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映画レビュー 『ゴダールと映画史: 「永遠」を撮った男の神話と実像』

Nor shall Death brag thou wander’st in his shade When in eternal lines to time thou grow’st: ——“Sonnet 18”, William Shakespeare Elle est retrouvée. Quoi ? – L’Eternité. —Arthur Rimbaud  都内のミニシアターで上映されているドキュメンタリー映画『ゴダールと映画史: 「永遠」を撮った男の

    • 映画超人の作り方、教えます

       昨今、若者を中心に「ファスト映画」「倍速視聴」といったさまざまな新しい映像作品の鑑賞法が広まっているが、とうとう都内にこうした新しい鑑賞方法を教えると謳(うた)う専門のカルチャースクールが登場した。  豊島区に位置するこのカルチャースクールの名前は、「ニュー・シネマ・パラダイス」。一見、なんの変哲もない雑居ビルだが、「映画超人の作り方、教えます」をキャッチコピーに、一階から最上階までビルの全てのフロアを借り受け、忙しい現代人に最適な、新しい映像作品の鑑賞方法に関するレッ

      • 映画レビュー『マクルー・ハーン』

         マーシャル・マクルーハンの学術書『グーテンベルクの銀河系』に着想を得たアニメーション映画『マクルー・ハーン』を都内ミニシアターにて鑑賞してきた。あらすじはこうだ。  ペルシアに位置するメディア王国は古代から繁栄をほこっていた。乳香薫る河が流れ、肥沃な土地に住う民草の気質は穏やかで礼節を知っていた。そんな平和で豊かなメディア王国に目をつけたのが荒涼たる平原を風よりも早く渡る騎馬民族の長であるマクルー・ハーンであった。  駿馬に跨った獰猛な戦士たちが地平線を埋めてやってくる

        • 香港版『じゃじゃ馬ならし』?: 映画レビュー『悪漢探偵』

           1982年の香港の映画『悪漢探偵』を見た。前半から中盤にかけては結構盛り上がり、特に男勝りで当時として珍しい女性刑事を演じるシルヴィア・チャンの演技は前半では非常に爽快で魅力的。  『男たちの挽歌』のチョウ・ユンファが『シティ・ハンター』の冴羽獠のデザインに影響を与えたのではないか、という話を聞いたことがあるが、もしかしたらこの作品のシルヴィア・チャンは槇村香の設定に部分的にでも影響を与えているかもしれない。あと英語のWikiなどでは007がこの作品の影響源として挙げられ

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        映画レビュー 『ゴダールと映画史: 「永遠」を撮った男の神話と実像』

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        • 創作
          3本
        • 映画批評・感想など
          4本

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          映画レビュー『好色日本性豪夜話』

           3月12日から映画館「ラピュタ阿佐ヶ谷」では「六邦映画 6つの桃色秘宝」と題した特集を組んでおり、そのうちの一作である『好色日本性豪夜話 』を鑑賞してきた。 (http://www.laputa-jp.com/laputa/program/roppoueiga/)  冒頭から「21世紀はSEX革命の世紀となることが識者により論じられている」など、のっぴきならない表現が行き交うこの映画はしばしば「実写&アニメーション」という点が珍奇と強調されるが、アニメーションを入れたこ

          映画レビュー『好色日本性豪夜話』

          映画レビュー『スケコマシの掟 SEX放浪記』

           3月12日から映画館「ラピュタ阿佐ヶ谷」では「六邦映画 6つの桃色秘宝」と題した特集を組んでおり、そのうちの一作である『スケコマシの掟 SEX放浪記』を鑑賞してきた。 (http://www.laputa-jp.com/laputa/program/roppoueiga/)  とりあえずポルノであろうということ以外は一切中身の予想のつかない凄まじいタイトルではあるが、ストーリーも凄まじい。  中卒という「低学歴」を原因にかつて交際中の女性に「プロポーズ」を断られた——

          映画レビュー『スケコマシの掟 SEX放浪記』

          不気味な鉄塔のまなざし: 小津安二郎『風の中の牝雞』について(映画レビュー)

          (現在、同作品はU-NextとHulu、Amazonプライムで視聴可能)  ちょうど音楽における通奏低音のように、小津安二郎監督の1948年の映画『風の中の牝雞』には作品全体に一貫して登場するショットがある。それはこの映画で何よりも先に映像として登場する巨大な鉄塔であり、結論から言えばこの映画はこの鉄塔が象徴する他者によって「見られている」という感覚を主題とした映画として見ることができると言える。  鉄塔の格子状の金網が持つ幾何学的な規則性は、やがて鉄塔に続いて映し出され

          不気味な鉄塔のまなざし: 小津安二郎『風の中の牝雞』について(映画レビュー)