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ドイツパン修行録~ベル・エポック編~

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続・習うより慣れろ編/遂に念願の製パンマイスターとなりマイスターブリーフを手に入れた男が、ドイツの小さな町のパン屋で働きながら更なる次のステップを見据え腕を磨いていく物語。
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#仕事

*31 シュトレンは冬の匂い

 斯くしてクワルクシュトレンの焼き型を無事手元に受け取ったわけであるが、一連の騒動の責任…

*29 夢から覚めた

 近頃は全く自室に居るが快適である。近頃と言ってもその傾向は一週間前辺りから強まり始めた…

*27 秋の暮れ、冬の訪れ

 南ドイツの小さな町のパン工房の内に日本のラジオが流れた。耳から入って来る言葉の懐かしい…

*23 つよくなりたい

 アレックスという製パンマイスターと私は以前勤めていた職場で一緒であった。また彼にはエド…

*22 ウラシマタロウ

 結局土曜の晩にあった親睦会で飲んだ酒は月曜日になっても私を苦しめ続けた。大方の場合、二…

*16 岐路

 日本では桜の象徴に見るように三月から四月にかけて年度が入れ替わるが、ドイツではそれが八…

*15 バースデイ

 今でこそパン職人と名乗る事の出来ている私であるが、ドイツに渡るより以前は全く異なる職業に就き働いていた。また休日にパンや菓子を焼く事も無ければ語学の習得に励むでも無く、ましてや海の外に広がる世界など自分とは全くの無縁であると位置付けていたから間違っても海外旅行などという無謀をしたいと思い立った事さえ毫も渺も無かった。即ちそれはドイツパン職人としての私という人間が、言葉も無く知識も無く全くの丸腰で産み落とされた赤子の如く正真正銘ドイツの地で育ったパン職人だという理屈になるわけ

*14 アーティスト≠アーティザン

 ポルターアーベントで有意義な時間を過ごした後の二日間は家にいた。月曜日が祝日であったか…

*13 日と月と音と

 これほど終業を、週末を待ち侘びた一週間は久しぶりであった。今週は土曜に休みを指定されて…

*12 教うるは学ぶの半ば

 月の初日と月曜日が重なるのは気持ちがいい。新たな門出を迎えた様な、そんな真っ新な気分に…

*10 ジャーニー

 地区の子供会だの社会に出てからの同窓会だのといった集会において、既に集合時間よりも随分…

*5 エンドとミインズ

 アパートの主玄関から外へ出ると右手の暗闇の中から猫が急に目の前に現れた。真っ直ぐに立て…

*4 発酵

 近頃、髭を剃る事に関して言えばすっかり生皮な私の顎を文字通り無精髭が覆っている。幸い此…