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読書感想 芥川龍之介 一塊の土

芥川龍之介の晩期の小説です。
足かけ八年寝たきりであった息子が亡くなり、嫁と孫と三人で暮らすことになった農家の姑のお話です。


姑は嫁に再婚をすすめますが、嫁はいっさい聞き入れず、野良仕事に精を出し女手ひとつで一家の暮らしを支えます。


やがて嫁は家の仕事は全て姑に押し付けるようになり、精神的に姑を追い詰めていきます。


このお話は、姑のお住の目線でお話がすすんでいきます。お住の心の動きが繊細に描かれています。


芥川龍之介は35歳で亡くなっているので、当然このお話は35歳までに書かれたわけですよね。
男性ながら、中年女性の心理をここまで繊細に描けるなんて。

そういったところも天才たる所以ですよねぇ。


いやはや、感服です。

お住は息子の死後八年間、苦しみに耐えながら生活しますが、
そんななか嫁が腸チフスにかかり、あっという間に亡くなってしまいます。


「お住はまだ一生のうちにこの位ほっとした覚えはなかった亅

と書かれています。
そして、息子が亡くなった時も同じ思いを抱いた事に気がつき、涙を流しながら自分は情けない人間だと思うのです。


そんな事ないと私は思うんですけどね……


多分、口には出さないけれど、多かれ少なかれ同じような感覚を抱いたことは皆さんあるんじゃないでしょうか。

その時に、その感情を自分の中でどのように折り合いをつけるのか。

人それぞれなんじゃないかなと思います。

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