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第16回読書会報告書

 6月16日(日)18:00〜19:00まで、第16回いわぬま読書会が開催されました。課題本は、井伏鱒二【山椒魚】 です。

 〈あらすじと概要〉
ユーモアと悲しみ、そして微笑…。その文体も味わい深い、12の初期短編を集める。
老成と若さの不思議な混淆、これを貫くのは豊かな詩精神。飄々として明るく踉々として暗い。本書は初期の短編より代表作を収める短編集である。岩屋の中に棲んでいるうちに体が大きくなり、外へ出られなくなった山椒魚の狼狽、かなしみのさまをユーモラスに描く処女作「山椒魚」、大空への旅の誘いを抒情的に描いた「屋根の上のサワン」ほか、「朽助のいる谷間」など12編。

新潮文庫、Amazonより引用

 宮城県は梅雨入り宣言もまだですが、この日は真夏日と言われるほどの暑さでした。各地で30℃以上を記録したところもあるそうです。風が吹けば、涼しく感じるのはまだマシな方なのでしょう。これがそのうち熱風になると思うと、今から夏対策は考えていかなければならないですね。
 この日の読書会の参加者は4名でした。暑さを想定して、またお勤めの方も来やすいようにと夜時間に設定してみましたが、少数開催になりました。けれど思いの外、今回の「山椒魚」超短編ながら、各々の思うことが有り、たくさんの意見や感想が飛び交いました。
 課題本の井伏鱒二の「山椒魚」は、国語教科書にも採用され広く親しまれている作品でもありますが、「井伏鱒二自選全集」に収録する際に井伏自身によって結末部分が大幅に削除されたことで物議を呼びました。そのため、手に取った本によっては書籍の出版年号によって結末部分が残っているものと消去されたものとで違いがあるそうで、知らなかった私は驚きました。意図は本人しか分からないため、これも今回の読書会でも話題になりましたが、結局謎のままです。それもまたこの作品に惹きつけられた所以なのかもしれません。
 また、みんなが共通として抱いたイメージに、一番多かったのが『閉塞感』でした。サンショウウオが感じる悲しみや怒り、羨望など様々な感性がひしひしと伝わってきて、読者の境遇にリンクすることもあり、介護、入院生活、不測の事態に閉じ込められてしまったときの経験まで、そのとき感じたことを各々お話ししてくださいました。私が感じたのは、SNSの閉塞感。ネットを通して自意識を高めていないと不安になってしまう心理が、とても窮屈で苦しくて、まるでそれでしか判断できない狭い心境が情報に縛られているようで、なんて不自由なのだろうと思いました。短い物語から、いろんな想いが交わされた名作文学に、今回を機に拝読できてよかったです。
 今回もう一つ面白かったことは、参加者が持ち寄った今回の「山椒魚」の本、それぞれ別の出版社や装丁の書籍を持ってきていたことです。逆に重ならなかったのが凄い!これも長く親しまれている作品ならではですね。

小学館文庫/講談社文庫/講談社文芸文庫/新潮文庫


 そして課題本の他に今回は、余った時間でそれぞれのオススメ本を紹介する時間も設けました。紹介された作品は、

・「おれは一万石シリーズ」千野隆司 (双葉文庫)
・「家康、江戸を建てる 」門井慶喜 (祥伝社)
・「82年生まれ、キム・ジヨン」 チョ・ナムジュ、斎藤真理子=訳 (ちくま文庫)
・「黒い雨」井伏鱒二 (新潮文庫)

 どれもが気になる作品ばかり。それぞれ作品のお話は尽きませんでしたが、部屋の制限時間が来てしまったため、やむなく終了。ご紹介ありがとうございました。
 以上、第16回読書会報告書でした。

 さて、ここからは次回の読書会のお知らせです。

第17回目の課題本は、
「星の王子さま」サン=テグジュペリ です。

終了


場所はこちら↓

お申し込みは、お電話かメール gennotsukito@gmail.com にて受付しております。メールの場合、お名前(ふりがな)と年齢(例40代)、いわぬま読書会参加の明記をしてお申し込みください。詳しくは幻ノ月音のnote『読書会について』まで。
 発言するのはちょっと……、様子だけでも見てみたい、という方は、見学のみでもOKです。開催時の様子を写真などで知りたいというご意見もございますが、いわぬま読書会は参加者様たちのお姿を撮ることは一切ございませんので、ご了承ください。本のみ撮影させて頂きます。
 また、急遽時間が空いた!という場合でも、開始時間まで直接会場に来ていただければ、その場で受け付けいたしますので、お気軽にご参加ください。
 7月は七夕!読書でも楽しみましょう。お待ちしております。


いわぬま読書会

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