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マーケターが聞く「Z世代の推し活」座談会!

 「推し」とは自分にとっての「イチオシの何か」です。その対象はアイドルや俳優、ユーチューバーなど実在する人を指す場合や、アニメ・ゲームの登場人物など二次元のキャラクターを指すこともあり、幅広いカテゴリーが存在します。そんな自分のイチオシを大切にし、応援する活動こそが推し活なのです!(諸説あり)
 しかし幅広いカテゴリーがあるからこそ、「推し活の正体がなかなかつかめない」、「大きなマーケットになっているのだろうけど、どんなアプローチが有効かわからない」とお困りの企業様、広告担当者様は数多くいらっしゃるのではないでしょうか。
 そこで今回の投稿では『マーケターが聞く「Z世代の推し活」座談会!』と題し、㈱ファーストに所属する20代前半のZ世代社員12名に話を聞きました。推し活の実態を生の声からつかみ、その内容から有効な「Z世代×推し活」施策の方向性を提案いたします!

社内の座談会の様子


座談会でZ世代に直撃!5つのQ&A

Q1.推しにハマったきっかけは?

  ―推しとの出会いは意外とアナログ!

 SNSでの情報取集がメインと思われがちなZ世代ですが、推しに初めて出会う場は、リアルな友達からの紹介であったり、親や兄弟の影響だったりするようです。中には友達に熱心に布教され、自分もハマってしまったという人も。筆者もかつて、友人たちと自身の推しをプレゼンしあう布教会を開いたことがありました。推し活にはリアルなコミュニティが大切だということが分かります。


Q2.どんな推し活がメイン?

  ―直接会いたい!応援したい!

 メインで行っている推し活としては、「イベントやライブに足を運ぶ」「直接的・間接的に応援する」といったことをしている人が多いようです。受動的にコンテンツを楽しむだけでなく、推しにより近づきたい、推しのためになにかしたい!といった思いを原動力に、能動的な行動を取りたくなるのが「推し活」の一つの特徴と言えるかもしれません。
 SNSで情報を手に入れやすくなった今、海外でのライブやマイナーなイベントに行くなど、行動範囲自体が広がっていることも分かりました。


Q3.こんな推し活カルチャーもあるよ!

  ―推し活の方法はさまざま!

 推しコンテンツのジャンルが違えば、その推し方にも変化がみられるようです。ライブやSNS上でファン同士の交流があるコンテンツであれば、より自分らしさをアピールできる手作りグッズが流行ったり、二次元キャラクターなど二次創作が行われるコンテンツであれば、ファンの創造物が他のファンに推されたり、といった事例が挙げられそうです。
 話を聞く中で、「グッズ作りなどの推し活をしているのは学生が主で、社会人になるとしなくなる」との言葉もありました。使えるお金が増える一方で時間に制限がある社会人は、ライブや既製品のグッズ購入に活動の重きを置いているようです。


Q4.どうやって情報収集してる?

  ―ジャンルによってSNSの使い方は変わる

 「Twitterで、推しについての情報をまとめているファンのアカウントをチェックしている」という声が多くありました。個人が情報をまとめて発信しやすいのは、文字中心に伝えられるTwitterなのかも。一方、推し活グッズの手作り方法など、「推し活」そのものについての情報はTikTokが強いようです。若年層が中心的なユーザー層であることに加え、推し活グッズの制作工程や準備の過程をコンテンツにできるTikTokだからこそ、推しのジャンルにとらわれない情報を手に入れやすいのかもしれません。
 推しが雑談をしているのを見たい、という声があったように、「憧れ」よりも「親近感」に魅力を感じるZ世代には、本人がなにげなく発信できるSNSが推し活の中心になっているようです。


Q5.もし推しが商品コラボするなら…?

  ―推し方によってコラボ商品の買い方も変わる

 推しのジャンルによって、コラボ商品の購買行動は変化するのかもしれません。有名アニメやキャラクターなど、すでに多数のコラボが行われているコンテンツでは、新規の描き下ろしや意外なコラボなど、新鮮さや一工夫が求められる傾向にあるようです。ビジュアルが魅力的、あるいは応援購買が多いようなコンテンツであれば、コレクションや大量購入しやすい安価な商品に、ビジュアルを堪能できるようなデザインを施したものが好まれるのではないでしょうか。
 一方「単にビジュアルが載っているだけでは買わない」という意見もあったように、ファンの購買傾向を見誤ると、むしろファンの購買意欲を下げてしまうような結果に繋がることも。推し活需要を狙うのであれば、そのコンテンツのファン心理を深く研究するのが必須と言えるでしょう。


 以上、「Z世代の推し活」に関する5つの質問について、Z世代社員への座談会内容を踏まえつつ考察してみました。Z世代の推し活事情は、リアルなコミュニティを大切にしつつ、推し本人の素が見えるSNS公式アカウントの閲覧が中心になっていると言えます。日々の生活を送る中で、「推しに会いたい」「推しのために何か行動したい」という気持ちが原動力となり、より広い行動範囲で、能動的な活動ができているのもZ世代らしさかもしれません。推しコンテンツのジャンルによって推しに対するアプローチ方法が異なるように、どんなコラボ商品・企画が喜ばれるかもファンの特徴を見極める必要性があるかと思います。
 コンテンツコラボや推し活需要を企業様の広告/販促活動に取り入れる上で、ファン分析が何より大切だということを今回の座談会を通して改めて感じさせられました。


プロモーション施策におけるZ世代推し活事情の取り入れ方

 前項の座談会内容からもわかるように、使用する推し活コンテンツのジャンル別ファン分析は欠かせません。どんなコンテンツを推しているかによって、ファンの心理状態や行動プロセスに大きく違いが出るからです。ファン分析を怠ると、効果的なプロモーション案の立案や企業様が抱える問題の解決には至らない可能性が高くなるのです。 
 今回の記事は、最後にそのリアルなZ世代の声をどう活用するのか、プロモーションアイデア創出のためのヒントの一例を紹介して終了とさせていただきます!企業様の販促活動/企画立案において、「Z世代の推し活」を取り入れる際の参考にしていただければ幸いです。
 私たちは普段から企業様のマーケティング活動の一助となる上で、『人と商品とのしあわせな出会いを創る』ことを目的として業務に邁進しています。そこで今回は、「商品」とここで言う「人」である“推し活ファン”とをつなぐ出会い(=プロモーション施策の方向性)を想像してみました。

 

 例えばお菓子メーカーの販促施策として、対象商品を買うことで漫画コンテンツとコラボした景品がもらえるキャンペーンを実施するとしましょう。Z世代のファンはどのようなキャンペーンであれば実際に商品を購入し、参加したいと思うのかを考えていきます。

 まず初めに、推し活ファンのペルソナ像(架空の顧客像)を明確にすることが大切です。ここでは、漫画キャラを推すファンの像を具体的に創り上げます。例えば、「有名漫画キャラを推すKさんは、東京生まれ東京育ちの22歳(大学4年生)。漫画コンテンツが日本中でヒットした際に友達と一緒にハマり、特に漫画の中の1人のキャラクターが好きで推しています。推し活に使う金額は月5,000円程度。推しのグッズで欲しいと思うものがあれば購入し、既にいくつかのグッズを持っています。まだまだ購入したいグッズが沢山あるので、早く就職して自分で稼いだお金で推し活を楽しみたいと思っています。」という感じでしょうか。コンテンツのファンのSNS等を調査した上で、このようなペルソナ像を創り上げるとよりファンの気持ちになりきることができるので、施策も考えやすくなるかと思います。

 次に、ペルソナ像のKさんが推し活をする際、どんな心理状態にあるか場面ごとに想像してみましょう。その際、商品との出会いから購入後までの購買行動のプロセスに沿ったシーンで考えてみてもいいかもしれません。【認知】から【発信】までの購買行動の過程で感じるファンの思いを言葉にしてみると、ファンのリアルな声をプロモーション施策に落とし込むための一歩になり得ると考えます。画像で挙げた例で述べると、次のようなイメージです。


 Twitterで日々推しの情報収集をしているKさんは、推しが有名コンテンツ故に入ってくる情報の量が膨大で、1つの情報における【認知】~【比較・検討】までにかける時間が短い傾向にあります。全ての情報を自分で選別することの難しさから、信頼できる友達のお薦めや、良質な口コミのついているコラボ事例にはすぐに飛びついてしまいます。

 そんなKさんの興味を引くためには、情報発信と併せて、キャンペーン参加前にデジタルギフトが手に入る施策案が一例として挙げられます。応募するだけでゲットできるプレゼント系の施策は、興味関心を高めるのに最適です。例えば、コラボ告知の動画を見終わると、ランダムでキャラクターの画像がもらえるというものはどうでしょうか。何が当たるかわからないワクワク感は推し活の一つの楽しみにもなります。同じように参加した友達やSNSでのコミュニティ内で、このキャラクターが当たったという報告で盛り上がるかもしれません。話題化させることで、コラボの情報を拡散させることもできます。

 動画を見て、キャラクターの画像をゲットしたKさん。推しとお菓子がコラボしていることを知りました。続いては、画像をゲットするだけにとどまらず、実際に店舗に行き、商品を買うという【アクション】を起こしてもらう掛けを考えていきます。

 まず前提として、コラボ景品のビジュアルが魅力的であることは欠かせません。Kさんの推しは有名コンテンツと言いましたが、それ故様々なコラボ商品事例が存在します。そんな中でKさんの心を掴むためには、コラボ商品(ここではお菓子)のオリジナリティとコンテンツがマッチしていて、かつファンが感じるコンテンツの魅力を引き出しているかが重要です。また景品に何を選定するかも、ファンが新しくコラボグッズを買うかを判断する材料になります。複数あっても困らず、ビジュアルを堪能できる上に、スマートフォンの裏などに入れてさりげなく推しをアピールできるステッカーなどはどうでしょうか。Z世代の推し活がリアルなコミュニティでも普及されやすいことが座談会からもわかったように、学校などの普段の生活で会話のきっかけになるようなグッズは使いやすく、欲求度も高いと考えます。

 さらに、店舗に足を運んでもらうことを後押しするものとして、店頭での販促物があります。例えば描き下ろしのキャラクターと写真が撮れるフォトスポットがあれば、店舗に行きたいと思ってもらうことができるかもしれません。また漫画コンテンツがアニメ化されていれば、キャラクターのビジュアルだけでなく、声や話し方が好きだというファンも多いかと思います。声が流れる什器などを店頭に設置し、原作通りのセリフや名言を掛け合わせるなど、声を活かした体験として付加してみるのもいいでしょう。店舗ごとでセリフやキャラクターが違うということであれば、推しを求めて複数店舗を回ってくれる可能性もあります。グッズだけでなく、推しを感じられる体験要素の強い施策は、Z世代にとって魅力的に感じる来店目的になると考えます。

 自分が体験した推し活を、友人や推し活仲間に共有・自慢するためにSNSで【発信】したくなるのもZ世代ならでは。フォトスポットや店舗によって声が変わる仕掛けによって発信を促すことができると考えます。さらに公式アカウントからいいねやリツイートがもらえるとなれば、ファンの発信が加速し、キャンペーンの話題化を狙えるかもしれません。


 上記のプロモーション案の方向性の出し方は一例に過ぎません。起用するコンテンツが、知名度がなくても隠れたファンが多いものであれば、知名度の高い商品とコラボするだけでも「推しが起用された!」とファン界隈でバズるかもしれませんし、コンテンツの中の個のキャラクターが好きなファン向けか、コンテンツ全体の世界観が好きなファン向けかでは施策や見せ方はまた変わってくると思います。
 「推し活」を取り入れたプロモーション施策を考える際は、ファンの心理状況や行動をより鮮明に思い描き、ファンを突き動かす「推しコンテンツ」の最適な使い道を探るのも一つの方法かと思います。自社の商品が、推し活とどのような接点を作っていけるかを考えてみてはいかがでしょうか。


さいごに

 最後に1点だけ注意点をお知らせします。販促活動に使用するコンテンツによっては、「推し活」を立たせるプロモーションがNGとなる場合があります。キャラクターの人気投票や「どのキャラクターとコラボした商品を推す?」などの見え方は、キャラクター側が推し活を推奨しているようにも見え、その作品コンセプトと合わず、避ける意向の強いコンテンツもあるようです。当たり前のことですが、自社メーカーとコラボコンテンツの使用権を持つ版権元とのすり合わせをしっかり行うことが重要かと思います。
 「推し活」はあくまでコンテンツのファン自らが能動的に行うものという考え方もあります。企業側のマーケティング活動においてその点を立たせすぎると「推し活」を強要しているかのように捉えられて逆効果になるケースもあり得ます。常日頃からコラボする企業側のエゴが出すぎない施策内容の立案を心がけることが最適だと考えます。

 ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました!本稿でつらつらと書いている内容はどれも、私たちが普段企業様のマーケティング活動をお手伝いする中で感じている一考察に過ぎませんが、商品の売り方やコンテンツとのコラボ企画において悩まれている方、「推し活」を自社商品でのコミュニケーションに活用したいと思われている方への一助となれば幸いです!

 次回投稿も楽しみにお待ちください♪少しでも参考にしていただけた方は、フォロー&スキ、記事の引用・拡散の方もよろしくお願いいたします!


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