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映画批評・感想など

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2022年3月の記事一覧

香港版『じゃじゃ馬ならし』?: 映画レビュー『悪漢探偵』

香港版『じゃじゃ馬ならし』?: 映画レビュー『悪漢探偵』

 1982年の香港の映画『悪漢探偵』を見た。前半から中盤にかけては結構盛り上がり、特に男勝りで当時として珍しい女性刑事を演じるシルヴィア・チャンの演技は前半では非常に爽快で魅力的。

 『男たちの挽歌』のチョウ・ユンファが『シティ・ハンター』の冴羽獠のデザインに影響を与えたのではないか、という話を聞いたことがあるが、もしかしたらこの作品のシルヴィア・チャンは槇村香の設定に部分的にでも影響を与えてい

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映画レビュー『好色日本性豪夜話』

 3月12日から映画館「ラピュタ阿佐ヶ谷」では「六邦映画 6つの桃色秘宝」と題した特集を組んでおり、そのうちの一作である『好色日本性豪夜話
』を鑑賞してきた。

http://www.laputa-jp.com/laputa/program/roppoueiga/

 冒頭から「21世紀はSEX革命の世紀となることが識者により論じられている」など、のっぴきならない表現が行き交うこの映画はしばし

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映画レビュー『スケコマシの掟 SEX放浪記』

 3月12日から映画館「ラピュタ阿佐ヶ谷」では「六邦映画 6つの桃色秘宝」と題した特集を組んでおり、そのうちの一作である『スケコマシの掟 SEX放浪記』を鑑賞してきた。

http://www.laputa-jp.com/laputa/program/roppoueiga/

 とりあえずポルノであろうということ以外は一切中身の予想のつかない凄まじいタイトルではあるが、ストーリーも凄まじい。

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不気味な鉄塔のまなざし: 小津安二郎『風の中の牝雞』について(映画レビュー)

不気味な鉄塔のまなざし: 小津安二郎『風の中の牝雞』について(映画レビュー)

(現在、同作品はU-NextとHulu、Amazonプライムで視聴可能)

 ちょうど音楽における通奏低音のように、小津安二郎監督の1948年の映画『風の中の牝雞』には作品全体に一貫して登場するショットがある。それはこの映画で何よりも先に映像として登場する巨大な鉄塔であり、結論から言えばこの映画はこの鉄塔が象徴する他者によって「見られている」という感覚を主題とした映画として見ることができると言える

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