映画レビュー『スケコマシの掟 SEX放浪記』

 3月12日から映画館「ラピュタ阿佐ヶ谷」では「六邦映画 6つの桃色秘宝」と題した特集を組んでおり、そのうちの一作である『スケコマシの掟 SEX放浪記』を鑑賞してきた。

(http://www.laputa-jp.com/laputa/program/roppoueiga/)

 とりあえずポルノであろうということ以外は一切中身の予想のつかない凄まじいタイトルではあるが、ストーリーも凄まじい。

 中卒という「低学歴」を原因にかつて交際中の女性に「プロポーズ」を断られた——端的にいえばフラれた男性が、このことを機に女嫌いになり、女性への復讐を目的として次々と女性と関係を持っていくという筋立てになっている。なおプロポーズといっても、土手で並んで黙って川を見ていたところ、急に女性を押し倒し強引に唇を奪い抵抗された後、思い出したように「結婚しよう!」と言うようなものなので到底プロポーズとはいえないだろう。

 「低学歴」が動機ということは主人公自らが同棲相手の男性に告白するのだが、先に述べた「プロポーズ」といい、映画冒頭でドライブに連れ出した女性を強姦に及んだところ誤って殺してしまい、車道近くの人に気づかれやすそうなところにとりあえずレンチで掘った浅い穴に死体を埋めてしまうところといい、「低学歴」以前の問題ではなかろうか、という感がある。監督の小川欽也(本映画でのクレジットは卓寛)は中央大学卒のインテリな訳だが、大卒が中卒をこのように表象することに学歴を問わず当時の観客はどのように考えていたのか、と気になるところ。

 またほぼ全てのケースで主人公が関係を持つ女性が主人公に惚れ込むご都合主義も、まあポルノですねぇ、という感じで、挙句の果てには酒場のボーイに女性を扱う極意として、「まぁ手っ取り早いのは強姦だな」と説教をし出す始末。働かず、ピロートークもそこそこに関係を持った女性には事後金をせびりだすあたり、主人公も徹底している。

 昭和のモラルどうなってんだという感じだが(まあ当時の基準でもぶっ飛んでる倫理観で、これを「昭和の感覚」などと一括りにされては昭和サイドもたまったものではないだろうが)、そういう時代感覚を伝えているものとしても価値はあるだろう。

 なお3月17日現在、Filmarksにはこの映画は登録されていないが、なぜかIMDbには登録されている。恐るべし、IMDb。



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