【迷い羊はつきあかりに】演出本山コメンタリー5

2023年8月14日 19:48

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今回「三四郎」っていう作品を土台にした恋の物語とは言いつつも、結局恋愛的なものみたいな括りではなくて本当に人と人とがどうやって一緒に歩んでいけるんだろうみたいなところでやってるから、本当に見方としてなんかじりじりするような、なんか焦ったいような恋模様だわって思ってもらってもいいし。

でもそうじゃない部分でも細かく細かく演出つけて作ってるから、本当に何回か見たりとか、噛めば噛むほどあの時ってもしかしてこうだったのかなみたいな。

男とか女とか関係なくこの人なんか素敵だなって思う人に対して自分がどうアプローチをかけるじゃないけど、その人の心をどうやったら開けるかなのか開いてもらえるかなのか、自分がどうやって開くかなのかみたいなことをすごい丁寧に作ってる今。

「迷い羊」っていうのは人間関係に悩んでる人に見てほしい。人間関係とは何ぞやみたいなところが裏テーマだから、恋だけじゃなくてね。そこも含めて見てほしいなと思っておるでやんす。

テキストだけ見ると本当に何でもない会話なんだけど、台本を読んでほしい。台本だと本当に何でもない会話しかしてないんだけど、それが役者の身体を通して舞台上に上がった時に、何でもなくねえんだよこの会話みたいな、何でもない振りしてるだけなんだってみたいなことをね、ずっとやってて稽古で。どれだけその何でもない会話を何でもなくするかの作業をめちゃくちゃしてて。

だからテキストとかよりも圧倒的に行間の方が深い脚本になっているので。行間っていわゆるト書もあるけど、ト書だけじゃ描ききれない、ト書まで書いたら小説だわってことになっちゃうから、小説だわってなってるところを全部演劇の「行間を描く」と言うことでやっておるでやんす。

演出家がやる仕事はもちろんあるんだけど、見せ方とかも役者の仕事がいっぱいある作品だなぁと思って。

照明の切り替わりとか暗転とか音楽とかっていうのがちょっと曖昧というか、おおよそこんなだろうの状態の通し稽古でランタイム1時間ぐらいなんですけど。

今回上演時間の想定が1時間なのに役者さんたちが、なんでこんなに疲れるんだってぐったりするくらい、本当精神をすり減らしながら繊細にやっている。お客様も多分1時間以上見れないと。結構本当にキューって集中して見せつけられるからさ。

背もたれに背中預けてふんふんみたいな、腕組んでふんふんみたいな風に生半可で見るといろんなことを見逃してしまうなぁみたいな風に思って。見てくれる人にそれを気をつけてくださいねって言いたいんだけどどうしたらいいんだろうとか思いながら。

本当にこう背もたれに背を預けて腕組みながらはーんって見てたとしてもね。どっかしらで絶対あの表情って一体どういう意味なんだろうみたいなこと結構頻発するから。あれの表情は一体どういうことなんだろうとかって思ってるとどんどん引き込まれて。沈黙だったりとか目の配り方とか視線の動きとかで。

めちゃくちゃ見終わった後に持つ印象が全然変わるので、本当に1時間でいいなって思って。

もうちょっと長くするかとかシーン追加するかとか、ある種説明的なことをやるかみたいなことを、検討して検討して検討して最後削り取ってこの状態になってしまったって感じ。

なってしまったというかこの状態にしてそれがベストなのかなっていうところに落ち着いたっていう。

今回だいぶ脚本に悩みまくっていたんだけれど、最終的にはとてもいい形に収まっているのではと今稽古の段階では思っている。

お客様に見ていただいてお客さんがどういう感想を持つかっていうのもね、ちょっと楽しみではあります。あまりにもいい座組であまりにもいい作品にしてもらったなと思ったからね、ちょっと喋っちゃいました。裏話的な感じ。

続く

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