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急行列車「Inter7City」/北海を望む車窓 (初めての海外一人旅でイギリスを縦断した-13)


こんにちは。ゲンキです。
イギリス旅行記第13回は、アバディーン〜エディンバラの鉄道乗車記をお届けします。


~旅の概要~

鉄道が好きな僕は、鉄道の祖国であるイギリスを旅することにした。「果て」の景色を求めて本土最北端の駅「サーソー(Thurso)」から本土最南端の駅「ペンザンス(Penzance)」を目指す旅である。遠く離れた異国の地で、僕は一体何に出会うのだろうか。(2023年3月実施)


↓第1回をまだ読んでいない方はこちらからどうぞ。



10:55 Aberdeen Station

ここはスコットランド東海岸に位置する街、アバディーン。これから列車に乗り込んで、スコットランドの首都・エディンバラへ向かう。

乗車する列車は11時1分発、スコットレイル運行のエディンバラ行き。担当車両はHST (High Speed Train)ことインターシティ125型。タヌキみたいな可愛らしい顔をしているが、こう見えても最高時速200km(125マイル)出せる高性能な車両。1976年のデビューから既に50年近く経過しており、年々活躍の場を減らしつつも地方ではまだまだ生き延びている。

スコットレイルのHSTには「Inter7City(インターセブンシティ)」という新たな愛称が与えられている。都市間列車を意味する「インターシティ」に、スコットランドの「7大都市」を重ね合わせたネーミングである。色んな名前が出てきてややこしいが、ここではわかりやすく「インター7シティ」と呼ぶことにする。

車内はこんな感じ
座席表


11:01 Inter7City

11時1分、予定通りにアバディーン駅を発車。列車はこれから海岸線に沿って南へと下っていく。終点エディンバラまでは直線距離で150km、約2時間20分の道のり。

しばらく走ると進行左側に北海が見えてきた。水平線のずっと向こうにはデンマークのユトランド半島が位置している。
海岸といってもほぼ崖で、何の変哲もない草原を走っていると思ったらときどき深い谷を飛び越えるスリリングな車窓が続く。旧型車両とはいえ、インター7シティは常に時速160km前後をキープして高速で走行する。


最初の停車駅、ストーンヘブン(Stonehaven)。エディンバラへ向かう乗客を拾っていく
発車時刻を待つ車掌氏


アーブロース(Arbroath)付近、海沿いの公園
インター7シティは急行にあたる列車なので、小さな駅は勢いよく飛ばしていく


12時過ぎ、列車はテイ湾の北岸に位置する大きな街・ダンディー(Dundee)に到着。ダンディーはスコットランド7大都市の一つであり、始発の街アバディーンに次いで第4位の人口を誇る。ここからも大勢の乗客が乗り込んできた。

テイ湾(Firth of Tay)

ダンディーを発車してすぐ、左前方の車窓にはテイ湾に架かる長大なテイ橋が見える。エディンバラはこの湾を越えたさらに先だ。列車は少し速度を落として、平均台を渡るように慎重にテイ橋の上に踏み込んでいく。

テイ橋(Tay Bridge)
橋が長すぎて向こう側が霞んでいる

これから渡る橋に並行して、何か土台のようなものが水面から頭を出している。これは初代テイ橋の橋脚跡。今走っているテイ橋は「2代目」なのだ。
今は一部しか残っていない初代テイ橋だが、実はここにはとある悲惨な事故の記憶が刻まれている。

ダンディーの街並み

全長3000メートルを超える初代テイ橋は、当時世界最長の橋として1878年に開通した。しかし1年後の1879年12月28日、猛烈な嵐が直撃したことで橋の中央部分が走行中の列車を巻き込んで崩壊。列車内にいた乗客75名全員が死亡する大事故となった。事故後の調査によって、崩壊の原因は風の影響や湾の地形を軽視した設計ミスおよびメンテナンス不良であると判明。その後新たに付け替えられた2代目テイ橋は、1887年の開通から130年以上経った今でも現役で使用されている。

悲しい事故を思うと胸が痛くなるが、こうした暗い過去の上に現在の安全な旅が成り立っていることも覚えておかねばならない。

数分かけて無事に対岸へ渡り切った。エディンバラまではあと1時間
天使でも降りてきそうな空


列車はしばらく内陸を走り、30分ほどして再び海沿いに出た。こちらはフォース湾(Firth of Forth)。この湾を越えればいよいよ目的地、エディンバラの市街地だ。

フォース湾に浮かぶインチキース島(Inchkieth)
対岸にエディンバラ市街地の建物群が見える


列車はかなりの高度を保ったまま、フォース湾を股に掛ける大鉄橋・フォース橋(Forth Bridge)に差し掛かった。フォース橋は全長2530メートルとこれまた長大な橋だが、この橋が本当にすごいところは長さではなくその外見だ。

残念ながら列車の上からではこの橋の「真の姿」をイメージしにくいので、皆さんには別日に橋の袂から撮影したフォース橋の全景をご覧に入れよう。


それがこちら。

これが、1890年竣工から130年以上現役の世界文化遺産「フォース橋」である。

高さ104メートル・長さ415メートルの菱形の支えが3つ連なる「カンチレバートラス橋」と呼ばれる構造で、「テイ橋の悲劇」からの教訓を活かし、フォース湾を吹き付ける強風にも耐えられるスーパー頑丈な造りとなっている。使用された鋼鉄の量は5万トン以上、その圧倒的威圧感から名付けられた異名は「鋼鉄の恐竜」。2015年には歴史的・創造的価値が評価され、世界遺産リストにも登録された。

列車と比べるといかに巨大な橋かがよくわかる


海面からの高さは約50メートル。高所恐怖症の人は要注意。

フォース湾を渡り、列車はついにエディンバラ近郊に入った。だんだんと住宅や大きな建物が増えていく。

空港と市街地を結ぶエディンバラ・トラムと並走
マレーフィールド・スタジアム(Murrayfield Stadium)。ラグビースコットランド代表の本拠地で、ここでワールドカップが開催されたこともある

13時11分、最後の途中駅であるヘイマーケット(Haymarket)に到着。もうほとんど街の真ん中だが、列車はここから谷の底に入るので車窓はあまり見えない。

発車してすぐにトンネルを通り、列車はゆっくりと終点に近づいていく。


13:18 Edinburgh Waverley Station

アバディーンから2時間と少し、インター7シティは終点のエディンバラ・ウェイバリー駅に到着。オーシャンビューと2つの鉄道遺産を楽しむことができ、非常に満足感のある乗車体験であった。

線路はここで行き止まりなので、乗客たちはみんなホーム前方にある改札の方へ歩いていく。

さすが首都。ものすごく人が多い

ロンドンを出発して以来、久しぶりの大都会だ。人が多いというだけでも気分が湧き立つ。それではこれからスコットランドの首都、エディンバラを観光していこう。


つづく



次回、第14回は人と文化が交わる街、首都エディンバラ編です。お楽しみに。


それでは今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!



↓第14回はこちら


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