなり寿司なんて、いなり寿司やない、と言っていたのを奥さんは覚えていた。
だから最初の夕食に三角形のいなり寿司を作った。
親友はそのいなり寿司を見て、
「お前、三角のいなり寿司を作ってくれたんか、
お前、ホンマにワイの嫁さんになってくれたんやな。」
と言って食べたと言った。
そして、奥さんが作ってくれた三角形のいなり寿司を食べたら涙が出て来たと言った。

奥さんが作ってくれた茄子カレーを食べていると、
奥さんは、味が少しうすかった?と心配そうに言った。僕はそんなことないよ美味しいよと答えた。
新婚生活初日の夕食は僕も奥さんも何処かぎこちなかった。

昨日の夕食は、その新婚生活初日の茄子カレーを
奥さんが作ってくれた。
そして食べながら、新婚生活初日のぎこちなさを
懐かしく思い出した。
僕は奥さんが作ってくれた最初の夕食と、その夕食を食べた時のことを忘れないと思う。
きっと昭和の新婚生活初日だったんだと思う。




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