アトレティコ・マドリー冬の通信簿2021

さて今年最後の記事です。

チャンピオンチームとして迎えたラリーガ21-22シーズン前半戦の振り返り、まとめとして書いていこうと思います。
お品書きはこちら





●チーム状況

前半戦の成績は8勝5分5敗の5位
17節でマドリーに惨敗して独走を許す形に。早くも優勝が遠のいた。
今季はEURO明けで、さらに先季の不規則日程の影響を思いっきり受けてどのチームも苦しんでいる。アトレティコも例に漏れず怪我人続出で厳しいシーズンに。ただ、新加入選手のポジティブな活躍や新ビルドアップシステムへのチャレンジなど、選手達は前向きに取り組めている印象もない事はない。
とはいえ結果がついてきていないのが現状である。シーズン序盤から、前半に先制点を奪われ後半は45分間ずっとスクランブル。もう前半の頭からそれやれよ、みたいな試合が続き見ている側も常にドキドキであった。7節アラベス戦で、この日も早めの先制点を失うと完全に引きこもられて0-1敗戦。その後はバレンシアに後半ロスタイムに2点差をウーゴ・ドゥーロの2発で追いつかれる、マジョルカ戦では80分過ぎにセットプレーから追いつかれ、最後はロスタイムに久保建英に沈められてなんとホームで逆転負けとなった。そこから泥沼。シメオネ体制11年目にして初めてのラリーガ4連敗の屈辱を味わい、優勝戦線から脱落した。


まあ新しい取り組みの最中にやいのやいの言っても建設的でないという考えもあり、また怪我人が全員健康だったら?などのifはスアレスの健康って何?若返り?という話になってしまうので、一度置いておこう。しかし数字で明らかになっている部分で言えばまず失点が明らかに多い。先制される、リードすれば追いつかれる、追いつけば引き離される。"アトレティコらしくない"の一言で済ますわけにはいかないが、らしくなかった前半戦であった。


だいたいのトピックを挙げておく。


・5バック
まず5バック時の守備対応で、いかに3CBの強度が重要かという事。ハイボールで負けるとズルズルラインが下がる、アーリークロスが上がってくる前提の配置で、確実に跳ね返す必要がある、時には勇気を持って前向きの守備をする必要がある、など、ヒメネスやサヴィッチ不在時に非常に苦しんだ。

・オブラク
最終ラインに加えて、衰えたという表現はあえて使わないが、守護神オブラクが本調子でなかった。目立ったミスが多数あったわけではないが、"彼ならこの一点を防げたのでは?"と思ってしまうシーンは散見された。求めすぎるわけにはいかないが、"普通じゃない守護神"がゴールを守っているという安心感は、失われていた。

・チームとしての一貫性に欠ける
ここ数年で陣容が大きく入れ替わり、日替わりオーダーを組む現状の影響が細部に出ていると実感する。僕自身、勝ち試合では"誰が出てもアトレティコでいられる"と言った手前恥ずかしい話だが、認めるしかない現実だった。

・プレス位置が不明瞭
非保持では前からのプレスが掛からず、逆にクーニャ、グリーズマンの2トップになった16節マジョルカ戦などは積極的に前から追いかけ回したが結局ロングボールをケアしきれず間延びしたり、と統一感に欠ける構造が目立った。

画像14

画像15

マジョルカ戦での中途半端なプレス。結局蹴られて、落下地点のマークは甘く、数的同数を作られている

メンバーを固定しきれず、やってる選手達も、シメオネ自身も今季の核となるシステムってどれ?の状態なのでなかなか評価、指摘が難しい箇所だ。前プレすれば解決するから走れ。とはならないわけで。

・CLは勝ち抜け
ポジティブな結果として、CLのグループリーグは死の組、B組に入り、最後はポルトとの直接対決に勝って辛くも2位抜け。ラウンド16はマンチェスター・ユナイテッドを引き(バイエルンのはずだったが)、3季ぶりにロナウドとの対戦に。トラウマを乗り越えるチャンスが与えられた。


では少し詳細に振り返っていく。



●新加入選手

まずは新加入選手のお話。GKのルコントは試合に出てないし顔も知らないので3人で。

5 ロドリゴ・デ・パウル
ウディネーゼから来たアルゼンチン代表MF。前評判が非常に良かった選手で、期待値も高かった。
質の良いボールが蹴れる選手で、中盤の底で配球役として機能。もう少し独力で突破していくタイプをイメージしていたので(勝手に)、少し違った。体も大きく、守備でも体のぶつかり合いを厭わない。足を止めての対人が得意なタイプである。
トラッシュトーカーで相手といつも言い合っている。審判とのコミュニケーションも多め。
異様なまでに左足を使わないがもう見慣れてしまった。おそらくこれから作っていくビルドアップシスでの中心になるべき選手。


19 マテウス・クーニャ
ブラジル代表のFWで、東京オリンピック決勝でもゴールを決めて金メダルに貢献している。ヘルタ・ベルリンから加入。ブラジル代表という事で同じ南米出身のスアレスの後継者に!とワクワク感がある。現状は良い動き出しからシュートを外す、を繰り返してどちらかというとモラタの後継者っぽい。顔はタレ目のウィル・スミスで可愛げがあるのでまだギリギリ評価を保っている
CLポルト戦でわけのわからんドリブル突破を見せていたので何やらもう一段階奥がありそうな選手だ


8 アントワーヌ・グリーズマン
バルサから帰ってきた男。出て行き方が悪すぎた事もありホームで思いっきりブーイングを受け、サウルの8番を着けた事も火に油を注ぎまくった感はあるが、個人的には"グリーズマンの代わりいないかなぁ"と思ってたら本人が帰ってきたので最高の補強だったと思っている。嫌な記憶は水に流そう。
ライン間のボールの引き出し方や脈絡のないゴール、セットプレーの上手さ(蹴る方も合わせる方も)など、あらためてとんでもない選手だと思う。
マドリー戦のように、ライン間にスペースがなく、対人に強いマッチョ(ミリトン)に監視されていると超絶ノーインパクトになる事が判明したが、そういう試合ではおあつらえむきにジョアン・フェリックスが輝く事がわかったのは収穫である。使い分けていこう。
そろそろフルシーズン全部出ろという歳でもなくなってくるので、上手い事貢献度を高めていって欲しい


●システム

開幕から先季と同じ3-5-2で。

画像1


ちなみに開幕戦のスタメン

途中から怪我人が出たからか、そもそもそのためにデ・パウルと取ったからか、3-2-5や2-3-5の構築を使い始める。


・ビルドアップルートの変更
〜SBからライン間に変わった終着点〜
12節ベティス戦の時に"FWがいっぱいいるから3トップの方が良いんじゃない"と冗談のような本気のような事を言ったが結構本気である。ここまでの新ビルドアップの効果を書いていく

アトレティコの良くない試合で多い形。

画像2

5節アトレティック戦より
ビルドアップの終着点の話。ラストサードのどの位置に、どのタイミングで、どういった質のボールを供給出来ているか、という話になった時、アトレティコのビルドアップの終着点は"相手に引き切られた場面で大外のWBの足下"に到着する事が非常に多い。これは先季から同様である。一番多いのはカラスコの足下だ。

先季の得点パターンを思い出すと、この位置からカラスコがエルモソ、コケ、ルマルとの連携を使い、スアレスがPA内でボールを呼び込む。難しければ何度もやり直し、左サイドを押す。スペースが出来ていればトリッピアの足下へサイドチェンジし、ジョレンテ&コレアがチャンネルへラッシュする。

画像3

これが先季の攻撃の構造。ただ今季は、トリッピアの不在などでメンバー構成が異なるのと、スアレスが先季同様の存在感を示せない事でこの攻撃は上手くいかない。ハイポジションのWBでノッキング、やり直し。の連続となった。


そこで、終着点を変えようと試みる。今季、一番変わった点はデ・パウルの加入だ。彼がセンターサークルでボールを受けてライン間へ速い縦パスを付ける。この選択肢が出た事でビルドアップルートの変更に着手した。

・3-2-5

画像4

3-2ビルド。12節ベティス戦より
後方3CB、その前にコケとデ・パウルが並列になる形。
HVからWB(主にエルモソ→カラスコ)のパスルートを狙わず、カラスコは最初からハイポジションを取る。ビルドアップのタスクは"一列目を外してコケorデ・パウルが前向きにボールを受ける事"になる。そしてそこからライン間で待つグリーズマン、コレアに速いパスを入れる、という構造。

画像5

CHからライン間ポジションへの縦パスを狙う

これはベティス戦、バレンシア戦とともに3点を取り、一定の効果が見込めるパターンとなった。
その後はトリッピア、CB勢に怪我人が続出してこの形は一度頓挫。それと、バレンシア戦で対応された形を見てシメオネはこの構造があまり好きじゃないのかな、と思った。ネガトラもあまり良くなかった。具体的には下記の通り

・CHへのマンツー

画像6

13節でバレンシアが講じた対応。この図は実際は得点につながったので良かった場面だが。
“CHがマンツーでマークされ、CBから球出しする”
という形になる。これは本意ではない。そしてこの場面のようにデ・パウルが大きく外へ開いてマークを連れて逃げるシーンが多発。これによってネガトラでCBの目の前が無防備になる、というシメオネが嫌いそうなデメリットがあった。嫌う嫌わない以前に、サヴィッチとヒメネスが欠場している今季のCB勢だとシンプルに不安だった。

画像13

この時はコレアとグリーズマンとの連携で得点に


・2-3-5

画像7

それを解消する術として出てきたのが2-3-5のビルドアップだった。これならCHをセンターサークルに一枚残せる

ただしこの形も大いに矛盾はあった。まず真ん中を誰がやるかだ。
ネガトラを考えた配置だとするならばそこはデ・パウルでいいのか?という話で、じゃあコンドグビア、となった時に彼はプレッシャー耐性があまりにも低すぎて全くボールを受けられない。せめてもらうフリだけでもしてほしいが"僕は今ボールを受けられる状態ではありません"という態度に終始した。あと彼も別にネガトラで良い仕事をするわけでもない。でもコケにやらせると、SBの位置までカバーする必要のあるタスク(2-3-5の3の左右)を別の選手に任せる事になり厳しい

そして通常、相手がこのビルドアップをしてきたら守備側は2トップでアンカーを消すのがセオリーだ。おれでもそうする。

画像8

こうする。アンカーポジションのデ・パウルは消され、サヴィッチにも出しにくい。コケは実質消され、ジョレンテへのロングボールは警戒されている気がする。グリーズマンを狙った縦パスは絶対に通らなそう。実質、パスの選択肢はエルモソに渡すしかなさそうだ。しかしエルモソは激しく狙われそう、というか相手のプレスの構造は"他の選択肢を消してエルモソに渡させてそこに寄せる事"だ。
アトレティコもそういう対応をされ、結局狙った形で前進できないケースが多くなった。


アトレティコ側の配置は違うが、似たような対応をされたのがCL5節のミラン戦であった。

画像9

エルモソへのパスを誘導

画像10

その先を消して殺す形

その場合普通はどうするかというと、やり直す。どうやってやり直す?というと当然、GKを使って再構築だ。現代サッカーの新しい常識。

画像11

GKを使ってCB2人と新しいトライアングルを使って、優位性のある(少なくとも相手に奪われない)保持を回復する。
アンカーを消していた一列目の片割れのマークはデ・パウルのままでいいのか、コケへのパスを警戒すべきなのか、はたまたサヴィッチに寄せるのか、GKまで寄せるのか?と言う選択を問う事が出来る。結局、ビルドアップはこの連続だ。”守備者に選択肢を持たせ、選んだものを違うところに進む”のだ。やり直しの手順、トラブルシューティングを持つ事は必須になる。一度進み始めたら二度とやり直しが効かないビルドアップでは戦えない。
ただ、知っての通りアトレティコはそういう風に出来ていない。オブラクの足下の技術ではビルドアップへの参加は厳しい。"後ろ2枚でビルドアップする構造は基本的に全てダメ"である。これが現実だ

ちなみに、CL6節ポルト戦ではグリーズマンが全く異なるアプローチからトラブルシューティングを準備した。

画像12

自分がサイドチェンジを受けるから、困ったら蹴っていいよ。という裏技を準備したのだ。
たった一人のポジション移動で相手のプレスを回避できてしまう。そういう選手も存在するのだ。この長々とした話を読んで「グリーズマンてすげえな」って思って頂けたなら書いた価値がある。


結局、さらに最終ラインに怪我人が出てコンドグビアまでCBに借り出され、この形を使う人員も足りなくなった。その後は先季の取り組みに戻ってエルモソ、カラスコ側からのビルドアップを使おうとしたが逆サイドにトリッピアがおらず、スアレスは20点取る理不尽さを失っており、結果的に先季のサッカーへの回帰にも失敗した、というのが12月の惨状だ。

新たなチャレンジは歓迎すべき、怪我人は仕方ない、という事は付け加えつつ。帰るべき実家へも帰れなかった12月は非常に苦しい日々であった。


●ポジション序列

GK
8シーズン目を迎えた守護神オブラクが今季も不動。しかし前半戦、18試合でクリーンシートは5回だけの22失点。CLグループリーグも、クリーンシートは1節ポルト戦のみで計8失点した。
もちろん失点の原因をGKに求めるつもりはないが、"今までのオブラクならこんなピンチでも止めていた"と思うシーンが無いわけではない。最終ラインの構成含め変化の多いシーズン。後半戦は調子を取り戻せるか


CB

3CBを4人で回すのは先季と同じだが、怪我人に苦しんだ。このポジションの補強をせずに臨んだシーズンだが、そもそも先季サヴィッチとヒメネスがある程度健康でシーズンを過ごせた事の方が奇跡であり、どう考えてももう一枚必要だ。ビルドアップタスクは一度置いておいて、対人と空中戦の強度を保てる選手をスカッドに入れたいところ。ゴディン復帰の噂があるが、出場時間を求めて揉める事もないだろうし最適な補強だと思われる

現状の序列については、健康ならサヴィッチが最優先。彼が右に入るので、真ん中を誰がやるかという所と、ビルドアップタスクの重い左はエルモソが優先される、という先季の流れを踏襲する。
人員が足りずコンドグビアが左or真ん中を務める試合もあった。本職ではない中でよくやっていたと思うが、スピードを始め厳しいクオリティだった。
CL6節ポルト戦では右CBでヴルサリコが使われたが、この試合は相手の左SHのルイス・ディアスをWBジョレンテと2人で見張る、というのが最重要タスクであり、その仕事においてはもはやサヴィッチより適任だった可能性まであり、結果オーライのハイパフォーマンスを披露。しかしその試合で頬骨を骨折してヴルサリコまでいなくなってしまった。

保持時に3-2や2-3のビルドでCHから内側へ縦パスを入れる形を使う際に、エルモソ必要か?となる議題が出始めてきているので、この序列は後半戦に変化する可能性は大いにある


WB
右トリッピア、左カラスコが実質替えが効かない先季の状況から変化なし。今季はトリッピアが14節以降を怪我で離脱し、ジョレンテが代わりを務める状態に。一度だけカンテラーノのカルロス・マルティンが使われた(14節オサスナ戦)。短い時間だったがスピードがありポジティブな印象は残している。
左はカラスコがいない試合ではロディをSBに起用するなどして実質3-5-2からのフォーメーション変更が必要になる現状である。替えが効かないのもなかなか適任者がいないのも結構だが、いくらなんでもこのポジションを放置するのは厳しい。


CH
先季はアンカーのコケ+IH2枚(ルマルとジョレンテ)の構成だったが、今季はデ・パウルの加入でビルドアップルートそのものが変わった事もあり、まだまだ模索段階となる。
ルマルがいつも通りちょこちょこ欠場し、ジョレンテがチーム事情でWBに回っているため、結果的にデ・パウルを使い続けて早めにチームに馴染ませる事が出来た。
シメオネは相変わらずクローザーとしてコンドグビアを使いたがるが、いまいち効果的とは言えず、エレーラは出場機会が減り続けている
今季の最終形はコケとデ・パウルの2CHなのかなと思っているが、そうするとトリッピア復帰後のジョレンテの使い道が不明になったりと、どうなるやらである。4-4や5-4で撤退する時の中盤中央のコンビの組み方も、守備だけを優先して選手を選べない難しさはある。ビルドアップを優先してデ・パウルが真ん中になるならコケの起用法は?仮にデ・パウルとルマルのコンビになって強度はどうか?などなど。メンバーをどう組んでもコケ、サウル、トーマスで中央に蓋を出来た時期がいかに贅沢であったかという感想。

・ルマルとデ・パウル
この2人の違いに着目したい。似た役割が多くなりそうなのでね。
まず攻撃。ルマルはご存知の通り、コントロールオリエンタードの達人。360度どの方向からボールが来ても、360度好きな方向にターン出来る。狭いエリアでのボールの引き出し方に優れて、崩しの段階で生きるのと、ボールを奪った最初のパスを彼に預ければ、安心してチーム全体が前向きになれる。相手が再奪回を狙ってプレスに来てくれればそれを外し、カウンターの起点になれるのが特徴だ。フリーランニングは速いがボディコンタクトは得意としておらず、目の前の相手を1対1で抜くようなチャレンジは得意としない。
デ・パウルはビルドアップの始点として機能するタイプ。ルマルよりももう少し低い位置、相手のプレッシャーの掛からないエリアでボールを前向きに受ける形を好む。長短のパス精度が高く、まずはボールを持ってルックアップする、という形が好ましい。左足を極端に使わない選手のため、ファーストタッチで相手を外すようなプレーはあまりやれない。相手のプレッシャーが近い場合は先に相手に身体をぶつけて自分のプレーエリアを確保するような選択をする事が多い。フィジカルコンタクトを厭わず、相手の間をスルスルと抜けて行くスラロームドリブルが上手い。だからこそ相手は彼の前にスペースを作らないように守らねばならず、その場合は質の高いのパスで、というプレー選択になる。

守備の話。先に言うが"どっちが上手いか"と言われると"どっちも上手い"。まずはルマル。
保持同様、クイックネスと機動力、動き直して短い距離のスプリントに優れる。そのため前プレで相手を追い回すような守り方が彼には合っている。先季から左サイドでカラスコとマークを受け渡しながらの連続プレスが機能したのは、彼の特性に合っていた事も大きい。プレスを掛けてドリブルでの前進を諦めさせ、プレス対象からボールが離れるとすぐに別の方向へ動き直しパスコースの真ん中に立ってパスカット、というプレーが得意である。そんな場面を皆見た事があると思う。しかも彼がパスカット役になれると上記の通りカウンターの起点になりやすい。
一方のデ・パウルはもう少しフィジカル的。ルマルが苦手な足を止めた1対1のデュエルを好み、身体をぶつけ合ってボールを奪うような守備に長ける。瞬間的なスピードに優れるわけではないので一直線にボールプレス、また動き直し、のようなオールコートのプレス守備は得意ではない。マーク対象を捕まえてコンタクトの中でボールを奪うプレーが得意分野になる。ポジショニング等はコケの隣でプレーしながら勉強中だ。

2人とも上手いし、守備貢献も高く良いMFだが、チームから与えられる役割は似ているが特徴があまりにも違うのでまとめさせてもらった。どちらもインテリジェンスが高く、また自分の得意・苦手なプレーも良く把握しているように見える。特に守備においては、このチームでは"双方の苦手分野はコケがやればいい"みたいなところもあって、そこがこのチームの中盤のバランスになっていると思う。念のため言っておくとジョレンテは脳筋である


FW
2トップや1トップ2シャドーのパターンがあったので、FWとしてひとまとめにする。
トップは今季もスアレスが鉄板だが、膝の負傷の影響かアジリティが付いて来ず、ダッシュも体が付いてこない状態だった。ただ、PA内では相変わらず化け物のような決定力を発揮し、ポストプレーの受け方が巧みでカウンターの支点として機能している。代わりは新加入のクーニャになる。機動力と連続性は先季のチームになかったもので、新たな可能性を示す事ができるか

スアレスの相棒は主にグリーズマンが務めたが、彼もスピードがあるわけではなく、スアレス+グリーズマンのセットだと相手を押し込めない試合では一切機能しない事も。
グリーズマンと共にコレアorフェリックスを起用し、デ・パウルから縦パスを引き出す形で新しい構築を作れそうな予感はあった。


●課題

・再現性のありそうな得点が多いのに二度と再現されない
これは感覚の話で恐縮だが、今季のアトレティコの得点は再現性のありそうな得点が多い。ように感じる。良いゴールだね、と思う得点が多い。
が、同じ形からのゴールが生まれるのをほぼ見ない。これは課題というか不思議なところだ。日替わりのシステムになっている事の弊害だと思われる。ジョレンテシステム以外にも、困った時に頼れる形は作っていきたいところ。それこそ先季はスアレスが何とかしてくれていた箇所だ。頼れる形を探したい

・複数失点回数
12月はCBに離脱者続出で苦しんだが、今季はとにかく失点が多い。
守備が悪くなったと若干言われていた先季でさえ、複数失点は5回だけ。しかも3失点はゼロ。クリーンシートは18回あった。
が、今季は18節ですでに複数失点が8回。13節のバレンシア戦に至ってはなんとリーグ戦に限れば18-19シーズン、2019年2月9日のマドリー戦以来の3失点を喫した。クリーンシートはなんと5回しかない。
チームがこれまでと違う事に取り組んでいるので目を瞑りたい部分もあるが、試合に負けてしまってはどうしようもない。
特にクロス対応が悪い時が多いが、実際先季から選手は変わっていないので技術や配置の話をしても仕方ないだろう。心で止めてほしい。気合いの問題である。

・気合と根性
今季途中から、割とレビューでも使ってきた言葉である。今季はビルドアップルートが変わった事で変なボールロストをして、これまででは考えられないようなカウンターからの失点もあった。これは後半戦もあるだろう。だがそれでも"だからチャレンジをやめる"わけにはいかないので。じゃあどうするか、という話で、やはり気合と根性だ。ボールロストしたら全力でゴール方向へ戻る。死ぬ気で走れ。それしかない。

有名なやつ

今季も、ポルト戦で見せたエルモソの死ぬ気のランニングはまさにアトレティコだった。もうこのチームに入ったからには諦めて、無理そうだと思っても全力で走ってくれたまえ。フェリックス、お前もだ
13節バレンシア戦、3-1から同点に追いつかれた試合で、アトレティコのアイデンティティへの危機感を書いた。この予感は今のところ的中しているように感じる。守らなければいけない一点を守れなくなったら、このチームは一体何点取れば良いのか?それは、チームの根幹を揺るがす問題になる。"その一点を守れる"からアトレティコは成立している。その前提がなくなった時、システムも戦術も全て不出来なものに変わってしまうように思う。何より"らしくないな"と思いながら試合を見るのは辛い事だ。何度も、何度も何度も掘り返すがチェルシー戦のような思いはもうしたくない。今ならまだ間に合う。アトレティコは、アトレティコでいられるはずだ。そのためには気合と根性。リードしたらその一点を守る事。忘れてはならないアトレティコのアイデンティティだ。



●後半戦に向けて

ラリーガを優勝した先季終了時とは当然状況は全く異なるが、それにしてもポジティブな事が全然書けなかった気がする。
復帰したグリーズマンが大爆発、フェリックスも覚醒、デ・パウルのスーパーパスで新システムがスペインを席巻、スアレスが30点、オブラクはクリーンシートの宇宙記録を更新、ヒメネスはもう21試合出場したので後半戦全部休み、くらいの事を書ければ幸せだったのだが。

こうなってみると本当に、先季はなぜ勝てていたんだろう?に終着する。それが悔しいね、と思う。結局スアレスが20点取ったから優勝しただけじゃない?となってしまうのは残念だ。どうにか乗り越えてほしい。

・シメオネの次のチャレンジを見たい
この2年間非常に苦労しているように見える。"本人の知らない戦術を取り入れている"ようにも思えるので、たくさん勉強もしているし試行錯誤を繰り返しているのだろう。彼の次のチャレンジを楽しみたい。楽しみにしている。また見ている者をびっくりさせる問題解決を見せてほしい。4連敗で動揺した僕を、後悔させてほしい。そのために毎試合、穴が開くほど確認させていただく。そしてレビューにして掲載させていただく。これから先も、変わらずずっと。



●終わりに

2021年はラリーガ優勝が見られたり、外部の記事に参加したりと、個人的にも貴重な経験をいくつもさせていただいた。数字の話をするのも野暮だが少しさせて頂く。レビューのpv数は平均してだいたい先季序盤の2.5倍くらいになっています。2021年始に個人的に立てた年間pv数の目標は気づいたら9月末頃達成しており、約1.5倍でフィニッシュしそうです。本当にいつもありがとうございます。あとtwitterもたくさんフォローいただいて。試合中とレビューの話以外のツイートはそっとしておいていただけると幸いです()
21-22シーズンが始まってから一番pv数が多かったレビュー記事は17節のマドリーダービーです。

意外と負け試合。

次はやはり、CL6節のポルト戦。

まあ内容を評価するのは皆さんですが、この記事のタイトルは過去一番気に入っています。というかこのタイトルを思いついて一ヶ月前の4節リバプール戦から引っ張ってたからね。

ちなみに、今季が始まった8月以降でその2本よりもpv数が多かったのはミランのスカウティングレポートでしたとさ

マンチェスター・ユナイテッドのレポートも書くつもりだから、お楽しみにしていてもらえると嬉しいです。


この辺で終わります。今のアトレティコには、色々な要素があって。変わった事とか、変わっちゃいけない事とか。レビューの事だけ考えると、今すごく楽しい時期だなと思います。本当はもっと勝てた方が楽しいけど。

おれは、今季のアトレティコのサッカー、面白くない?と言いたい。
アトレティコは、4-4-2の堅守って言われるじゃん。特にCLで負けた時のwebニュースのタイトルとか、堅守のアトレティコ、破れる。みたいな。それに知らねえ奴がアトレティコの堅守は崩壊したシメオネは終わりだみたいな引用付けてるじゃん。
違うよ?今季のサッカー。全然堅守の4-4-2じゃないよ。見てないでしょ?こんな面白い事やってるよ。って、言いたくない?おれは言いたい。そういう話を、もっとしたい。文句ある奴がいるなら、おれが全試合レビューしてるよって言いたい。読めばわかるだろうが。って言いたい。言える存在に、なりたいな。

優劣の話ではないけれど、アトレティは他のクラブのファンとは違うと思っている。目の付け所が違うというか、変わり者というか。もっと上手いチームを、もっとお金があるチームを好きになればいいのに。そうはならない。みんな変わり者だと思うよ。だけど、みんなポルト戦を麻薬って言ってたけど、そういうのがあるクラブなんだよ。おれもそう思う。だからもっと、愛で溢れますように。その一助になれますように。2022年もよろしくやっていきましょうよ。年が明けてもまた一年よろしくお願いします。おれは懲りずに、また書いていきます。皆さんの一年が、幸せに溢れますように。そしてアトレティコ・マドリーの未来が、明るくありますように。
ではこの辺で。良い新年をお迎え下さい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?