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イノシシ肉について

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イノシシのお肉は食べたことがありますか?私は猟師を始めた2014年に初めてまともに食べたんですね。それから約8年の間に様々なイノシシを食べた経験からイノシシ肉について解説させて頂きます。(随時内容追加予定)


イノシシ肉はまずイノシシの年齢で大きな差が生まれます

 イノシシが生まれたときのお肉の色はピンクです。豚と同じように歳を重ねるごとにピンクからワインレッドに変化していきます。スーパーで売られている普通の豚肉がほぼ全てピンクなのはまだ若い豚のお肉だと言うことですね。

 若いお肉(ピンク)は比較的柔らかく味わいは淡白です。誰にでも食べられるお肉ですが逆に言うとほぼ豚肉と同じという事です。

 年齢が1年以上経ってくると段々とワインレッドに近づいていきます。2年目からほぼワインレッド、3年目だとダークなワインレッドになってきます。この色合がついてきた段階のイノシシ肉には甘い香りがついてきます。そして味わいも濃厚になってきます。完全に豚肉とは違うお肉になるんですね。どちらかというと牛のお肉に近い風味だとも言えます。最近流行りの短角牛の赤身に近い気がします。

イノシシが大人になると雄か雌かで肉質が大きく変わります

 1歳以上を大人と定義します。お肉の色がピンクではなくワインレッドになってからが大人のイノシシだと言うことですね。ここで雄イノシシに変化が現れだします。発情期に入ってくるわけです。そうなるとまずお肉が雌に比べて固くなってきます。そしてホルモンの関係から雄独特の臭いがついてきます。この臭いは冬(発情期)にかけて強烈になっていき普通の感覚では異臭と感じるレベルに達してしまいます。さらに冬は肩から背中の真ん中辺りまでの脂肪層が鎧のように固くなってしまいます。この層は固定化してその後柔らかくなることはありません。

 しかし、大人の雄のイノシシが駄目だと言うわけではありません。発情期以外の大人の雄はその独特の濃厚な香りが味わいを増大させ、本当の意味でのイノシシらしい味わいを生み出すのです。大人の雄イノシシの味に目覚めたらもう他のイノシシはイノシシじゃないと感じることでしょう。

 対して雌のイノシシは発情期でも臭いはなく、むしろ甘い香りが増していきます。年齢とともに増していき2歳以上でベストな香りと味わいの適度な濃厚さを兼ね備えてくるのです。お肉に固さもなく非常に柔らかな肉質が保たれていますし、むしろ子供と違って肉のキメがいい意味で荒くなって口の中でほどけるような肉質になります。ただ雄と比べると物足りなさを感じる場合もあるでしょう。

当社製品のイノシシ肉にはグレード表記がしてあります

 アルファベット2文字と数字1文字の組み合わせが当社のグレード表記です。

M(male、雄)、F(female、雌)A(adult、大人)Y(young、子供)

数字は1か2。
この数字は大人(A)のみに付くグレードで1より2のほうがよりワインレッドで味わいが濃厚だという印です。

「FA2」
が最上位グレード、ダークワインレッドの赤身で甘い香り漂う濃厚な味わい。推定3歳以上。
「FA1」が第2位グレード。完全なワインレッドの赤身だが若干の淡さを感じる、FA2より濃厚さが低いが逆に食べやすいと感じる場合もある。
「MA1、MA2」
は一応第3位グレードだが、雄独特のワイルドな香りがあるため好みが分かれる。ただ味わいは雌よりもかなり濃厚。冬の繁殖期の雄はお肉にはしませんのでほぼ夏季のみ。
「MY、FY」は両方同じような味わいで淡白だが肉質は柔らかく誰でも食べられる。イノシシらしさはあまり無いが豚よりも更に癖がないものが多い。

人それぞれに好みがありますのでグレード表記は参考程度にお考え下さい。

イノシシの脂の乗りについて

 イノシシは冬期の脂の乗ったお肉が一般的には好まれます。ただ私は「BBQ、焼肉用の素材に特化した場合、むしろ脂が乗っていない方が良い部位もある」と考えています。
 何故かといいますと、イノシシの脂(イノシシの脂は、牛のような筋肉内に入った刺しの脂はほぼ無く、筋肉の外側を覆う脂のみを指します)は融点が高いので、脂身に火が通るまで焼くと赤身をベストの状態にするのが難しいのです。あと、脂身の下には太い筋膜がありますので歯ざわり舌触りも悪くなります(これは細かく包丁を入れることによってかなり改善はします。どうしても脂身つきのまま焼きたい場合は脂身部分と筋に包丁を細く入れてください。)。背ロース、ランプ肉(もも肉の背中側)、外モモ肉は脂身を筋膜ごと削いでから焼くほうが赤身本来の美味しさを引き出せると思います。

 ですが脂身を全く使わないわけではありません。むしろ赤身を焼くときの鉄板や網にまんべんなく溶かして使うわけです。そうすると脂身の良いところ(旨味・甘み)だけが抽出され美味しさがより一層グレードアップします。ですので当社製品にはできるだけ赤身部分のブロック肉(ヒレ、内もも肉など。脂身がまったくない部位)にもスーパーで売っている牛脂のような使い方が出来るように脂身(だいたい背ロースの脂身)のブロックを付けるようにしています。

 ただごく薄切りにしてしゃぶしゃぶにする場合や、骨付きリブのバーベキューなどは脂身があったほうが断然美味しいです。ハンバーグにする場合も赤身7割脂身3割でひき肉にしたら美味しいです。

BBQ・焼肉のときのイノシシ赤身肉の焼き加減

 野生肉であるイノシシ肉は中心部まで十分に火を通す必要があります。中心温度が63度の場合30分間、75度の場合1分間と言われています。BBQ・焼肉の場合は75度1分間というのがベストの焼き加減ということになるでしょう。ただ美味しさを追求する場合かなりシビアな焼き加減です。中心部が完全なロゼ色を目指し、絶対に焼きすぎないことが大事です。焼きすぎて中心部がグレーになってしまうと一気に美味しさが損なわれてしまうからです。まず焼く30分から1時間前には冷蔵庫から取り出し適温にしていることが重要です。そしてカットする厚さは5ミリくらいが焼肉としてはベストだと思います。厚切りで食べたい気持ちも湧いてきますがそこは抑えて5ミリ以下にカットしましょう。あとはお好みで厚さは調節して下さい。とにかく重要なのは焼きすぎないこと!です。

 あと焼くときの設備が重要です。やはり炭火か薪火での網焼き、焼肉専用の強火力のロースターがあったほうが良いです。ホットプレートは避けたほうが良いです。強火力で一気に素早く焼ける装置が無いと美味しく焼けないんですね。炭火・薪火も火の状態を見極めて、特に薪火の場合はユーチューブのテキサスのおっさんの焼いてるシーンを見まくって下さい!

本当は骨付の塊肉の状態で焼くのが一番うまい

いろいろ書きましたが、私個人的な意見を述べますと骨付のもも肉を丸ごと1本焼くのが一番うまいです。

これは本当です。ぜひ手に入れて焼いてみてください。焼くのは難しいですが最強の肉料理を楽しんで頂けると確信しています。もも肉っていうのが重要ですよ、一番うまい部位は決して背ロースではありません(個人的見解)。

特にデカい大人の雄イノシシのもも肉を手に入れてください。3歳以上、生体重量60キロ以上のやつです。本当は80キロ以上が良いです。このもも肉は味が濃厚で肉好きにはたまらないと思います。牛より断然旨いと感じる人も多数、必ずマデラソースなど肉の濃厚な味わいを引き立てるソースで食べて下さいね。塩だけではイノシシの濃厚さにやられます。

因みにイノシシカレーも是非作ってみてください。牛より断然旨いと思う人が続出しています。

千葉県のイノシシは例えればブランド牛のような存在

牛にしろ豚にしろイノシシにしろ、そのお肉の味わいを決める最大級の要素は生育環境です。特に血統が管理されていないイノシシはそうです。

生育環境の最大重要な要素は餌です。千葉県というのは太平洋岸の地域の中でも照葉樹林帯が広大に広がっている有数の地で、つまりドングリの宝庫なわけです。

ドングリと言っても様々な種類があり、アクのほぼ無いシイノキのドングリでないと駄目です。イノシシは、山の中でシイノキのドングリをまっさきに食べ、コナラなどのアクの強いドングリには見向きもしません。

そのシイノキの宝庫が千葉県なのです。人間でも生のままシイノキのドングリは食べられ、ほんのり甘みがあるのが特徴です。

あと、千葉県は竹の宝庫で竹林面積は47都道府県中8位前後、広大な孟宗竹の森が広がっています。ただ面積が広いだけではなく、美味しい筍が育つ重要な要素を千葉県は兼ね備えています。

千葉県南部は若い海底隆起層が主な地層で岩石地層がほぼありません。つまり粘土質の地層で表土が覆われています。これが美味しい筍の生育には重要なんです。つまり日光を遮断して筍に渋みを発生させにくくしているのです。

この甘みが強く美味しい筍をイノシシたちはガンガン食っているわけで、1年の半分は筍のみを食っていると言っても過言ではないでしょう。12月下旬頃から6月下旬にかけて、孟宗竹、破竹、真竹と順番に食っています。

このように千葉県には、イノシシの肉質を決定づける良好な生育環境が整っているのです。日本全国どこのイノシシの味も同じではないんですね。

BBQ・焼肉の時の味付けについて

 これは当然好みもありますので一概にこれが良いとは言えませんがご参考までに1つご提案致します。

○塩ダレ(肉に対する分量):塩1%、粗挽き胡椒0.5%、すりおろしにんにく1%、オイル2%(オリーブオイル)。これらを混ぜ合わせたものをお肉の両面にチョンチョンと付けます。ボールに入れて混ぜ込んでもいいですが優しく混ぜないと赤身のお肉がボロボロにちぎれることがありますので優しく丁寧に。
 これを万全の焼き加減で焼いて頂ければイノシシ本来の甘味・香り・濃厚さを味わって頂けると思います。味変で私おすすめのお醤油(ヒシク 極あまくち 専醤)を焼いてからちょんと付けて食べるのもおすすめです。

BBQ・焼肉以外のイノシシ肉の調理例

背ロース低温調理

背ロースブロック肉まるごとそのままで低温調理、中心部はこのロゼ色を目指し脂身は低温調理後に強火力でガリッと焼く。実に旨いです。塩だけでも十分ですが、お好みのソースを作って色々楽しみましょう。

イノシシのパンチェッタ仕込み中

豚バラ肉の塩漬けのことをパンチェッタと言うみたいですがそのイノシシ版。塩とお好みのスパイスを擦り込んでじっくり寝かす。

パンチェッタ完成

上の写真はスーパーの普通のパンにのっけちゃってますがそれでも旨いです。パンチェッタ自体が旨いんですが、イノシシのは格別感があります。

イノハンバーグ

普通のハンバーグにしか見えませんがイノシシのハンバーグです。FA1か2グレードの赤身7割と脂身3割を極粗挽きにして塩と胡椒だけのシンプルバージョンです、一切他の材料は入れていません。焼き方は、両面をしっかり焦げ目がつくまで強火で焼き、蓋をしてから弱火で7〜8分(これは大きさによります。この場合は1つの大きさを150〜200グラム位にした目安です。)、切ったときに中からジュワーと肉汁が染み出し、ロゼ色に仕上がっていれば成功です。美味しいですよ。お好みのソースでどうぞ。

ヒレ肉のソテー

ヒレ肉に塩コショウをし軽く片栗粉をまぶします。鉄のフライパンを弱火にかけ、イノシシの背脂かバターをたっぷりと溶かしたところに薄切りのにんにくを入れてじっくりと焼きます。お肉をフライパンに置いたときに全く音がしないくらいの温度から焼き始めましょう。ほぼ焦げ目がつかないように丁寧に焼き上げるのがポイントです。低温調理に近い仕上がりになります。

イノミートパスタ

イノシシのミートソースも旨いです。脂の乗った腕肉が特に合います。腕肉は筋が結構強いので焼肉にするのは難しいのですが、ミートソースのように少し煮込む料理には味が濃くマッチします。
 ごく粗挽きのミンチというよりも、包丁で叩き切ったくらいのゴロッとしたサイズのお肉のほうが私は好きです。作り方は一般的なミートソースの作り方で極シンプルな方がお肉の味が堪能できますよ。
 簡単に作り方を書きますと、玉ねぎ&人参をじっくり炒めます。取り出して、腕肉を適当に切ったものを強火でガッツリと焼きます。ほぼ混ぜたりしないで焼くのが重要です。焦げ目がしっかりつくまで両面焼きます。
そこに炒めた玉ねぎ&人参を入れて混ぜ、トマト缶&水を適量と塩適量、黒胡椒とオレガノ適量、少しだけケチャップでコクを追加。これを水気が少しだけ残るくらいまで強火で煮詰めます。肉の食感が残るくらいの煮詰め具合です。それを冷まして一晩冷蔵庫で寝かせてからどうぞ。パスタは太めの1.8〜2ミリ位のものが合います。

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