マガジンのカバー画像

エッセイ

36
どうでもいいような、だけどあるとちょっとウレシい毎日のことです。
運営しているクリエイター

#散文

七草がゆのかわりに

七草がゆのかわりに

 今日は、あなたと一緒に食べるために七草がゆをつくります。でも、家には大根しかないので、これでつくります。すみません。でも、お正月のあとの胃腸をいたわるという目的はクリアしているし、お昼の三分クッキングでやってたんです、大根がゆを。
 土鍋でお米と大根を煮ます。わたしは料理が得意とは言えないのですが、今日は絶対焦がさないように慎重にやるので安心してください。お米が柔らかくなったら葉っぱもいれます。

もっとみる
チーズおかき

チーズおかき

 午後になってもしんしんと冷える日、分厚い小説を読むのに疲れた時なんかには、チーズおかきをちょっとつまみます。二枚の丸いおかきにチーズがはさまっていて、片側のおかきはリング状になっている。そこからつるつるしたチーズクリームが見えています。おいしそう。
 たとえ小説の舞台がボストンの洒落たレストランでも、わたしはわたしの世界、たとえばおばあちゃんちの玄関に、帰ってくるのです。幼き日、おばあちゃんがビ

もっとみる
あんバタートースト

あんバタートースト

 ぜんざいのためのあずきが余ってしまったら、それを言い訳に大きなスプーンで好きなだけすくいあげ、こんがり焼いたトーストの上に、バターと一緒にのせる、それだけ。
 あとは、なんだっていいのです。窓の外は眩しく晴れていてもいいし、つめたい小雨でもいい。襟に細かいレースがついたワンピースを着てもいいし、ドーナツ柄のパジャマを着たままでもいい。飼っているちいさなミドリガメが、ごきげんに愛嬌をふりまいてもい

もっとみる
あまざけ

あまざけ

 近所の神社ではお正月に甘酒がふるまわれています。雪がちらつく中の初詣、みんなその湯気に寄っていく。あるいは「あまざけ」という言葉に引き寄せられて。甘酒との出会いは幼い頃、お正月か、ひな祭りかに親戚からもらった瓶詰めのもの。白っぽい瓶に、うすもも色のラベルが貼ってあって、わたしはウワッと色めき立ち、これ飲んでいいの? と大人たちの顔色を伺う。お酒なのに?飲んでいいの?あまいの?という気持ちで。
 

もっとみる