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読書感想 夏目漱石 門

夏目漱石の「門」は、
「三四郎」「それから」のあとに続く作品で、三部作の最終回のような存在です。

実際にはそれぞれ独立したお話で、登場人物や設定は多少異なります。

「門」は、友人の内縁の奥さんを奪って結婚した主人公が、家族や親戚に絶縁され、大学も退学となり、妻と二人だけの寂しい生活を送るお話です。

人生を諦めきった夫婦のお話です。

とっても暗いお話です。

そのせいか、前のニ作品に比べると全体的にマイナーな印象です。

だがしかし!!!

私はこの作品が夏目漱石の著書のなかで
ニ番目に好きなんです!!


一番じゃないんかい!笑(一番は夢十夜。)


この作品のなかには、
二人の関係が発覚したあと親から勘当され、学校にもいられなくなり、夫婦二人でひっそりと暮らすようになるまでの具体的な描写がほとんどありません。

そのかわり、それがどれほどの苦しみだったかが非常に抽象的に描かれています。

「青竹を炙って油を絞るほどの苦しみであった」
と書かれています。

竹から、油ってとれるの……?

世の中に不倫小説は数あれど、その苦しみをこんな風に表現出来る作家さんはいないですよね。


「大風は突然不用意の二人を吹き飛ばしたのである。二人が起き上がった時はどこもかしこも砂だらけだったのである。彼らは砂だらけになった自分達を見つめた。けれどもいつ吹き倒されたかを知らなかった亅


「彼らは蒼白い額を素直に前に出して、そこに炎に似た焼印を受けた。そうして無形の鎖で繋がれたまま、手を携えてどこまでも、いっしょに歩調を共にしなければならないことを見出した」


彼らの頭上を通り過ぎた嵐がいかに激しいものだったか、具体的な描写がなくとも充分伝わりますよね。


私はこの本を初めて読んだ時、魂が揺さぶられるような感覚を覚えました。


運命というと大げさですが、
人はそれぞれ持って生まれた何かがあるんじゃないかと思うことがあります。

そう考えることで少しでも心が楽になるのだったら、運命を信じてみるのもいいのかもしれませんね。



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