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情報系でないのにオックスフォード大学の機械学習PhDに入れた方法

こんばんは、マサキです。
昨今の人工知能ブームもあり、2021年現在、機械学習・統計・コンピュータサイエンスの分野のPhDの需要は目を見張るものがあります。日本国内での需要は今後も続くかは分からないところですが、少なくとも海外求人では上記3分野の需要は極めて高く、日本企業ではなかなか出ないような給料を頂くことも可能です。

日本の大学での情報系PhDでも、業績がすごければ、海外企業に雇ってもらえるケースもあるようですが、基本的には海外PhDの方が有利です。就職のために3年もかけるのは、ステップアップの方法としてはよろしくないようにも思えますが、竜先生の本にもあるように、ビザやインターンの問題があるため、キャリアアップの手段として海外情報系PhDは成り立ちます。英語ができることはコード面接においても有利に働きますし、就職した後も役に立つでしょう。

イギリスは、人工知能の父アランチューリングの生まれ育った国ですし、囲碁のAlphaGOを生み出したDeepMindのある国でもあります。オックスフォード大学のAI研究のレベルは非常に高く、有名なディープラーニングモデルの名前にもなっているVGGは、世界トップ研究室の一つである事は疑いがありません。ここを卒業できれば、アメリカ企業にも問題なく入社できた事例は沢山あります。

しかし、大学・修士での専攻が機械学習系でないので、諦めている人もいるのではないでしょうか。大丈夫です、私は材料系のバリバリの実験屋でしたが、合格を貰うことができました。その方法論を説明していこうと思います。

キャリアアップとして機械学習PhDはペイするのか?

A. アカデミアではなく、産業界に行くのであれば、高待遇の職を探すことは可能です。ただし、奨学金なしで留学するとペイするのは難しいです。

そもそも、PhDはアカデミアの登竜門なので、ペイするかというのはお門違いな質問ではあるのですが、社会人で行くからには、一考する必要があるでしょう。

まず、海外就職、特にアメリカ就職であれば、然るべき企業に入社できればペイします。GAFAの本社ではエントリーレベルで2000万円の給与を頂けますので、確実に日本企業の給与を超えるでしょう。詳細な給料は有名なTechLeadさんの動画を見るとわかると思います。シリコンバレーであれば、他の企業もソフトウェアエンジニアにこれくらいの給料を出すようです。ちなみに、ケンブリッジ時代に同じ研究室にいたPhDの学生は、シリコンバレーのAmazonとTeslaに就職しましたが、二人とも初任給は2000万円を超えていました。Teslaに行った人はヘッドハンティングだったので5000万円でした。(トップ会議でSpotlight口頭発表する完璧超人だったので、あまり参考にならないかもしれませんが。。。)
実際、ケンブリッジ・オックスフォードの機械学習PhDを卒業した人の就職先をLinkedInで調べてみると、アメリカのGAFAなどに就職しているひとは沢山いて、他の企業でも高収入な企業に就職しています。(もちろん、就職先のマジョリティは教職員ですが)

ちなみに、GAFAはヨーロッパで就職してもここまで給料はよくありません。(DeepMindは別で、平均3,500 - 4,000万円もらっているようです。)シリコンバレーという場所が特殊だと言えます。イギリスであれば、金融系に就職した方がよっぽど稼げます。クオンツやアクチュアリの方が候補に上がるでしょう。問題は、入社試験を突破するのが難しいので、卒業して確実に入れる保証があるわけではないということでしょうか。

日本国内においては、IT系に就職しても給料面での改善はそこまで期待できないでしょう。上記のレベルで稼ぎたいのであれば、外資系金融やコンサルを目指すことが一つの道です。クオンツや戦略コンサルとして採用されれば、日本にいながら給料を稼ぐことも可能です。例えば、マッキンゼーも東京に機械学習専門部隊であるQuantumBlackがありますし、クオンツではTwo sigmaも東京オフィスがあります。このあたりは、英語力も必須となるので、海外PhDを活かすことができます。当然、問題も同じで、入社が大変なので卒業したところで入れる保証はありません。

しかし、留学自体にお金がかかる事(オックスフォードPhD卒業までに約2310万円必要)と、その期間本来貰えた給料の差額から考えると、3年間PhDを行う事はかなりの経済的負荷となります。奨学金で必要経費がチャラになることがない限り、ペイするのは相当大変と言えるでしょう。
この戦略については、この記事をどうぞ。

とはいえ、そもそも給料だけを追い求めるのであれば、日本で医学部に入り直して医者になった方がよっぽど確実にペイします。その意味では、給料だけを求めてPhDを取得するという考えは私は支持しません。その他の経験も含めて、海外大学に魅力に感じる人が取るべき選択肢と言えます。

非情報系が機械学習PhDに入る条件

これに関しては、先生が明確に条件を提示してくれました。以下がそのリストです。

I cannot guarantee you a spot but the following things will help your application:
・Evidence of taking well-known online ML courses such as the Stanford course taught by Andrew Ng
・Evidence of work on ML projects such as workshop or conference publications in ICML, NeurIPS, ICLR, AISTATS, UAI (which you already have)
・Evidence of participation in NeurIPS competitions: https://neurips.cc/Conferences/2020/CompetitionTrack
・A strong proposal that addresses the shortcomings of prior work (e.g., in ICML, NeurIPS, ICLR, AISTATS, UAI, JMLR, Science, Nature)

最初に書いてあるように、これらは合格の絶対条件ではありません。しかし、非情報系が合格する上で助けになるということです。私のケースでは、応募時点で半分は満たしていました。

1. MLコースを受講する
 Andrew Ng先生のコースは受講して、受講証明証を貰っておきましょう。ちなみに残念ながら私は受講していませんでした。
2. AIトップカンファ、または、ワークショップ での発表経験
 私はNeurIPSのワークショップ でしか発表がありませんでしたが、認めて頂けました。
3. NeurIPSのコンペ参加
 これも私は参加したことがありませんでした。
4. 論文の発表経験
 これは、前記のNeurIPSのworkshopがArchivalだったことと、Natureの姉妹紙に出したことがあったので、認めてもらえました。

特に私が重要だと考えるのは2と4であり、入る前に論文実績があると強いということです。これを作ることに最大限の努力を計ることが重要と考えます。

どうやって機械学習の論文実績を積むのか?

私は2つの方法によって、機械学習の論文実績を積みました。

1. 社内異動の希望を通し、ソフトウェアの部門に異動する。
大企業であれば、複数の事業領域に渡っていることも多いので、これが可能となります。私は、ハードウェアの実験系の研究開発部署から、ソフトウェアの研究開発部署に異動させてもらいました。社内転職できてしまう日本大企業のメリットを最大限享受した形です。
2. 1年間の客員研究員経験を積む。
PhDの前に、1年間ケンブリッジ大学のMachine Intelligence Laboratoryで客員研究員をしました。PhDと比較して、客員研究員ははるかに承認されやすいです。試験も語学力も必要なく、コネさえあれば可能です。私は細い人脈を辿り、メールとテレビ会議だけで成立させました。この1年間で頑張って学会発表を2回、論文を1本出版したので、情報系としてのキャリアを積むことができました。また、この研究室のホームページに自分の名前が載っているうちに、ケンブリッジのメールアドレスを使って、沢山の先生にPhD応募のメールを送りました。ケンブリッジの効果は絶大で、Oxford, Cambridge, UCL, Imperialといった有名大学のAIの教授から大抵返事をもらうことができました。

特に2の客員研究員はオススメです。実績も積めますし、PhDの雰囲気もわかるので、本当に自分にPhDが必要か、お試し期間を設けることができます。また、海外にいるので、英語勉強の効率も非常に良いです。着いた当初はIELTS overall 6.0でしたが、9ヶ月で7.5まで向上させることができました。英語や面接の詳細は以前のnoteからどうぞ。

最後に

非情報系が有名大学・有名研究室の機械学習PhDから合格するのは並大抵のことではありません。しかし、決して不可能ではなく、業績を詰めば可能です。客員研究員も含めて検討してみてください。後悔のない選択になることを祈っています。

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