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エッセイ「緊急入院先からの投稿、しかし何故かロン毛への想い」2018/11/10

持病で緊急入院しているが生死の反復横飛びを終えスマホが持てるので書く。
色々変なところもあるかもしれないが許してほしい。

病気のこと?病院のこと?ノンノン、ノンノンだぜ。
私が言いたいこと、いや叫びたいことはひとつ

ロン毛の男性が好きっ

何をいってるんだこいつは案件だ。もっとほかにあるだろう、なんで今唐突にそうなるんだ、エッセイを描けエッセイを。せっかくなったこの病の体験記を壮絶にカタルシスとケレン味満載に描いてお届けしてしまえよ!

まぁまぁ私が今ゼーハーしながら休み休みこんなことを書いているのには理由もある。 

この最近の闘病期間中、架空の長髪の男性だけが私の心を保たせていたのだ。

(↑この時まだ発熱でここまでで断念。テンションが変。以下はその二日後に書いている。)

ロン毛の男性というのは、いわゆる3次元の、リアルの男性というのと、完全に2次元のキャラクターと両方あるのだが、今回はキャラクターの方をフィーチャーする。

まずは、私が長髪キャラに心酔するようになった経緯を書きとめておきたい。というのも、そのきっかけは、一人のアニメの男性キャラクターだった。

私は漫画やアニメなどを観ることを、ほとんど許されない家庭に育った。
小学生のころ、たまにいとこの家に行くとアニメを観ることができた。そこで決まってテレビに映っていたのが「犬夜叉」だった。(土曜の夕方とかにやってたからかな…)
とにかくそのなんだかわからないけどおしゃれな、なんだかわからないけどかっこいい、魅力的なキャラクターと、迫力ある絵に圧倒されていた。
毎週行っていたわけではないので物語は追えていないのだが、大人になってもいとこの家で観たシーンは鮮明に覚えている。
この従兄弟の家というのが父方の実家で、母はこの父の実家が好きではないらしい。私の家から従兄弟の家は車で10分ともないところにあるにも関わらず、私は母と父方の実家に行ったことはない。私が従兄弟の家に行くときも、私が帰ると必ず癇癪を起こしていて、私に当たってくるのだった。
つまり犬夜叉を見ることは、母の癇癪と引き換えなのだ。
帰ったらまたひどいことをされる、帰りたくないけれど、早く帰らないと母の機嫌がますます悪くなる。
それなのに、わたし、アニメなんか見てる……お母さんが知ったらまた暴れるだろうな…
そんな不安感と焦燥感の中で見るそのアニメ、犬夜叉は、私にとっての背徳の蜜、禁断のご褒美だったのだ。

「犬夜叉」という作品をご存知の人はああ、あの“犬夜叉”が長髪キャラ好きの原点なのね、と思われるだろう。

だが私は違った。まごうことなき、私の中毒的な美形長髪男性キャラ好きの原点、それは犬夜叉の兄“殺生丸”だ。

殺生丸をご存知だろうか。
長く豊かな白髪の長髪を持つ、純大妖怪である、半妖犬夜叉の腹違いの兄だ。これがとにかく強いキャラクターで、幾度も半人前妖怪犬夜叉の前に立ちはだかり、犬夜叉を殺そうとまでする。
私は彼に、言い知れない畏れと色気を感じた。その“美しい青年”の“真っ白い”“腰を覆うほどの長髪”という、どこをとっても非現実的な美しさは、たった短い時間のヒリヒリした現実逃避の時間に、何も知らない小学生の女児を夢中にさせるに十分すぎたものである。
今考えてみると、母なのに自分を殺そうとすらしている気がしていた母の存在と、兄なのに弟を殺そうとする殺生丸の存在はかぶるような気がする。

それから、私はアニメやマンガのオタクでもなんでもないのに、長髪の男性キャラクターだけに心酔するようになる。
現在もなんの作品のなんというキャラクターなのかもわからないキャラクターが多くいる。そしてその長髪好きはエスカレートし、

美形で背が高くて髪が長くて強いキャラクターが好き→“美しい長髪”が好き

に発展した。もうその男性の長い髪自体が本体のような気持ちなのだ。もう、普通に髪が長いだけでは物足りない。
長い髪が見たい、長い髪が拝みたい、長い髪長い髪長い髪……!!!
そうしているうちに、髪の長さが常軌を逸しているでないと満足できなくなった。男性のキャラクターで髪が長いというだけで異様であるのに、私の今特に好きなキャラクターで一番髪が短いので、かかとくらい。一番長いキャラクターはその身長をはるかに越え、推定3メートルくらいだろうか。とくに好きなのは“神宮寺先生”。身長くらいの豊かな長髪と美貌、包容力を携えた男性医師のキャラクターだ。

ところで私は、毎月高熱にうなされる原因不明の病気を患っている。
11月に入ってから緊急入院になるまでの数日、真っ暗な部屋の中で、おさまらない高熱から、凍死するのではないかという悪寒と、全身から火が吹いているかのような熱感を繰り返し、全身の耐え難い痛みにのたうち回る。当然この状態では眠ることもままならない。しかも、それに追い討ちをかけるのは、孤独だ。介抱をしてくれる人はおろか、誰の声も生活音さらも聞こえない。

薬も効かないし病院もやっていない土日を耐え抜くには、眠って時間を早くたたせるしかない。

はじめは、苦痛の中、意識して長髪のキャラクターたちを想像した。好きなものを想像して気を紛らわせてなんとか眠ろうと。特に想像したのは、あの男性医師の、神宮寺先生。
すると熱は人類の限界にまで上がり、孤独感も頂点に達し、人生に絶望しかなくなる。なんで私の人生はこうなのだろう、人生がイージーモードのやつはトースターの不具合でパンが飛び出してきて当たって即死すればいいし、Twitterに熱なうとかで体温計を載せるやつは41度を越えてからやれ。
自分で命をたつことも考える。それをできる体力がないだけで、こんな状態から解放されるなら死んでしまいたい。今生きるには死のうとしている場合ではないという、不思議な極限状態。
そして痛みも絶頂に達し、意識も遠退き始めたとき、というかもう意識半分なかったと思う。頭の中に想像していた長髪男子たちが勝手にしゃべり始めた。

「えりちゃん、大丈夫かい?諦めてはいけないよ」

そんな声を聞く。そしてついには私を、介抱し始めた。
私はそれから、本当に神宮寺先生に介抱されていると本当に錯覚し始めてしまったのだ。

やがて、自分が寝ているのか起きているのかもわからなくなる。だがその時間、ずっと神宮寺先生やその他長髪キャラクターが側にいる。彼らのことを想っている、考えている。私は一人ではない!こんなにたくさんの美しく強い男性たちがいる!もうなにも恐れるものなんかない!

これは極限下で、誰か助けてという思いと生きたいという思いと孤独を補填した結果だ。
普段、その「夢女子」と言われるような実際にキャラクターと自分が関わりを持つ妄想をすることはないので、体調が落ち着いた今、思い返すと恥ずかしいし、そこまで追い詰められていたよなと思わず溜め息が出る思いだ。

今日も病室でカタカタとこれを執筆している。熱は7度代はあるが、私は発熱のプロなのでこんなのはないのと同じだ。車イスを使わなくてよくなり、状態を起こしてこれを書いていられることにほっとしている。感謝でいっぱいだ。ここの病院の先生たち、看護師さんたち、ありがとう。

そして私を生かしてくれた無数のロン毛たち、ありがとう。神宮寺先生、ありがとう。

あなた方の美しさと強さと優しさ…………溢れるほどのその艶やかで豊かなおぐしのお陰で、私、今………生きてる!

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